新規なホスホン酸表面改質剤を含む電子デバイス
幾つかの実施態様では、本発明は、以下の構造:
[式中、
その存在毎に独立に、R1は、ハロゲン、アルキル基、ヘテロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基であり;R2は、3乃至30の-CH2-基を含み、n=0-5、m=0-5、q=1-3であり、R2は少なくとも一つのエステル結合を含む]
を有する分子を含む組成物に関する。
[式中、
その存在毎に独立に、R1は、ハロゲン、アルキル基、ヘテロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基であり;R2は、3乃至30の-CH2-基を含み、n=0-5、m=0-5、q=1-3であり、R2は少なくとも一つのエステル結合を含む]
を有する分子を含む組成物に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2009年4月6日に出願され、参照のためにここにその全体を援用することとする米国仮出願第61/166,877号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、契約番号DMR-020967の下に米国科学財団のSTCプログラムからの助成金をもって成された。米国政府は、本発明に所定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
有機電子デバイスは、典型的には、有機電子材料及び正孔注入もしくは収集のための陰極及び電子注入もしくは収集のための陽極を含む。有機電気材料のエネルギーレベルに近づくかまたは離れる電極の仕事関数の変更により、デバイス性能を改善することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】S. H. Lee, et al, J. Kor. Phys. Soc. 49(5), 2034-2039 (2006)
【非特許文献2】S. Koh, et al., Langmuir, 22, 6249-6255 (2006)
【非特許文献3】Bhattacharya, A. K.; Thyagarajan, G. Chem. Rev. 1981, 81, 415-430
【非特許文献4】Goossen, L. J., et al., Synlett 2005, (3), 445-448
【非特許文献5】Han, L. -B., et al., J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 5407-5408
【非特許文献6】Inorg. Chim. Acta. 2001, 322(1-2) 106-112
【非特許文献7】"Organic Electronics: Materials, Manufacturing and Applications" H. Klauk ed., Wiley- VCH, 2006
【非特許文献8】"Handbook of Organic Electronics and Photonics" H. S. Nalwa ed., American Scientific Publishers, 2006
【非特許文献9】"Organic Light Emitting Devices: Synthesis, Properties and Applications" K. Mullen ed., Wiley- VCH, 2006
【非特許文献10】"Organic Photo voltaics: Mechanisms, Materials, and Devices" S. -S. Sun and N. S. Sariciftci ed., CRC,2005
【非特許文献11】"Organic Field-Effect Transistors" Z. Bao and J. Locklin ed., CRC, 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電極の組成を変えることで、より高い反応性及びより低い安定性などの望ましからぬ効果がもたらされうる。例えば、空気プラズマ処理によって電極の表面を改質することにより、経時的に変化して未処理の電極の仕事関数に近づくといった不安定な仕事関数がもたらされる。電極は、薄膜(例えば単層)を形成しうる分子またはポリマーで処理して、電極の仕事関数を変更することができるが、これらの薄膜は、理想的な化学的抵抗性を提供しない可能性がある。フルオロアルキル化合物を使用することによる表面の化学的抵抗性の増大により、接着を低減し(湿潤性を低下させ)、デバイス性能の幾つかのパラメーターに有害な影響を及ぼしうることが当業者に知られている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの実施態様は、分子を電極上に蒸着することを含み、ここで、前記電極は表面を有し、前記分子は、前記表面に結合する結合基(例えば、アンカー基)を有し、これによって周囲条件下(実験室の空気中)で、少なくとも100時間安定である仕事関数を提供する。別の実施態様では、結合した分子を有する電極の仕事関数は、別の表面改質手段によって得られうる仕事関数と同等または類似であるが、結合した分子を有する電極の仕事関数は、別の表面改質手段によって得られる仕事関数よりも安定である。幾つかの実施態様では、電極は酸化物を含み、分子はホスホン酸(例えば、アルキルホスホン酸、ヘテロアルキルホスホン酸、アリールホスホン酸、またはヘテロアリールホスホン酸)である。様々な他の実施態様には、少なくとも一つの電極を含む有機電子デバイスが含まれ、前記電極は表面並びにこの表面に結合した結合基を有する分子を有し、ここで、このデバイスは長期に亘って安定である。
【0007】
別の実施態様は、a)電極(この電極は表面を有する)、b)結合基を介して前記電極の表面に結合した分子、及びc)前記電極と電気接触した有機電子材料を含むデバイスであり、ここで、前記分子は少なくとも一つのフッ素化アリール有機基を含む。前記フッ素化アリール基は優れた化学耐性及び長期安定性を提供する一方で電極の接着特性に悪影響を及ぼすことがない。
【0008】
別の実施態様は、a)表面を有する透明な導電性金属酸化物電極及びb)前記表面に結合したフッ素化アリールホスホン酸を含む有機電子デバイスである。幾つかの実施態様では、フッ素化アリールホスホン酸は前記表面上の単層を構成する。
【0009】
別の実施態様は、a)表面を有する電極に分子を蒸着させる工程(前記分子は結合及びフッ素化アリール基を含み、これによって前記結合基は前記表面に結合している)及びb)前記電極に近接して有機電子材料を蒸着して、前記電極と有機電子材料とを電気接触させる工程を含む方法である。前記分子は、結合基とフッ素化アリール基との間にリンカー基を更に含んで良い。
【0010】
幾つかの実施態様では、本発明は、以下の構造:
【化1】
[式中、
その存在毎に独立に、R1は、ハロゲン、アルキル基、ヘテロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基であり;R2は、3乃至30の-CH2-基を含み、n=0-5、m=0-5、q=1-3であり、R2は少なくとも一つのエステル結合を含む]
を有する分子を含む組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、有機電子デバイスの一部の断面図を示す。
【図2】図2は、幾つかのフッ素化アリールホスホン酸を示す。
【図3】図3は、空気プラズマで処理したITOと比較した表面結合したホスホン酸を有するITOの仕事関数の安定性を示す。
【図4】図4は、空気プラズマで処理したITOを有するデバイスと比較した、表面結合したホスホン酸を有するITOを有するデバイスについての(a)電流−電圧(I-V)と(b)輝度/外部量子効率(EQE)とのグラフを示す。
【図5】図5は、空気プラズマで処理したITOを有するデバイスと比較した、表面結合したホスホン酸を有するITOを有するデバイスの安定性を示す。
【図6】図6は、空気プラズマで処理したITOを有するデバイスと比較した、表面結合したホスホン酸を有するITOを用いて製造されたOLEDデバイスの、a)電流−電圧(I-V)と(b)輝度/外部量子効率(EQE)とのグラフを示す。
【図7】図7は、単層ダイオードの構造、並びに、空気プラズマで処理したITOを有するデバイスと比較した、表面結合したホスホン酸を有するITOを用いて製造されたダイオードについての電流−電圧(IV)グラフを示す。
【図8】図8は、幾つかのホスホン酸を示す。
【図9】図9は、金属酸化物の表面に結合した幾つかのホスホン酸の表面エネルギーを示す。
【図10】図10は、ITO-PEDOT:PSSを有するデバイスと比較した、表面結合したホスホン酸を有するITOを用いて製造されたOLEDデバイスについてのa)電流−電圧(I-V)と(b)輝度/外部量子効率(EQE)とのグラフを示す。
【図11】図11は、ITO-PEDOT:PSSを有するデバイスと比較した、表面結合したホスホン酸を有するITOを用いて製造されたOLEDデバイスについてのエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルを示す。
【図12】図12は、有機光起電性デバイスの構造、並びに、空気プラズマで処理したITOを有するOPVデバイスと比較した、表面結合したホスホン酸を有するITOを用いて製造されたOPVデバイスについての電流−電圧(IV)グラフを示す。
【図13】図13は、別の幾つかのホスホン酸及びそれらの合成方法を示す。
【図14】図14は、ホスホン酸を含むチオフェンを示す。
【図15】図15は、ホスホン酸を含む幾つかの官能基を示す。
【図16】図16は、ホスホン酸を含む官能基を含む表面上にポリマーのグラフト化方法を示す。
【図17】図17は、トリアリールアミン基を含むホスホン酸の合成を概説する。
【図18】図18は、ホスホン酸の合成を概説する。
【図19】図19は、ホスホン酸の合成を概説する。
【図20】図20は、ホスホン酸の合成を概説する。
【図21】図21は、ODPA及びPA-1で官能化させたAl/AlOx表面についての湿式エンベロープ(wetting envelop)(θ=0°)を示す。
【図22】図22は、PA-1及びPA-で改質した電極を有するAl/AlOx/SAM/Au構造から得られる、電流/電圧特性を示す。
【図23】図23は、小交流信号周波数の関数としてのAl/AlOx/SAM/Au(SAM=PA-1またはPA-2)の幾何学的静電容量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
様々な実施態様が、有機電子材料と金属酸化物電極との間の接触面を制御する(例えば、電気特性、表面エネルギー、湿潤性、接着性、機械特性、化学特性、またはこれらのあらゆる組合せの制御)。一実施態様は、電極上に分子を蒸着させる工程を含み、ここで、前記電極は表面を有し、前記分子は前記表面に結合する結合基を有し、これによって少なくとも100時間に亘って安定な仕事関数を提供する。一般的には、「安定」とは、周囲条件下での安定性または不活性の動作条件化での安定性を意味する。多くの実施態様では、安定な仕事関数は、分子を蒸着させる前の電極の仕事関数とは異なる。別の実施態様では、結合した分子を有する電極の仕事関数は、別の表面改質手段(例えば、空気プラズマ処理)によって得られうる仕事関数と同等または類似であるが、結合した分子を有する電極の仕事関数は、別の表面改質手段によって得られる仕事関数よりも安定である。別の実施態様では、結合した分子を有する電極の仕事関数は24時間以上に亘ってその測定された仕事関数が±0.03eVの範囲内に維持される一方で、別の表面処理によって得られる仕事関数は、別の表面処理前の電極の値にまで迅速に減衰する。典型的には、前記分子は電極の表面上に単層を含む。前記結合基は、例えば当業者に既知のあらゆるもの、例えば、シラン、カルボン酸、スルホン酸、ホウ酸、またはホスホン酸であってよい。この分子は、例えば、結合基(アンカー基とも呼称)、リンカー基、及び置換基を含んで良い。結合基(例えば-P(O)OH2)はリンカー基(例えば-CH2-)に結合し、置換基(例えば-C6F5)はリンカー基に結合している。結合基は、共有結合的にまたは非共有結合的に表面に結合していてよい。多くの実施態様では、電極は、酸化物(例えば、インジウム酸化スズ、インジウム酸化亜鉛、酸化亜鉛、ガリウムアルミニウム酸化亜鉛、アンチモン酸化スズ、フッ素酸化スズ、酸化カドミウム、またはスズ酸カドミウム等)を含む。一実施態様では、仕事関数は、4.5V-5.6eVである。別の実施態様では、前記電極は酸化物を含み、前記分子はホスホン酸(例えば、アルキルホスホン酸、ヘテロアルキルホスホン酸、アリールホスホン酸、またはヘテロアリールホスホン酸)である。酸化物表面へのホスホン酸の結合は、当業者には既知であり、例えば、S. H. Lee
, et al, J. Kor. Phys. Soc. 49(5), 2034-2039 (2006)及びS. Koh, et al., Langmuir, 22, 6249-6255 (2006)を参照のこと。様々な置換基を有する多様なアルキル、ヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールホスホン酸は、例えば、フッ素化アリールハロゲン化物の亜リン酸トリアルキルとのミカエリス・アルブゾフ反応及びこれに次ぐ加水分解(Bhattacharya, A. K.; Thyagarajan, G. Chem. Rev. 1981, 81, 415-430を参照のこと)、光開始アルブゾフ反応、臭化アリールの金属触媒によるリン酸化反応(Goossen, L. J., et al., Synlett 2005, (3), 445-448を参照のこと)、及びアルケン類のヒドロホスホリル化により(Han, L. -B., et al., J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 5407-5408を参照)を含む当業者には既知の方法によって調製してよい。ホスホン酸はフェロセンなどの有機金属基を更に含んでもよい(例えば、Inorg. Chim. Acta. 2001, 322(1-2) 106-112)。有機金属基は、電気活性であってよい。別の実施態様では、前記方法は、b)改質された電極に近接して有機電子材料を蒸着して、前記電極と前記有機電子材料とを電気接触させる工程を更に含む。前記方法の別の実施態様では、電極は陽極であり、この方法は、c)正孔輸送層を蒸着する工程、d)電子輸送層を蒸着する工程、及びe)陰極を蒸着する工程を更に含む。有機電子材料、方法、及びデバイスの例については、"Organic Electronics: Materials, Manufacturing and Applications" H. Klauk ed., Wiley- VCH, 2006; "Handbook of Organic Electronics and Photonics" H. S. Nalwa ed., American Scientific Publishers, 2006; "Organic Light Emitting Devices: Synthesis, Properties and Applications" K. Mullen ed., Wiley- VCH, 2006; "Organic Photo voltaics: Mechanisms, Materials, and Devices" S. -S. Sun and N. S. Sariciftci ed., CRC,2005; and "Organic Field-Effect Transistors" Z. Bao and J. Locklin ed., CRC, 2007を参照のこと。電極と有機電子材料に関して本明細書中に使用される場合、「電気接触」とは、電荷が電極と有機電子材料との間を流れうることを意味する。電極と有機電子材料とは物理的に接触していてもしていなくてもよい。電子は電極から有機電子材料へ流れてよく(例えば正孔注入)、あるいは電子は電極から有機電子材料へ流れてよい(例えば電子注入)。有機電子材料は、当業者に既知のいかなるもの、例えば、導電性ポリマー、半導体ポリマー、正孔輸送ポリマー、電子移動ポリマー、放出ポリマー、太陽光吸収ポリマー(例えば、有機太陽電池中の活性層)、または分子(例えば、TPD、カルバゾール、ペンタセン、発光有機金属等)を含んでもよい。有機電子材料は、例えば、二つ以上の正孔輸送体、電子輸送体、発光体、太陽光吸収体等のブレンドを、ポリマー、ポリマー主鎖の一部またはこれらのあらゆる組合せに共有結合した、ホスト中のゲストとして更に有してよい。
【0013】
様々な実施態様は、少なくとも一つの電極を含む有機電子デバイスを含み、前記電極は表面及び前記表面に結合した結合基を有する分子を有し、ここで、前記デバイスは、長期間に亘って安定である。一実施態様では、有機電子デバイスは、電極が表面に結合した分子を有しない場合よりも安定である。有機電子デバイスは、例えば、有機発光ダイオード、有機電界効果トランジスタ、有機太陽電池等を含んで良い。別の実施態様では、電極上に結合した分子を有する有機電子デバイスは、別の表面処理(例えば、空気プラズマ処理)を施された電極を含む装置の有効性と同等または類似の有効性を有するが、電極上に結合した分子を有するデバイスの半減期(t1/2)は少なくとも50%長い。典型的には、前記分子は、電極の表面上に単層を含む。一実施態様では、図1に示されるように、電極は陽極5であり、デバイスはb)電極を覆う正孔輸送層10を更に含む。別の実施態様では、デバイスはc)正孔輸送材料を覆う電子輸送層15及びd)電子輸送材料を覆う陰極20を更に含む。例えば発光層を含む別のデバイス層は、いかなる別のデバイス層間にあってもよい。別の実施態様では、分子、電極、結合基、及び有機電子材料は上述の通りであってよい。
【0014】
一実施態様では、デバイスはa)電極(前記電極は、表面を有する)、b)結合基を介して前記電極の表面に結合した分子、及びc)前記電極と電気接触した有機電子材料を含むデバイスであり、ここで、前記分子は少なくとも一つのフッ素化アリール基を含む。これらの分子は、リンカー基(例えば、-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CF2-、等)を結合基とフッ素化アリール基との間に更に含んで良い。幾つかの実施態様では、電極は透明な導電性金属酸化物を含む。透明な導電性金属酸化物の例には、インジウム酸化スズ、インジウム酸化亜鉛、酸化亜鉛、ガリウムアルミニウム酸化亜鉛、アンチモン酸化スズ、フッ素酸化スズ、酸化カドミウム、またはスズ酸カドミウム等が含まれる。別の実施態様では、結合基と反応するように官能化されたグラフェンまたはカーボンナノチューブを含む(然るにホスホン酸は官能化された基を介してカーボンナノチューブまたはグラフェンと結合する)。多くの実施態様では、分子は表面上に単層を含む。前記分子の結合基は、例えば、シラン、カルボン酸、スルホン酸、ホウ酸、またはホスホン酸を含んでよい。幾つかの実施態様では、フッ素化アリール基は、フェニル基、ナフタレン基、またはビフェニル基を含み、フッ素の数は1乃至10である。別の実施態様では、結合基は、ホスホン酸であり、導電性透明酸化物はインジウム酸化スズである。フッ素化アリール基を含む分子は、電極の仕事関数を変更し、且つ電極表面の優れた湿潤性を維持し(粘着を可能にし)つつ、比較的に安定な仕事関数を提供しうる。
【0015】
別の実施態様は、a)表面を有する透明な導電性金属酸化物電極及びb)前記表面に結合したフッ素化アリールホスホン酸を含む有機電子デバイスである。幾つかの実施態様では、フッ素化アリールホスホン酸は、前記表面上に単層を含む。多様なフッ素化アリールホスホン酸を、上述のもののような当業者には既知の方法によって調製して良い。別の実施態様では、例えば電極がインジウム酸化スズ(ITO)である場合には、フッ素化アリールホスホン酸結合ITOの表面上の水滴によって形成される接触角は60°乃至80°である。別の実施態様では、表面エネルギーは30mJ/m2乃至50mJ/m2である。別の実施態様では、表面エネルギーは35mJ/m2乃至45mJ/m2である。別の実施態様では、表面エネルギーの極性成分は0mJ/m2乃至約15mJ/m2である。いくつかの実施態様では、フッ素化アリール基は、1乃至11のフッ素を含む。別の実施態様では、フッ素化ホスホン酸は以下の構造:
【化2】
[式中、
その存在毎に独立に、R1は、ハロゲン、アルキル基、ヘテロアルキル基、またはフッ素化アルキル基であり;R2は、メチレン、フッ素化メチレン、アルケン、またはアルキンであり;n=0-5;m=0-3;及びq=0-3であり、少なくとも一つのフッ素が存在することを条件とする]
を有する。別の実施態様には、フッ素化アリール基を含むホスホン酸が含まれる。別の実施態様では、透明な導電性金属酸化物が陽極であり、有機電子デバイスは、c)フッ素化アリールホスホン酸を覆う正孔輸送層;d)正孔輸送層を覆う電子輸送層;及びe)電子移動層を覆う陰極を更に含む。正孔輸送層、電子輸送層、及び陰極に使用される材料は、当業者に知られる通り、ポリマー、小分子、複合物、金属、またはこれらのあらゆる組合せから選択してよい。幾つかの実施態様では、陽極の仕事関数は4.4eV乃至5.6eVである。別の実施態様では、フッ素化ホスホン酸は、図2に図示した構造の一つに該当する。
【0016】
別の実施態様は、a)電極に分子を蒸着させる工程(前記電極は表面を有し、前記分子は結合及びフッ素化アリール基を含み、これによって前記結合基は前記表面に結合している)及びb)前記電極に近接して有機電子材料を蒸着して、前記電極と有機電子材料とを電気接触させる工程を含む方法である。分子を蒸着する工程及び有機電子材料を蒸着する工程は、個別に、例えば、スピンコーティング、浸漬被覆、ドロップキャスティング、蒸発、架橋、真空蒸着、またはこれらのあらゆる組合せ等の技術を単一工程または別々の工程に含んで良い。多数の実施態様において、分子は表面上に単層を含む。別の実施態様では、電極は透明な導電性金属酸化物を含む。導電性透明導電性金属酸化物及び結合は上述の通りであってよい。別の実施態様では、例えば電極がインジウム酸化スズ(ITO)である場合には、ITOに結合したフッ素化アリールホスホン酸の接触角は60°乃至80°である。別の実施態様では、表面エネルギーは30mJ/m2乃至50mJ/m2である。別の実施態様では、表面エネルギーは35mJ/m2乃至45mJ/m2である。幾つかの実施態様では、フッ素化アリール基には、フェニル基、ナフタレン基、ビフェニル基が含まれ、フッ素の数は1乃至10である。幾つかの実施態様では、結合基はホスホン酸であり、導電性透明酸化物はインジウム酸化スズである。別の実施態様では、フッ素化アリール基は1乃至11のフッ素を含んで良い。別の実施態様では、分子は下記の構造:
【化3】
[式中、
その存在毎に独立に、R1は、ハロゲン、アルキル、ヘテロアルキル、またはフッ素化アルキル基であり;R2は、メチレン、フッ素化メチレン、アルケン、またはアルキンであり;n=0-5;m=0-3;及びq=0-3であり、少なくとも一つのフッ素が存在することを条件とする]
を有するフッ素化ホスホン酸である。別の実施態様では、電極の仕事関数は4.4eV乃至5.6eVである。別の実施態様では、透明な導電性金属酸化物が陽極であり、前記方法は、c)正孔輸送層を蒸着する工程;d)電子輸送層を蒸着する工程;及びe)陰極を蒸着する工程を更に含む。別の実施態様では、フッ素化ホスホン酸は、図2の構造のいずれか一つを有する。
【0017】
別の実施態様は、下記の構造:
【化4】
[式中、
R2は、3乃至30の-CH2-基を含み、n=0-5、m=0-5であり、R1は上述の通りである]
を有するホスホン酸である。幾つかの好ましい実施態様では、R2は、エーテルを介してフェニル環に結合している。R1はまた、別の化合物またはポリマーと反応しうるか、あるいは架橋しうる官能基であってよい。こうした好ましい実施態様では、qは、1乃至3の整数であってよい。
【0018】
好ましい実施態様では、R2は、少なくとも一つのエーテル結合を含む。関連する実施態様では、R2は、-(CH2)x-Oy-(CH2)x-Oy-(CH2)z-を含み、ここで、その存在毎に個別にx=1-12、y=0-1、及びz=0-4である。別の実施態様は、ホスホン酸を含むデバイス及び方法である。一実施態様は、ホスホン酸を含むトランジスタである。
【0019】
好ましい実施態様では、本発明は、以下の構造:
【化5】
[式中、
その存在毎に独立に、R1は、ハロゲン、アルキル基、ヘテロアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基であり;R2は、3乃至30の-CH2-基を含み、n=0-5、m=0-5、q=1-3であり、且つ、R2は、少なくとも一つのエーテル結合を含む]
を有する分子を含む組成物に関する。
【0020】
R2のエーテルリンカー基を含む好ましい組成物においては、この組成物は表面を有する電極であってよく、任意に分子のホスホン酸結合基は前記電極表面に結合していてよい。こうした実施態様では、ホスホン酸の水素原子の一つまたは両方が失われてもよく、ホスホン酸の酸素原子は、任意に前記表面と共有結合を形成してよい。
【0021】
R2のエーテルリンカー基を含む好ましい組成物においては、R2はエーテル基を介してフェニル環に結合していてよく、あるいはR2は以下の構造:
-(CH2)x-Oy-(CH2)x-Oy-(CH2)z-
[式中、
その存在毎に独立に、x=1-12、y=0-1、及びz=0-3である]
を有してよい。R2のエーテルリンカー基は、以下の構造式に例示されるように、任意に置換されたフェニル環にベンジル炭素原子を介して結合していてもよい。
【化6】
【0022】
こうした組成物においては、フッ素原子の数nは、0乃至5のいずれの整数、すなわち、0、1、2、3、4、または5であってもよい。多くの実施態様では、少なくとも一つのフッ素がフェニル環上に任意に存在する。多くの実施態様では、5つのフッ素原子がフェニル環上に存在する。
【0023】
エーテルが結合したホスホン酸化合物、あるいはこれらの組成物を、多数のデバイス、とりわけ電極を含んで良い電子デバイス、例えば、ソース、ドレイン、及びゲート電極を有する電界効果トランジスタに導入してよく、こうした多くの電極、特にゲート電極は金属酸化物表面を含む。こうした実施態様では、エーテルが結合したホスホン酸化合物のホスホン酸基は、金属酸化物の表面に非共有結合的にまたは共有結合的に結合してよく、電極の酸化金属表面上に任意に単層を形成しうる。エーテルが結合したホスホン酸化合物のホスホン酸基が、酸化金属表面に共有結合的に結合する場合、ホスホン酸基の一つまたは両方の水素原子が、結合操作中に除去されうることが理解されるべきである。
【0024】
実施例及び本明細書に添付される図面から明かな通り、エーテルが結合したホスホン酸化合物の電極表面への結合は、電極表面に誘電層を形成し、且つ/又は有機分子、例えば有機半導体により電極表面の「湿潤性」を非常に著しく改善して、改質された電極を含む電子デバイスの製造、耐久性、特性、及び/または性能を著しく改善するという予期せぬ優れた効果を有する。
【0025】
本発明はまた、エーテルが結合したホスホン酸化合物もしくはこれを含む組成物を電極の表面に蒸着することによって、電極の表面エネルギーを変更する方法を含み、こうした方法においては、エーテルが結合したホスホン酸化合物は電極に結合してよく、好ましくは電極表面にエーテルが結合したホスホン酸化合物の単層を形成する。
【0026】
別の実施態様は、電極の表面エネルギーを変更して、電極と有機電子材料との間の相互作用特性(例えば、接着)を改善する方法である。ほとんどの実施態様では、電極の表面エネルギーは、電極の表面に結合する分子を蒸着することによって(例えば、本明細書中に記載のように)変更される。前記分子は単層を形成しうる。幾つかの実施態様では、仕事関数は著しく変更されない。別の実施態様では、仕事関数が変更されて、有機電子材料へのもしくは有機電子材料からの電子の流れを増大または減少させる。一実施態様は、a)表面、第一仕事関数、及び第一表面エネルギーを有する電極を準備する工程;及びb)前記表面に分子を蒸着させ、これにより第二仕事関数及び第二表面エネルギーを有する改質電極を準備する工程を含む方法であり、ここで、前記分子は結合基を介して電極に結合し、第一表面エネルギーと第二表面エネルギーとは相違する。一実施態様では、第二表面エネルギーは第一表面エネルギーと相違し、改質電極への有機電子材料の接着は、電極への有機電子材料の接着よりも優れており、ここで電子は有機電子材料と電極との間を流れうる。別の実施態様では、第二仕事関数は第一仕事関数とは相違して、有機電子材料と電極との間の電子流が改善される。別の実施態様では、第二表面エネルギーは第一表面エネルギーとは相違して、変性電極への有機電子材料の接着は電極への有機電子材料の接着よりも優れており、ここで電子は有機電子材料と電極との間を流れてよく、ここで第二仕事関数は第一仕事関数とは相違して有機電子材料と電極との間の電子流が改善される。一実施態様では、電極は透明な導電性金属酸化物であり、第二表面エネルギーは約20mJ/m2乃至約50mJ/m2であり、仕事関数は約4.4eV乃至約5.6eVである。幾つかの実施態様では、表面エネルギーの極性成分は、0mJ/m2乃至約15mJ/m2である。別の実施態様では、分子は表面上に単層を形成する。別の実施態様では、透明な導電性金属酸化物はインジウム酸化スズ、インジウム酸化亜鉛、酸化亜鉛、ガリウムアルミニウム酸化亜鉛、アンチモン酸化スズ、フッ素酸化スズ、酸化カドミウム、またはスズ酸カドミウムを含み、分子はホスホン酸である。別の実施態様では、分子はアルキルホスホン酸、ヘテロアルキルホスホン酸、アリールホスホン酸、またはヘテロアリールホスホン酸である。別の実施態様では、第一仕事関数と第二仕事関数は相違し、第二表面エネルギーと第一表面エネルギーは本質的に同等である。
【0027】
別の実施態様には、ホスホン酸、例えば、図2、9、10、及び14及び表1に示されるものなどが含まれる。これらのホスホン酸は、金属酸化物の表面に結合し、且つ/または上述のように有機電子デバイスを構成する。
【0028】
別の実施態様は、ホスホン酸を含むチオフェンを含む。ホスホン酸を含むチオフェンは金属酸化物の表面に結合し、且つ/または上述のような有機電子デバイスを構成する。ホスホン酸を含むチオフェンの例は、図14に示される。一実施態様では、ホスホン酸を含むチオフェンは、ホスホン酸が結合した金属酸化物の表面への、正孔輸送ポリマーを含むチオフェンの適合性及び/または接着を改善する。
【0029】
別の実施態様は、官能基を含むホスホン酸を含む。官能基を含むホスホン酸は、金属酸化物の表面に結合し、且つ/又は上述のように有機電子デバイスを構成する。官能基は、例えば、分子、ポリマー、生体高分子、タンパク質、核酸等を含む広範な化合物に対して反応性であって良い。官能基は、例えば、求電子性、求核性であってよく、基を生じても、光反応性であっても、あるいはこれらのあらゆる組み合わせであってもよい。官能基は、例えば、カルボン酸、アクリレート、アミン、アルデヒド、ケトン、アルケン、アルキン、または当業者に既知であるこれらのいずれかであってよい。官能基はまた、例えば、エステル、カルバメート、フタルイミド等として保護されていてよい。官能基を含むホスホン酸の幾つかの例は、図15に示される。別の実施態様は、官能基と反応するための分子及び/又はポリマーを含む。ホスホン酸が金属酸化物の表面に結合している場合には、官能基は第二分子及び/又はポリマーと反応して、前記第二分子及び/又はポリマーを表面に結合(すなわち、共有結合)させてよい。一実施態様では、ベンゾフェノン官能基はポリマー中の-C-H結合と反応する。別の実施態様には、官能基の分子及び/又はポリマーとの反応の方法、この方法によって製造される物品、及びこの方法によって製造される有機電子デバイスが含まれる。別の実施態様では、官能基はモノマーとの反応に使用され、表面からポリマーを成長させる。官能基をポリマーと反応させる(例えば、ポリマーを表面上の官能基を介して表面に結合させる)図は、図16aに示され、官能基からの重合化の図は、図16bに示される。別の実施態様は、官能基を含むホスホン酸を分子及び/又はポリマーと反応させる工程を含む、分子及び/又はポリマーを金属酸化物の表面に結合させる方法を含み、ここで、ホスホン酸は金属酸化物の表面に結合して、官能基は分子及び/又はポリマーと反応する。別の実施態様は、ホスホン酸を含む官能基を分子及び/又はポリマーと反応させる工程を含む方法によって製造される有機電子デバイスまたはセンサー(例えば、バイオセンサー)を含み、ここで、ホスホン酸は金属酸化物の表面に結合し、官能基は分子及び/又はポリマーと反応する。別の実施態様は、ホスホン酸を含む官能基をポリマーのモノマーと反応させる工程を含む、金属酸化物の表面からポリマーを成長させる方法を含み、ここで、ホスホン酸は金属酸化物の表面に結合する。別の実施態様は、分子(この分子は官能基及びホスホン酸を有する)をポリマーのモノマーと反応させる工程を含む方法によって製造される有機電子デバイスまたはセンサー(例えば、バイオセンサー)を含み、ここで、ホスホン酸は金属酸化物の表面に結合する。重合過程には、例えば、開環メタセシス重合(ROMP)、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、縮重合を含んでよい。
【0030】
別の実施態様は、トリアリールアミンを含むホスホン酸及びトリアリールアミン-ホスホン酸を含む有機電子デバイスである。前記トリアリールアミンは、以下の構造:
【化7】
[式中、
Arは、その存在毎に独立にアリール基であり、R2は、メチレン、フッ素化メチレン、アルケン、またはアルキンであり、且つq=0-3である]
を含んでよい。各Ar基は、独立にアリール基、ヘテロアリール基、アルキル基、ヘテロアルキル基、またはハロゲンで置換されていてよい。Ar3基は、Ar3がベンゼン環である場合、N及びR2に対してオルト、メタ、パラ置換されていてよい。別の実施態様では、Ar1、Ar2、及び/又はAr3の一つ以上が、-NAr42で置換されており、ここで、Ar4は、その存在毎に独立にアリールまたはヘテロアリール基である。幾つかの実施態様では、Ar1は-NAr42で置換されており、Ar1は、ベンゼン環、ビフェニル、またはナフチルである。幾つかの実施態様では、隣接Ar基は結合して(例えば、単結合、エチレン結合、ヘテロアルキルブリッジ、多重結合、またはアリールもしくはヘテロアリール環中の原子で)、一つ以上の環を形成する(例えば、Ar1及びAr2が単結合で互いに結合してカルバゾールを形成する場合)。
【0031】
別の実施態様は、ホスホン酸を含むポリマー並びに金属酸化物の表面に結合したホスホン酸を含むポリマーを含む有機電子デバイスもしくはセンサーを含む。前記ポリマーは、例えば、ホモポリマーまたはコポリマーであってよい。コポリマーは、モノマーまたは様々な組成物、異性体であるモノマー、立体異性体であるモノマー、あるいはこれらのあらゆる組み合わせを含んでよい。前記コポリマーは、例えば、別の官能基(例えば、上述のもの)、相溶化基(例えば、PEG)、または防汚基(例えば、フッ素化基)、あるいはこれらのあらゆる組み合わせを含んでよい。別の実施態様は、ホスホン酸を含むポリマーを金属酸化物の表面に結合させる方法並びにこの方法によって製造された物品を含む。
【0032】
(実施例)
下記の実施例は例示的なものであり、特許請求の範囲を限定するものではない。
【0033】
電極表面を特徴付けるのに使用される方法:
X線光電子分光法(XPS)およびUV-光電子分光法(UPS):単色Al(Kα)源(300W)を有するXPSおよびUPS(He I励起源)は、原子的に清浄な金サンプルを使用して頻繁に較正されたフェルミエネルギー(EF)を用い、Kratos Axis-Ultra分光計を使用して、他の場所[Alloway,D.M.; Hofmann,M.; Smith,D.L.; Gruhn,N.E.; Graham,A.L.; Colorado,R.; Wysocki,V.H.; Lee,T.R.; Lee,P.A.; Armstrong,N.R. J. Phys. Chem. B 2003、107、11690〜11699]で記述されるように行った。全てのITOサンプルは、分光計と電子平衡状態にあり、即ち各サンプルごとのフェルミエネルギーは既知であった。全てのXPSスペクトルを、UPSデータ収集の前に収集した。全ての特徴付けを、他に指示されない限り通常の取出し角度(0°)で行った。
【0034】
接触角:これらの測定は、プローブ液(0.5μL)として水およびヘキサデカンを使用する、KRUSS液滴形状解析システムDSA 10Mk2で実施した。数滴(典型的には6回反復)を素早く表面に置き、針を引き戻し、液滴形状をカメラで即座に捉えた。画像を液滴形状解析ソフトウェアで解析して、所与の液滴それぞれに最も適した方法、通常は円の当てはめにより接触角を決定し、結果を平均した。接触角データは、調和平均法によって表面エネルギーの成分を計算するのに使用した。
【0035】
結合分子を有するITOの調製
ITOコーティングガラス基板(20Ω/□、Colorado Concept Coatings、L.L.C.)を、まず、Triton-X(Aldrich)のDI水中希釈溶液を使用して20分間、超音波浴内で清浄化した。次いでITO基板をDI水中で完全に濯ぎ、DI水中で20分間最終的な超音波処理をした。さらなる有機清浄化を、アセトンおよびエタノールを使用してそれぞれ20分間超音波浴内で行った。清浄化中の全てのステップの後、窒素ガンを使用してサンプルに吹き付けて、残留する溶媒をITO表面から吹き飛ばした。
【0036】
次いで洗浄したITO基板を、70℃の真空乾燥炉内で一晩、(1×10-2Torr)の圧力下で乾燥した。
【0037】
SiOx障壁層の形成
デバイス構造では、300nmのSiOxのパシベーション層を、基板のいくつかの部分にシャドウマスクを用いてITO上に電子ビームにより堆積し、それによって、様々なデバイスの陽極と陰極との間に電気ショートを生成することなくトップ陰極(top cathode)まで電気コンタクトを物理的に作製できる領域を画定した。SiOxの堆積は、4Å/秒の速度および1×10-6よりも低い圧力で行った。
【0038】
単層の形成:
有機ホスホン酸(1mM、CHCI3:C2H5OH::2:1中)を室温で一晩撹拌し、得られる溶液を0.2μm PTFEに通して濾過し、上記にて調製されたITO基板を室温でホスホン酸溶液中に浸漬し、この溶液を1時間まで蒸発させた。次いで基板を、120℃のホットプレート上で1時間アニールした。次いで温度を室温まで低下させた後、デバイスの任意の有機層を堆積しまたは仕事関数を測定した。全ての単層形成ステップおよび溶液処理は、H2Oレベルが1ppmよりも低くかつ空気レベルが20ppmよりも低い、窒素が充填されたグローブボックス(GB)内で行った。
【0039】
電極仕事関数の安定性およびデバイスの安定性
図3は、オクチルホスホン酸(OPA)の結合分子を有するITOと3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデシルフルオロオクチルホスホン酸(FOPA)の結合分子を有するITOとの両方が、空気プラズマで処理されたITOに比べてその仕事関数の安定性が非常に改善された例を示す。ITOの表面に結合されたFOPAで作製されたデバイスの寿命(図5)は、安定性の向上を示した。
【0040】
フッ素化アリールホスホン酸
インジウムスズ酸化物(ITO)の表面結合されたその他の分子の例を、Table 1(表1)に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
ジエチル3,4,5-トリフルオロベンジルホスホネートの合成
ヨウ化3,4,5-トリフルオロベンジル(5.075g、22.55mmol)をトリエチルホスファイト(11.6mL、67.7mmol)と合わせ、この混合物を加熱し、135℃で一晩焼結した。混合物を高真空下に置き、70℃に12時間加熱した。最終生成物は、透明な油であった(6.10g、収率96%)。1H NMR(400.14MHz, CDCl3)δ6.93(m, 2H)、4.07(五重線, J=7.10Hz, 4H)、3.06(d, J=21.7Hz, 2H)、1.28(t, J=7.05Hz, 6H)。13C{1H}NMR(100.62MHz, CDCl3)δ150.8(dddd, J=249.7, 9.8, 3.8, 3.8Hz, 2C)、138.74(dtd, J=250.6, 15.2, 3.9Hz)、128.2〜127.9(m)、113.9〜113.6(m, 2C)、62.30(d, J=6.74Hz, 2C)、32.93(d, J=139.8Hz)、16.20(d, J=6.01Hz, 2C)。31P{1H}NMR(202.45MHz, CDCl3):δ24.96。分析計算値(実測値)%:C46.82(46.72)、H5.00(4.96)。MS(FAB, m/z):269(M+, 100%)。[M+H]+に関する精密質量の計算値(実測値)、m/z): 269.05544(269.05616)。
【0043】
合成3,4,5-トリフルオロベンジルホスホン酸(F3BPA)
ジエチル3,4,5-トリフルオロベンジルホスホネート(2.80g、9.92mmol)を、乾燥ジクロロメタン(30mL)に溶解した。ブロモトリメチルシラン(4.1mL、31.7mmol)を、注射器を介して添加した。反応物を、グリースが塗られたガラス栓でキャップし、6時間撹拌したままにした。揮発分を減圧下で除去することにより、黄色の油が得られた。これを10:1のメタノール:水(20mL)中に溶解し、一晩撹拌したままにした。溶媒を除去した後、アセトニトリルでの再結晶によって大きな白色の針が得られた(2.00g、収率89%)。1H NMR(400.14MHz, DMSO)δ7.16(m, 2H)、2.99(d, J=21.4Hz, 2H)。13C{1H}NMR(100.62MHz, DMSO)δ149.9(dddd, J=246, 9.6, 3.6, 3.6Hz, 2C)、137.5(dtd, J=247, 15.4, 3.7)、132.1〜131.8(m)、114.4〜114.1(m, 2C)、34.42(d, J=132Hz)。31P{1H}NMR(161.97MHz, DMSO):δ20.54。分析計算値(実測値)%:C37.19(37.17)、H2.67(2.63)。MS(FAB, m/z):227(M+, 100%)。[M+H]+に関する精密質量の計算値(実測値)、m/z):227.00849(227.00670)。
【0044】
ジエチル3,4,5-トリフルオロフェニルホスホネートの合成
トリフルオロブロモベンゼン(1.70mL、14.2mmol)、ジエチルホスファイト(2.20mL、17.1mmol)、N,N-ジシクロヘキシルメチルアミン(4.60mL、21.3mmol)、およびエタノール(50mL)を、窒素パージがなされた丸底フラスコ内で全て合わせた。5分間撹拌した後、トリフェニルホスフィン(223mg、0.85mmol)および酢酸パラジウム(64mg、0.28mmol)を一体としてフラスコに添加した。溶液を76℃に加熱し、一晩撹拌したままにした。溶液は、半透明の褐色として始まったが、朝までにより透明になった。冷却すると、シリカプラグ(溶離剤としてヘキサンから始まり、必要に応じて酢酸エチルで極性を高めた。)は流動し、UV活性スポット(Rf=0.35、1:1へキサン:酢酸エチル中)が単離された。最終生成物は、透明な油であった(3.477g、収率91%)。1H NMR(400.14MHz, CDCl3)δ7.44(dt, J=14.4, 6.50Hz 2H)、4.19〜4.07(m, 4H)、1.34(t, J=7.07Hz, 6H)。13C{1H}NMR(100.62MHz, CDCl3)δ151.1(dddd, J=254.7, 25.4, 10.1, 2.9Hz, 2C)、142.5(dtd, J=258.6, 15.1, 3.3Hz)、125.0(dtd, J=194.5, 5.8, 5.2Hz)、116.3〜116(m, 2C)、62.72(d, J=5.63Hz, 2C)、16.16(d, J=6.34Hz, 2C)。31P{1H}NMR(161.97MHz, CDCl3):δ14.94。分析計算値(実測値)%:C44.79(44.51)、H4.51(4.65)。MS(FAB, m/z):283(M+, 100%)。[M+H]+に関する精密質量の計算値(実測値)、m/z):283.07109(283.07135)。
【0045】
3,4,5-トリフルオロフェニルホスホン酸(F3PPA)の合成
12M HCl(12mL、過剰)を、丸底フラスコに入れたジエチル3,4,5-トリフルオロフェニルホスホネート(320mg)に添加した。反応混合物を12時間還流した。褐色の油が、冷却後および溶媒除去後に得られた。1H NMRは、未反応の出発材料が存在することを示した。8M HCl 12mLを添加し、反応混合物を数日間再び還流した。混合物を冷まし、数週間放置した。オフホワイトの固体が、溶媒除去後に得られた(190mg、収率76%)。1H NMR(400.14MHz, DMSO)δ7.49〜7.42(m, 2H)。13C{1H}NMR(100.62MHz, DMSO)δ150.1(dddd, J=251.0, 23.7, 7.3, 2.6Hz, 2C)、140.5(dtd, J=253.1, 15.3, 2.6Hz)、131.8(dm, J=178.4Hz)、115.3〜114.9(m, 2C)。31P{1H}NMR(161.97MHz, DMSO):δ9.22。分析計算値(実測値)%:C33.98(33.94)、H1.90(1.80)。MS(FAB, m/z):213(M+, 100%)。[M+H]+に関する精密質量の計算値(実測値)、m/z):212.99284(212.99418)。
【0046】
ジエチル3,5-ジフルオロベンジルホスホネートの合成
3,5-ジフルオロベンジルブロミド(3.0mL、23.2mmol)を、トリエチルホスファイト(9.1mL、53.3mmol)と合わせ、この混合物を加熱し、135℃で一晩撹拌した。混合物を高真空下に置き、70℃に12時間加熱した。最終生成物は、透明な油であった(5.78g、収率94%)。1H NMR(400.14MHz, CDCl3)δ6.83(m, 2H)、6.71(dt, J=9.00, 2.28Hz)、4.06(m, 4H)、3.12(d, J=21.94Hz, 2H)、1.28(t, J=7.09Hz, 6H)。31P{1H}NMR(161.97MHz, CDCl3):δ25.22。
【0047】
3,5-ジフルオロベンジルホスホン酸の合成
ジエチル3,5-ジフルオロベンジルホスホネート(3.00g、11.4mmol)を、乾燥ジクロロメタン(25mL)に溶解した。ブロモトリメチルシラン(4.9mL、37mmol)を、注射器を介して添加した。反応物を、グリースが塗られたガラス栓でキャップし、6時間撹拌したままにした。揮発分を減圧下で除去することにより、黄色の油が得られた。これを8:1のメタノール:水(25mL)に溶解し、そのまま一晩撹拌した。溶媒除去後、アセトニトリルでの再結晶により、白色の結晶質固体が得られた(1.98g、収率91%)。1H NMR(400.14MHz, DMSO)δ7.05(dt, J=9.49, 2.09Hz)、6.95(d, J=8.54Hz, 2H)、3.02(d, J=21.57Hz, 2H)。31P{1H}NMR(161.97MHz, DMSO):δ20.63。分析計算値(実測値)%:C40.40(40.67)、H3.39(3.39)。
【0048】
ジエチル2,6-ジフルオロベンジルホスホネートの合成
2,6-ジフルオロベンジルブロミド(3.0g、14.5mmol)をトリエチルホスファイト(6.2mL、36.2mmol)と合わせ、この混合物を加熱し、135℃で一晩撹拌した。混合物を高真空下に置き、80℃に10時間加熱した。最終生成物は、微かに黄色がかった油であった(3.30g、収率86%)。1H NMR(400.14MHz, DMSO)δ7.36(m)、7.10(m, 2H)、3.96(m, 4H)、3.20(d, J=21.08Hz, 2H)、1.16(t, J=7.05Hz, 6H)。13C{1H}NMR(100.62MHz, CDCl3)δ161.0(ddd, J=249.0, 7.3, 6.2Hz, 2C)、128.4(dt, J=10.2, 3.82Hz)、111.0(ddd, J=18.9, 6.0, 3.5Hz, 2C)、108.5(dt, J=19.8, 10.5Hz)、62.1(d, J=6.5Hz, 2C)、20.6(dt, J=142.1, 2.3Hz)、16.0(d, J=6.2Hz, 2C)。31P{1H}NMR(161.97MHz, DMSO):δ24.68。分析計算値(実測値)%:C50.01(49.71)、H5.72(5.78)。MS(FAB, m/z):265(M+, 100%)。[M+H]+に関する精密質量の計算値(実測値)、m/z):265.08051(265.08278)。
【0049】
2,6-ジフルオロベンジルホスホン酸の合成
ジエチル2,6-ジフルオロベンジルホスホネート(2.00g、7.57mmol)を、乾燥ジクロロメタン(20mL)に溶解した。ブロモトリメチルシラン(3.3mL、25mmol)を、注射器を介して添加した。反応物を、グリースが塗られたガラス栓でキャップし、そのまま6時間撹拌した。揮発分を減圧下で除去することにより、黄色の油が得られた。これを10:1のメタノール:水(20mL)に溶解し、そのまま一晩撹拌した。溶媒除去後、アセトニトリルでの再結晶により、白色の結晶質固体が得られた(1.199g、収率76%)。1H NMR(400.14MHz, DMSO)δ7.29(m)、7.04(m, 2H)、2.96(d, J=20.99Hz, 2H)。31P{1H}NMR(161.97MHz, DMSO):δ19.51。分析計算値(実測値)%:C40.40(40.64)、H3.39(3.34)。
【0050】
ジエチル2,6-ジフルオロフェニルホスホネートの合成
2,6-ジフルオロヨードベンゼン(3.0g、12.5mmol)を、窒素でフラッシュした圧力容器内でトリエチルホスファイト(10.7mL、62.5mmol)と合わせた。この容器を密閉し、光反応器(16バルブ-350nm)内で20時間回転させた。反応混合物を、50℃で5時間、高真空(0.08Torr)下に置いた。カラムをヘキサンおよび酢酸エチルに流した(流れるにつれ極性が高まる)。UV活性であるトップスポット(top spot)を分離した。溶媒除去後、黄色がかった液体が残された(2.30g、収率74%)。1H NMR(400.14MHz, DMSO)δ7.72(m)、7.21(m, 2H)、4.10(m, 4H)、1.25(t, J=7.04Hz)。31P{1H}NMR(161.97MHz, DMSO):δ8.23。ホスホネートを上述のように加水分解して、対応するホスホン酸を得ることができる。
【0051】
4-フルオロフェニルホスホン酸の合成
ジエチル4-フルオロフェニルホスホネート(600mg、2.55mmol)を8M HCl(10mL、過剰)と合わせ、この混合物を一晩還流した。反応物を冷却し、濾過することにより、濃い染みを除去した。溶媒を、固体の形成が始まるまで真空下で除去した。次いで混合物を、冷蔵庫内に数時間置いた。固体を乾燥することにより、オフホワイトの粉末が得られた(P80g)。1H NMR(400.14MHz, DMSO)δ7.71(ddd, J=12.49, 8.52, 5.99Hz, 2H)、7.28(ddd, J=9.02, 9.02, 2.65Hz, 2H)。31P{1H}NMR(161.97MHz, DMSO):δ12.81。分析計算値(実測値)%:C40.93(40.33)、H3.43(3.49)。
濾液を真空乾燥することにより、ベージュの粉末が得られた(250mg)。分析計算値(実測値)%: C 40.93(39.47)、H 3.43(3.48)。
【0052】
パーフルオロフェニルホスホン酸の合成
ジエチルパーフルオロフェニルホスホネート(1060mg、3.48mmol)を8M HCl(10mL、過剰)と合わせ、この混合物を一晩還流した。反応物を冷却し濾過することにより、濃い染みが除去された。溶媒を、固体の形成が始まるまで真空下で除去した。次いで混合物を、冷蔵庫内に数時間置いた。固体を乾燥することにより、オフホワイトの粉末(130mg)が得られた。1H NMRは、DMSO以外のシグナルを示さなかった。31P{1H}NMR(161.97MHz, DMSO):δ-0.93。分析計算値(実測値)%:C29.05(29.89)、H0.81(1.02)。
【0053】
濾液を真空乾燥することにより、ベージュの粉末が得られた(740mg)。分析計算値(実測値)%: C 29.05(29.33)、H 0.81(0.95)。
【0054】
デバイス効率
OLEDデバイスは、表面結合ホスホン酸(PA)を有するITO電極を用いて製作した。次いでホスホン酸修飾ITOサンプルを、蒸発チャンバと並べて2重グローブボックスを接続するT-予備チャンバを通して、蒸発チャンバ内に投入するために移した。まず、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス(1-ナフチル)-1,1'ビフェニル-4,4"ジアミン(α-NPD)のホール輸送層(HTL)(40nm)を、熱蒸着により1Å/秒の速度で堆積した。放出層は、4,4'-ジ(カルバゾール-9-イル)-ビフェニル(CBP)中(6重量%)fac tris(2-フェニルピリジナト-N,C2')イリジウム[Ir(ppy)3]の同時蒸着により形成し、その結果、20nmの厚さの被膜が得られた。基板での蒸着速度は1Å/秒であった。バトクプロイン(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン,BCP)のホール遮断層(40nm)を、0.4Å/秒の速度で放出層上に引き続き堆積した。有機層の堆積中、圧力を1×10-7Torrよりも低く保った。最後に、電子注入層として働くフッ化リチウム(LiF、3nm)の薄層を、さらに陰極としてのAl(200nm)を、堆積した。LiFおよびAlは、1×10-6Torrよりも低い圧力で、それぞれ0.1Å/秒および2Å/秒の速度で堆積した。シャドウマスクをAl堆積使用して、1基板当たり5個のデバイスを作製し、各デバイスの活性面積は0.1cm2であった。このデバイスの最終構成は、ガラス/ITO/単層/α-NPD(40nm)/CBP:Ir(ppy)3(20nm)/BCP(40nm)/LiF(3nm)/Al(200nm)であった。
【0055】
電流-電圧-光(I-L-V)特性を、デバイスを空気に曝すことなくグローブボックス内で測定した。
【0056】
デバイスは、空気プラズマ処理がなされたITOを用いて製作されたデバイスと比べて非常に類似した効率を示し(図6、図6に示される構造に関してはTable 1(表1)参照)、しかし、仕事関数は、フッ素化アリールホスホン酸処理がなされたITOの場合は空気プラズマ処理がなされたITOの場合より安定であり、その製作はより容易であった。
【0057】
Table 2(表2):図8に示される化合物に関する仕事関数の値および価電子帯の最大値(VBM)。エントリー1=DSC ITO;エントリー2=DSC OP ITO-2;エントリー3=DSC OP-ITO-2;エントリー4=DSC OP-ITO-3。DSC ITOは、洗浄剤/溶媒で清浄化されたITOであり(下記参照)、DSC OP-ITOは、DSC ITOと15分のOPエッチングとを合わせたものである。その他全てのサンプルは、示されるPAで修飾されたOP-ITOである。サンプル欄の数字は図8の化合物を示す。ある場合には、OPは単層の被覆範囲を増大させ、表面エネルギーおよび仕事関数に対してはDSC単独の場合とは異なる状態で影響を及ぼす。
【0058】
【表2】
【0059】
図9は、様々なサンプル(上記)の表面エネルギーのグラフを示す。上方の青い部分は極性成分であり、下方のオレンジの部分は分散性成分である。図9は、ITOの表面に結合されたTable 2(表2)のホスホン酸のいくつかの表面エネルギーを示す。
【0060】
Table 3(表3):フッ素の数、F1ピークとIn3pピークとの面積比、調節比(分子上のフッ素の数を考慮に入れる)、および相対比(調節比の1つを1.00に設定し、その他を同様の手法で調節することによる)。サンプル欄の数値は、図8の化合物を示す。
【0061】
【表3】
【0062】
F1とIn3p(3/2)のピークの面積を計算し、これらを互いに比較することにより、各PAが互いに対してどれだけ良好な単層をもたらすかに関する概要がわかる(Table 5(表5))。しかし、いくつかの事項を考慮すべきである。まず、強度は、各修飾因子上のフッ素数を考慮に入れて全て調節すべきである。さらに、オルト置換されたフッ素を有するこれら修飾因子は、フッ素が指示する方向のために相対比の低下を示す可能性がある。これらの原子はX線から遮断されるので、その強度は予測よりも低い可能性がある。
【0063】
図10は、ITO-PEDOT:PSS(20nm)を用いたデバイスと比較した、表面結合ホスホン酸を有するITOで製作されたOLEDデバイスのIVおよび輝度/EQEのグラフを示す。1000cd/m2でのこのデバイスの効率は、空気プラズマ、PEDOT:PSS 4083(CLEVIOS PVP AI 4083、かつてのBaytron、Lot#HCD07P109)、PEDOT:PSS CH8000 (CLEVIOS PVP CH 8000、かつてのBaytron、Lot #BPSV0003)、F5BPAの場合、20%、18.9%、17%、および17.8%である。表面結合ホスホン酸を有するITOおよびITO-PEDOTで製作されたデバイスのエレクトロルミネセントスペクトルを、図11に示す。PEDOTデバイスに関するエレクトロルミネセントスペクトルは、空気プラズマおよびホスホン酸結合ITOデバイスと比較して修正した。この修正は、デバイスの色出力に影響を及ぼす。したがってITOホスホン酸電極は、空気プラズマの仕事関数安定性の課題およびPEDOTの色修正のない状態で、空気プラズマおよびPEDOTデバイスとほぼ同じ効率を有する。
【0064】
有機光電(OPV)デバイス(図12)を、ホスホン酸(PA)修飾ITO電極上に製作した。比較のため、空気プラズマ処理を基にしたOPVデバイスも製作した。ポリ_3-ヘキシルチオフェン(P3HT)および_6,6_-フェニルC71酪酸メチルエステル(PCBM-70)をベースにしたバルク-ヘテロ接合層(100nm)を、クロロベンゼン溶液(17mg/ml、比10:7::P3HT:PCBM)から、700RPMで1分間スピンコーティングした。アルミニウム電極を、1×10-6Torrよりも低い圧力および2Å/秒の速度での熱蒸着を使用することによって、P3HT:PCBM層上に堆積した。シャドウマスクをAl堆積用に使用して、1基板当たり5個のデバイスを作製し、各デバイスの活性面積は0.1cm2とした。次いでサンプルを、ホットプレート上で30分間、窒素環境下で150℃でアニールした。図12は、プラズマ処理したITOデバイスおよびホスホン酸処理したデバイスであってランプ強度が71.5mW/cm2であるデバイスの、暗-明IVグラフを示す。Table 4(表4)に列挙されたデバイスパラメータは、3個のデバイスそれぞれの平均である。
【0065】
【表4】
【0066】
官能化ホスホン酸の合成
2-(12-ブロモドデシル)イソインドリン-1,3-ジオンの合成
1,12-ジブロモドデカン(32.22g、98.2mmol)、カリウムフタルイミド(4.60g、24.5mmol)、およびジメチルホルムアミド(20mL)を合わせ、160℃で2.5時間還流した。冷却後、水を添加し、有機物をジクロロメタンに吸収させた(分液漏斗上に分離)。溶媒を減圧下で蒸発させ、粗製生成物をヘキサン中でカラム処理した。スポットは分離せず、画分を合わせ、溶媒を除去し、粗製材料を300mLアセトンに再溶解した。これを還流し、10gのカリウムフタルイミドを4時間にわたり添加した。混合物を一晩還流した。冷却後および溶媒除去後、1:1の酢酸エチル:ヘキサンを使用して、粗製生成物をカラム処理した。トップスポットは、所望の生成物であることが明らかにされ、白色固体として収集されたが(9.30g)、これは報告された文献: HeIv. Chimica Acta. 2001、84(3)、678〜689と一致していた。
【0067】
ジエチル12-(1,3-ジオキソイソインドリン-2-イル)ドデシルホスホネートの合成
2-(12-ブロモドデシル)イソインドリン-1,3-ジオン(9.30g、23.6mmol)を、丸底フラスコ内でトリエチルホスファイト(11.76g、70.7mmol)と合わせ、この混合物を加熱し、135℃で16時間撹拌した。次いで反応混合物を、90℃の高真空下に4時間置いた。次いで生成物が、酢酸エチルでのカラムクロマトグラフィ後に透明な油として得られた(8.96g、収率84%)。1H NMR(400.14MHz, CDCl3)δ7.80(dd, J=5.43, 3.04Hz, 2H)、7.67(dd, J=5.47, 3.05Hz, 2H)、4.08〜4.02(m, 4H)、3.63(t, J=7.33Hz, 2H)、1.73〜1.45(m, 6H)、1.32〜1.11(m, 22H)。13C{1H}NMR(100.62MHz, CDCl3)δ168.4(2C)、133.7(2C)、132.1(2C)、123.0(2C)、61.30(d, J=6.5Hz, 2C)、37.96、30.51、(d, J=17.0Hz)、29.41(2C)、29.35、29.25、29.07、28.98、28.49、26.75、25.55(d, J=140.1Hz)、22.29(d, J=5.0Hz)、16.39(d, J=6.1Hz, 2C)。31P{1H}NMR(161.97MHz, CDCl3):δ33.38。MS(ESI, m/z):452.235(M+, 100%)。[M+H]+に関する精密質量の計算値(実測値)、m/z): 452.256039(452.254800)。分析計算値(実測値)%: C 63.84(63.41)、H 8.48(8.53)。
【0068】
12-(1,3-ジオキソイソインドリン-2-イル)ドデシルホスホン酸の合成
ジエチル12-(1,3-ジオキソイソインドリン-2-イル)ドデシルホスホネート(2.00g、4.43mmol)を、乾燥ジクロロメタン(25mL)に溶解した。ブロモトリメチルシラン(1.8mL、14.2mmol)を、注射器を介して添加した。反応物を、グリースが塗られたガラス栓でキャップし、そのまま一晩撹拌した。揮発分を減圧下で除去することにより、黄色の油が得られた。これを10:1のメタノール:水(20mL)に溶解し、そのまま一晩撹拌した。溶媒除去後、アセトニトリルでの再結晶によって、白色の粉末状固体が得られた(1.709g、収率98%)。1H NMR(400.14MHz, DMSO)δ7.84(m, 4H)、3.54(t, J=7.1Hz, 2H)、1.58〜1.53(m, 2H)、1.50〜1.31(m, 4H)、1.30〜1.20(m, 16H)。13C{1H}NMR(100.62MHz, DMSO)δ167.9(2C)、134.4(2C)、131.6(2C)、123.0(2C)、37.36、30.08(d, J=15.8Hz)、28.99、28.95、28.87(2C)、28.70、28.53、27.85、27.54(d, J=136.5Hz)、26.22、22.73、(d, J=4.58Hz)。31P{1H}NMR(161.97MHz, DMSO):δ27.74。MS(FAB, m/z):396.2(M+, 100%)。[M+H]+に関する精密質量の計算値(実測値)、m/z):396.19399(396.19445)。分析計算値(実測値)%:C60.75(60.64)、H7.65(7.80)。
【0069】
11-ホスホノウンデカン酸の合成
11-メトキシ-11-オキソウンデシルホスホン酸(1.72g、6.136mmol)を、8M HCl(25mL、過剰)に溶解し、この混合物を一晩還流した。冷却後、白色の結晶質固体が沈殿した。これを濾過し、冷アセトニトリルで洗浄した。濾液を減少させ、形成された沈殿物も濾過によって収集した(1.156g、収率71%)。
【0070】
3-(4-ベンゾイルフェノキシ)プロピルホスホン酸の合成は、文献に従い合成した。
【0071】
トリアリールアミンを含むホスホン酸の合成。
下記の合成手順を図17に示す。
【0072】
N,N-ビス(4-メトキシフェニル)アニリンの合成。新たに蒸留したアニリン(4.84g、52.0mmol)、p-ヨードアニソール(30.4g、130.0mmol)、粉末化無水炭酸カリウム(57.5g、416.0mmol)、電解銅粉(13.3g、208.0mmol)、および18-クラウン-6(2.75g、10.4mmol)を、乾燥した3つ口丸底フラスコに窒素中で添加した。この混合物を100mLのo-ジクロロベンゼン中で18時間還流した(その間、いくらか溶媒が蒸発した)。酢酸エチル(250mL)を反応フラスコに添加した。得られた混合物を濾過して銅および有機塩を除去し、溶媒を減圧下で除去した。生成物をメタノールで洗浄することによって精製した結果、黄褐色の固体が得られた(11.2g、70.1%)。1H NMR(300MHz, CDCl3)δ7.16(m, 2H)、7.01(d, J=9.0Hz, 4H)、6.78(d, J=9.0Hz, 4H)、6.83(t, J=1.5Hz, 2H)、6.81(t, J=1.5Hz, 1H)、3.55(s, 6H)。
【0073】
4-ブロモ-N,N-ビス(4-メトキシフェニル)アニリン2の合成。N,N-ビス(4-メトキシフェニル)アニリン1(9.0g、29.5mmol)を、250mLの丸底フラスコ内で、100mLのジメチルホルムアミドに溶解した。N-ブロモスクシンイミド(5.25g、29.5mmol)を30mLのジメチルホルムアミドに溶解し、反応混合物に1滴ずつ添加した。反応物を、そのまま室温で撹拌し、同時に薄層クロマトグラフィ(TLC)によりモニタした(反応時間=23時間)。反応混合物を、600mLの水を使用して急冷し、4×150mLのジクロロメタンで抽出した。有機層を合わせ、4×150mLの飽和チオ硫酸ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥した。溶媒を減圧下で除去した。生成物を、5:1のヘキサン:酢酸エチルで溶離するシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィを使用して、先に調製された材料と共に精製した(12.1g、100%)。1H NMR(300MHz, CDCl3)δ7.28(d, J=9.0Hz, 2H)、7.05(d, J=9.0Hz, 4H)、6.90(d, J=9.0Hz, 4H)、6.73(d, J=9.0Hz, 2H)、3.77(s, 6H)。
【0074】
3-(4-ブロモフェノキシ)プロパン-1-オールの合成。250mLの丸底フラスコに、4-ブロモフェノール(16.5g、95.3mmol)、3-ブロモプロパノール(15.9g、114.4mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド(50mL)、および炭酸カリウム(22.4g、162.0mmol)を添加した。反応物を、そのまま室温で撹拌し、同時にTLC(CH2Cl2)によりモニタした。4-ブロモフェノールが消失した後、混合物を、水50mLが入っている分液漏斗に注いだ。生成物をジエチルエーテルに抽出し、有機層を、1回につき25mlの冷水で3回洗浄した。溶媒を減圧下で除去した。生成物を、ジクロロメタンで溶離するシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィにより精製した。溶媒を減圧下で除去した。残留溶媒および残りの3-ブロモプロパノールを真空中で除去した(14.2g、64.4%)。1H NMR(300MHz, CDCl3)δ7.35(d, 9.0Hz)、6.77(d, J=9.0Hz, 2H)、4.06(t, J=6.0Hz, 2H)、3.84(t, J=6.0Hz, 2H)、2.10(q, J=6.0Hz, 2H)、1.65(s, 1H)。
【0075】
(3-(4-ブロモフェノキシ)プロポキシ)(tert-ブチル)ジメチルシランの合成。乾燥100mL丸底フラスコに、窒素中で、3-(4-ブロモフェノキシ)プロパン-1-オール(9.0g、39.0mmol)、tert-ブチルジメチルシリルクロリド(7.0g、47.0mmol)、イミジゾール(3.2g、47.0mmol)、およびN,N-ジメチルホルムアミド20mLを添加した。反応物を、そのまま室温で撹拌し、同時に薄層クロマトグラフィによりモニタした。出発材料が消失した後、反応混合物を、冷水50mLが入っている分液漏斗に注いだ。生成物を、3×25mLのエーテルを使用して抽出した。有機層を合わせ、3×25mLの冷水および3×25mLの飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄した。得られた有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥し、乾燥剤から濾過し、溶媒を減圧下で除去した。材料を、4:6のジクロロメタン:ヘキサンで溶離するシリカゲルのプラグを通した濾過によって精製した。溶媒を減圧下で除去した(12.1g、89.4%)。1H NMR(300MHz, CDCl3)δ7.34(d, J=9.0Hz, 2H)、6.76(d, J=9.0Hz, 2H)、4.00(t, J=6.0Hz, 2H)、3.76(t, J=6.0Hz, 2H)、1.95(q, J=6.0Hz, 2H)、0.87(s, 9H)、0.03(s, 6H)。
【0076】
4-(3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)プロポキシ)-N-(4-メトキシフェニル)アニリン5の合成。乾燥500mL丸底フラスコに、窒素中で、(3-(4-ブロモフェノキシ)プロポキシ)(tert-ブチル)ジメチルシラン(12.1g、35.0mmol)、4-アニシジン(5.17g、42.0mmol)、および20mLの無水トルエンを添加した。混合物を10分間脱気した後、ジベンジリデンアセトンジパラジウムPd2(dba)3(0.64g、0.70mmol)、1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(DPPF)(0.68g、1.2mmol)、および20mLの無水トルエンを添加した。混合してから10分後、ナトリウムtert-ブトキシド(4.7g、49.0mmol)を10mLの無水トルエンと共に添加した。反応混合物を90℃に加熱し、そのまま一晩撹拌し、同時に薄層クロマトグラフィによりモニタした。出発材料の消失後、反応混合物を、ジクロロメタンで溶離するシリカゲルのプラグに通して濾過した(反応時間=22時間)。生成物を、フラッシュクロマトグラフィにより精製した(シリカゲル、5:1ヘキサン:酢酸エチル)。溶媒を減圧下で除去した。残留溶媒を真空中で除去した(11.3g、83.0%)。1H NMR(300MHz, CDCl3)δ7.06(d, J=3.3Hz, 2H)、7.03(d, J=3.3Hz, 2H)、6.91(d, J=3.3Hz, 2H)、6.88(d, J=3.3Hz, 2H)、6.85(s, 1H)、4.10(t, 6.3Hz, 2H)、3.90(t, J=6.0Hz, 2H)、3.81(s, 3H)、2.01(q, J=6.3Hz, 2H)、0.97(s, 9H)、0.14(s, 6H)。
【0077】
N1-(4-(3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)プロポキシ)フェニル)-N1,N4,N4-tris(4-メトキシフェニル)ベンゼン-1,4-ジアミン6の合成。無水トルエン(30.0mL)を、乾燥200mLシュレンクフラスコ内で、10分間窒素スパージすることにより脱気した。トリ(tert-ブチル)ホスフィン(0.187g; 0.924mmol)およびPd2(dba)3(0.283g、0.309mmol)を添加し、この混合物をそのまま撹拌した。10分後、4-ブロモ-N,N-ビス(4-メトキシフェニル)アニリン(5.92g; 15.4mmol)、4-(3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)プロポキシ)-N-(4-メトキシフェニル)アニリン(6.00g; 15.4mmol)、およびナトリウムtert-ブトキシド(2.08g、21.6mmol)を添加した。反応物を、そのまま90℃で撹拌し、同時にTLC(5:1ヘキサン:酢酸エチル)によりモニタした。出発材料の消失後、混合物を、酢酸エチルで溶離するCeliteに通して濾過した。生成物をフラッシュクロマトグラフィ(シリカゲル、5:1ヘキサン:酢酸エチル)により精製した。溶媒を減圧下で除去した。残留溶媒を真空中で除去した(9.06g、90.6%)。1H NMR(300MHz, C3D6O)δ6.98(m, 8H)、6.86(m, 8H)、6.82(s, 4H)、4.06(t, J=6.3Hz, 2H)、3.83(t, J=6.3Hz, 2H)、3.76(s, 9H)、1.95(q, J=6.0Hz, 2H)、0.890(s, 9H)、0.058(s, 6H)。13C{1H}NMR(300MHz, C3D6O,δ):156.40、155.83、143.65、142.31、126.24、123.78、116.04、115.41、65.28、60.09、55.63、33.27、26.23、-5.27。HRMS-EI(m/z):[M]+ C42H50N2O5Siの計算値、690.35;実測値、690.6)。元素分析C42H50N2O5Si:Cの計算値、73.01;H、7.29;N、4.05。実測値:C、73.25;H、7.43;N、4.01。
【0078】
3-(4-((4-(ビス(4-メトキシフェニル)アミノ)フェニル)(4-メトキシフェニル)アミノ)フェノキシ)プロパン-1-オール7の合成。乾燥250mL丸底フラスコに、窒素中で、N1-(4-(3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)プロポキシ)フェニル)-N1,N4,N4-tris(4-メトキシフェニル)ベンゼン-1,4-ジアミン(9.06g、13.1mmol)、テトラヒドロフラン(12.4mL)、およびテトラブチルアンモニウムフルオリド(8.21g、31.4mmol)を添加した。反応物を、室温でそのまま撹拌し、同時に薄層クロマトグラフィによりモニタした。出発材料の消失後、反応混合物を、冷水150mLが入っている分液漏斗に注いだ。生成物を、3×75mLのエーテルを使用して抽出した。有機層を合わせ、MgSO4上で乾燥した。乾燥剤を濾過によって除去し、溶媒を減圧下で除去した。材料を、フラッシュクロマトグラフィ(シリカゲル、1:2ヘキサン:酢酸エチル)により精製し、再結晶(メタノール)することにより、白色固体が得られた(5.93g、78.6%)。1H NMR(400MHz, C3D6O)δ6.97(m, 8H)、6.85(m, 8H)、6.81(s, 4H)、4.07(t, J=6.3Hz, 2H)、3.78(s, 9H)、3.71(q, J=5.7Hz, 2H)、3.63(t, J=5.2Hz, 2H)、1.93(q, J=6.3Hz, 2H)。1H NMR(400MHz, D2O入りC3D6O)δ6.95(m, 8H)、6.84(m, 8H)、6.79(s, 4H)、4.03(t, J=6.3Hz, 2H)、3.74(s, 9H)、3.68(t, J=6.2Hz, 2H)、1.92(q, J=6.3Hz, 2H)。13C{1H}NMR(400MHz, C3D6O)δ156.29、155.77、143.59、143.53、142.22、142.13、126.17、123.68、123.64、115.98、115.37、65.74、58.80、55.62、33.11。HRMS-EI(m/z):[M]+ C36H36N2O5の計算値、576.26;実測値、576.4)。元素分析C36H36N2O5:Cの計算値、74.98;H、6.39;N、4.86。実測値:C、74.80;H、6.25;N、4.82。
【0079】
3-(4-((4-(ビス(4-メトキシフェニル)アミノ)フェニル)(4-メトキシフェニル)アミノ)フェノキシ)プロピルメタンスルホネートの合成。乾燥シュレンクフラスコに、3-(4-((4-(ビス(4-メトキシフェニル)アミノ)フェニル)(4-メトキシフェニル)アミノ)フェノキシ)プロパン-1-オール(1.16g、2.01mmol)および4-ジメチルアミノピリジン(0.012g、0.100mmol)を添加した。フラスコを真空下で排気し、窒素を充填した後、無水テトラヒドロフラン(2.0mL)を添加した。混合物を氷浴内に置き、そのまま10分間撹拌した。トリエチルアミン(0.712g、7.04mmol)を添加し、反応物をそのまま10分間撹拌した。メタンスルホニルクロライド(0.691g、6.03mmol)を添加し、混合物をそのまま5分間撹拌した。氷浴を除去し、混合物を室温で撹拌し、同時に薄層クロマトグラフィ(1:2ヘキサン:酢酸エチル)によりモニタした。出発材料の消失後、反応混合物を、冷水100mLが入っている分液漏斗に注いだ。生成物を、3×50mLのエーテルを使用して抽出した。有機層を合わせ、3×50mLの水、重炭酸ナトリウム溶液、および塩化ナトリウム溶液で洗浄した。得られたエーテル層を、MgSO4上で乾燥した。乾燥剤を濾過によって除去し、溶媒を減圧下で除去した。残留溶媒を真空中で除去した。材料を、フラッシュクロマトグラフィ(シリカゲル、4:2トルエン:酢酸エチル)により精製して、オフホワイトの固体が得られた(0.967g、73.3%)。1H NMR(400MHz, C3D6O)δ6.96(m, 8H)、6.85(m, 8H)、6.80(s, 4H)、4.43(t, J=6.3Hz, 2H)、4.09(t, J=6.0Hz, 2H)、3.74(s, 9H)、3.09(s, 3H)、2.19(q, J=6.2Hz, 2H)。13C{1H}NMR(400MHz, C3D6O)δ156.42、156.39、155.30、143.73、143.49、142.62、142.26、142.22、126.33、126.28、126.00、123.91、123.69、116.14、115.41、67.94、64.61、55.63、36.97、29.87。HRMS-EI(m/z):[M]+ C37H38N2O7Sの計算値、654.24;実測値、654.1)。元素分析C37H38N2O7S:Cの計算値、67.87;H、5.85;N、4.28。実測値:C、67.61;H、5.77;N、4.26。
【0080】
N1-(4-(3-ブロモプロポキシ)フェニル)-N1,N4,N4-tris(4-メトキシフェニル)ベンゼン-1,4-ジアミン9の合成。乾燥シュレンクフラスコに、3-(4-((4-(ビス(4-メトキシフェニル)アミノ)フェニル)(4-メトキシフェニル)アミノ)フェノキシ)プロピルメタンスルホネート(4.06g、6.20mmol)を添加した。フラスコを真空下で排気し、窒素を充填した。臭化リチウム(5.39g; 62.0mmol)およびテトラヒドロフラン(6.2mL)を窒素中で添加した。混合物をそのまま60℃で一晩撹拌した。出発材料の消失後、反応混合物を、冷水100mLが入っている分液漏斗に注いだ。生成物を、3×50mLのエーテルを使用して抽出した。有機層を合わせ、3×50mLの水で洗浄した。得られたエーテル層を、Na2SO4上で乾燥した。乾燥剤を濾過によって除去し、溶媒を減圧下で除去した。残留溶媒を真空中で除去した(3.12g、78.2%)。1H NMR(400MHz, C3D6O)δ6.97(m, 8H)、6.86(m, 8H)、6.80(s, 4H)、4.09(t, J=5.9Hz, 2H)、3.75(s, 9H)、3.66(t, J=6.6Hz, 2H)、2.28(q, J=6.2Hz, 2H)。13C{1H}NMR(400MHz, C3D6O)δ156.39、155.34、143.71、143.51、142.22、127.05、126.27、126.03、123.90、123.70、116.10、115.40、114.61、66.34、55.62、33.25、31.05。HRMS-EI(m/z):[M]+ C36H35BrN2O4の計算値、640.18;実測値、640.1)。元素分析C36H35BrN2O4:Cの計算値、67.60;H、5.52;N、4.38。実測値:C、67.43;H、5.61;N、4.24。
【0081】
ジエチル3-(4-((4-(ビス(4-メトキシフェニル)アミノ)フェニル)(4-メトキシフェニル)アミノ)フェノキシ)プロピルホスホネートの合成。乾燥シュレンクフラスコに、N1-(4-(3-ブロモプロポキシ)フェニル)-N1,N4,N4-tris(4-メトキシフェニル)ベンゼン-1,4-ジアミン(0.714g、1.12mmol)を添加し、フラスコを窒素でパージした。トリエチルホスファイト(1.12mL)を添加し、混合物をそのまま160℃で一晩撹拌した。出発材料の消失後、溶媒を真空蒸留下で除去した。生成物をフラッシュクロマトグラフィ(シリカゲル;酢酸エチル)により精製した結果、薄黄色の油が得られた(0.649g、83.4%)。1H NMR(400MHz, C3D6O)δ6.96(m, 8H)、6.84(m, 8H)、6.80(s, 4H)、4.05(m, 6H)、3.74(s, 9H)、1.93(m, 4H)、1.26(t, J=7.0Hz, 6H)。13C{1H}NMR(400MHz, C3D6O)δ156.36、155.50、143.64、143.55、142.41、142.25、126.22、126.11、123.80、123.71、116.10、115.38、68.35(d, J=16.6Hz)、61.70(d, J=6.2Hz)、23.52(d, J=4.6Hz)、22.61(d, J=142Hz)、16.73(d, J=5.8Hz)。HRMS-EI(m/z):[M]+ C40H45N2O7Pの計算値、696.30;実測値、696.2)。元素分析C40H45N2O7P:Cの計算値、68.95;H、6.51;N、4.02。実測値:C、68.80;H、6.46;N、4.02。
【0082】
3-(4-((4-(ビス(4-メトキシフェニル)アミノ)フェニル)(4-メトキシフェニル)アミノ)フェノキシ)プロピルホスホン酸11。乾燥25mL丸底フラスコに、窒素中で、ジエチル3-(4-((4-(ビス(4-メトキシフェニル)アミノ)フェニル)(4-メトキシフェニル)アミノ)フェノキシ)プロピルホスホネート(0.500g、0.718mmol)を添加し、このフラスコを窒素でパージした。ジクロロメタン(1.00mL)およびブロモトリメチルシラン(0.199g、2.30mmol)を窒素中で添加し、この混合物をそのまま室温で一晩撹拌した。出発材料の消失後、溶媒を、窒素パージを通して除去した。残留溶媒を真空中で除去した。無水メタノール(8.00mL)をフラスコに添加し、そのまま室温で一晩撹拌した。白色固体を、カニューレ濾過を通してメタノールから濾過した。固体を、3×5mLの無水メタノールを使用して洗浄し、真空乾燥した。生成物を、未処理の固体として窒素雰囲気中で収集した(0.185g、40.2%)。1H NMR(400MHz,(CD3)2SO)δ9.87(s, 2H)、6.89(m, 8H)、6.83(m, 8H)、6.71(s, 4H)、3.91(m, 2H)、3.69(s, 9H)、1.84(m, 2H)、1.51(m, 2H)。13C{1H}NMR(400MHz,(CD3)2S, δ):154.98、154.40、142.17、140.91、140.77、125.27、125.19、122.72、122.68、115.37、114.82、68.35(m)、55.24、23.62(m)。31P NMR(400MHz,(CD3)2S, δ):25.05。HRMS-EI(m/z):[M]+ C36H37N2O7Pの計算値、640.23;実測値、640.1)。元素分析C36H37N2O7P:Cの計算値、67.49;H、5.82;N、4.37。実測値:C、67.09;H、6.16;N、3.99。
【0083】
ITO表面での官能性ホスホン酸との反応。
官能基と反応させるための化合物の合成: (E)-メチル3-(4-(4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11-ヘプタデカフルオロウンデシルオキシ)フェニル)アクリレート
(E)-メチル3-(4-ヒドロキシフェニル)アクリレート(166mg、0.93mmol)を乾燥DMSO(10mL)に添加し、丸底フラスコ内で窒素中で撹拌した。破砕した水酸化ナトリウム(44mg、1.1mmol)を添加した。30分後、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8-ヘプタデカフルオロ-11-ヨードウンデカン(500mg、0.85mmol)を添加した。反応物をそのまま一晩撹拌した。水で洗浄し、ジクロロメタンで抽出することにより、油が得られた。この粗製生成物を、溶離剤として、ヘキサンと共に漸増量の酢酸エチルを使用して、シリカカラムで精製した。白色固体を単離した(418mg、収率77%)。1H NMR(400.14MHz, CDCl3)δ7.65(d, J=16.0Hz)、7.48(d, J=8.75Hz, 2H)、6.90(d, J=8.75Hz, 2H)、6.32(d, J=16.0Hz)、4.07(t, J=5.90Hz, 2H)、3.80(3H)、2.40〜2.20(m, 2H)、2.18〜2.05(m, 2H)。
【0084】
(E)-11-(シンナモイルオキシ)ウンデシルホスホン酸によるITOの修飾および表面への架橋。ITO(ガラス上)基板を、レンズクロスを用いてTriton-X100で洗浄した。次いで基板をTriton-X100溶液中で10分間超音波処理し、水で濯ぎ、水中で10分間超音波処理し、エタノールで洗浄し、次いでエタノール中で10分間超音波処理し、次いでエタノールで洗浄し、窒素中で乾燥した。基板を2個の小片に切断し、同じ基板から複数のサンプルを得ることができるようにした。全てのサンプルを空気プラズマに曝した(15分)。1つのサンプルを、(E)-11-(シンナモイルオキシ)ウンデシルホスホン酸のエタノール中1mM溶液中に数時間水平に浸漬し、この浸漬は、液体の体積が基板レベルよりも低くなるまで行った。その他のサンプルは、液体の体積が基板レベルよりも低くなるまでエタノール中に数時間水平に浸漬した。次いでこれらのサンプルをエタノールで濯ぎ、140℃の炉内に36時間置いた。次いでこれらのサンプルを、TEA/エタノールの5%v/v溶液中で30分間超音波処理した。次いでサンプルをエタノールで濯ぎ、次いで水で濯ぎ、窒素中で乾燥した。
【0085】
溶液Z- (E)-メチル3-(4-(4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11-ヘプタデカフルオロウンデシルオキシ)フェニル)アクリレート(7mg)のジクロロメタン(0.5mL)中溶液。
【0086】
サンプル1-修飾ITO基板、溶液Zの一部を滴下し、光反応器内に10分間置き(8バルブ-300nm、8バルブ-350nm)、次いでジクロロメタンで濯ぎ、ジクロロメタン中で1分間超音波処理し、次いでジクロロメタン中で再び濯いだ。
【0087】
サンプル2-修飾ITO基板、溶液Zの一部を滴下し、光反応器内に30分間置き(8バルブ-300nm、8バルブ-350nm)、次いでジクロロメタンで濯ぎ、ジクロロメタン中で1分間超音波処理し、次いでジクロロメタン中で再び濯いだ。
【0088】
表面の元素分析は、サンプル1およびサンプル2に関してフッ素が存在することを示した。
【0089】
3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチルホスホン酸によるITOの修飾
ITO(ガラス上)基板を、レンズクロスを用いてTriton-X100で洗浄した。次いで2枚の基板をTriton-X100溶液中で10分間超音波処理し、水で濯ぎ、水中で10分間超音波処理し、エタノールで洗浄し、次いでエタノール中で10分間超音波処理し、次いでエタノールで洗浄し、窒素中で乾燥した(Table 2(表2)のDSC法)。基板を、より小さい小片に切断して、同じ基板から複数のサンプルを得ることができるようにした。
【0090】
ITO-この基板は、エタノール中に数時間水平に浸漬し、この浸漬は、液体の体積が基板レベルよりも低くなるまで行った。次いでエタノールで濯ぎ、次いで水で濯ぎ、窒素中で乾燥した。
【0091】
PA/ITO 0-この基板は、液体の体積が基板レベルよりも低くなるまで、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチルホスホン酸のエタノール中1mM溶液中に数時間水平に浸漬した。次いでこの基板をエタノールで濯ぎ、次いで水で濯ぎ、窒素中で乾燥した。
【0092】
PA/ITO TEA 10-この基板は、液体の体積が基板レベルよりも低くなるまで、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチルホスホン酸のエタノール中1mM溶液中に数時間水平に浸漬した。次いでこの基板を、TEA/エタノールの5%v/v溶液中で10分間超音波処理した。次いでエタノールで濯ぎ、次いで水で濯ぎ、窒素中で乾燥した。
【0093】
PA/ITO TEA 30-この基板は、液体の体積が基板レベルよりも低くなるまで、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチルホスホン酸のエタノール中1mM溶液中に数時間水平に浸漬した。次いでこの基板を、TEA/エタノールの5%v/v溶液中で30分間超音波処理した。次いでエタノールで濯ぎ、次いで水で濯ぎ、窒素中で乾燥した。
【0094】
PA/ITO TEA 60-この基板は、液体の体積が基板レベルよりも低くなるまで、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチルホスホン酸のエタノール中1mM溶液中に数時間水平に浸漬した。次いでこの基板を、TEA/エタノールの5%v/v溶液中で60分間超音波処理した。次いでエタノールで濯ぎ、次いで水で濯ぎ、窒素中で乾燥した。
【0095】
PA/ITO THF 10-この基板は、液体の体積が基板レベルよりも低くなるまで、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチルホスホン酸のエタノール中1mM溶液中に数時間水平に浸漬した。次いでこの基板を、THF中で10分間超音波処理した。次いでエタノールで濯ぎ、次いで水で濯ぎ、窒素中で乾燥した。
【0096】
PA/ITO THF 30-この基板は、液体の体積が基板レベルよりも低くなるまで、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチルホスホン酸のエタノール中1mM溶液中に数時間水平に浸漬した。次いでこの基板を、THF中で30分間超音波処理した。次いでエタノールで濯ぎ、次いで水で濯ぎ、窒素中で乾燥した。
【0097】
PA/ITO THF 60-この基板は、液体の体積が基板レベルよりも低くなるまで、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチルホスホン酸のエタノール中1mM溶液中に数時間水平に浸漬した。次いでこの基板を、THF中で60分間超音波処理した。次いでエタノールで濯ぎ、次いで水で濯ぎ、窒素中で乾燥した。
【0098】
PA/ITO THF 10+10-この基板は、液体の体積が基板レベルよりも低くなるまで、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチルホスホン酸のエタノール中1mM溶液中に数時間水平に浸漬した。次いでこの基板を、THF中で10分間超音波処理した。このTHFは廃棄し、基板をさらに10分間、THF中で超音波処理した。次いでエタノールで濯ぎ、次いで水で濯ぎ、窒素中で乾燥した。
【0099】
ポリ(PEG)(ホスホン酸)コポリマーの合成
【化8】
【0100】
トリエチレングリコールモノメチルエーテル(1.33mL、8.35mmol)を乾燥THFに溶解し、そのまま窒素中で撹拌した。水素化ナトリウム(224mg、9.34mmol)を添加し、反応物をそのままさらに30分間撹拌した。次いでポリ(塩化ビニルベンジル)(1.50g、9.83mmol)を添加し、反応物をそのまま一晩撹拌した。溶媒を除去し、残留物を酢酸エチルに再溶解し、水で洗浄した。溶媒を真空下で除去することにより、PEG/Clポリスチレンがオレンジの粘着性ある油/固体として得られた(2.34g)。
【0101】
【化9】
【0102】
PEG/Clポリスチレン(500mg、1.78mmol)を、ジオキサン(15mL)中トリエチルホスファイト(0.30mL、1.78mmol)と合わせ、この混合物を100℃で一晩加熱し、その後135℃で8時間撹拌した。冷却後、反応混合物を激しく撹拌しながら冷ヘキサン(約200mL)中に滴下した。ヘキサンを注ぎ出し、底にある粘着性の固体を最小量の酢酸エチルに再溶解し、次いで冷ヘキサン(約200mL)中に再び再沈殿した。ヘキサンを注ぎ出すと、PEG/ホスホネートポリスチレンの粘着性の黄色の固体/油が底に残った(482mg)。
【0103】
【化10】
【0104】
PEG/ホスホネートポリスチレンを、乾燥ジクロロメタン(20mL)に溶解した。ブロモトリメチルシラン(1.0mL、過剰mmol)を、注射器を介して添加した。反応物を、グリースが塗られたガラス栓でキャップし、そのまま6時間撹拌した。揮発分を減圧下で除去することにより、黄色の油/固体が得られた。ここに1:1のメタノール:水(25mL)を添加し、反応物をそのまま8時間還流した。溶媒除去後、固体を高真空下に置くことによって、PEG/ホスホン酸ポリスチレンが軟質のオフホワイトの固体として得られた(260mg)。
【0105】
ホスホン酸カリウムの合成
水素オクタデシルホスホン酸カリウム(オクタデシルホスホン酸一塩基性カリウム塩)の合成。
KOHの100mM溶液3.0mLを、オクタデシルホスホン酸(100mg、0.3mmol)の水30mL中分散溶液中に、撹拌しながら滴定した。次いで混合物を、水が蒸発するまで(約3時間)撹拌しながら60℃に加熱した。次いで得られた白色固体を真空乾燥した。
【0106】
オクタデシルリン酸カリウム(オクタデシルリン酸二塩基性カリウム塩)の合成
KOHの100mM溶液6.0mLを、オクタデシルホスホン酸(100mg、0.3mmol)の水30mL中分散溶液中に、撹拌しながら滴定した。次いで混合物を、水が蒸発するまで(約3時間)撹拌しながら60℃に加熱した。次いで得られた白色固体を真空乾燥した。
【0107】
ホスホン酸の合成
下記の合成を、図18にまとめて示す。
【0108】
ジエチル11-(ベンジルオキシ)ウンデシルホスホネート
【化11】
【0109】
ジエチル11-ヒドロキシウンデシルホスホネート(4.0g、13.0mmol)および18-クラウン-6(スパチュラ先端量)を、不活性雰囲気下で無水テトラヒドロフランに添加した。水素化ナトリウム(312mg、13.0mmol)を添加し、溶液をそのまま10分間撹拌した。次いで臭化ベンジル(2.4mL、19.5mmol)を添加し、反応物を4時間、還流下で撹拌した。室温に冷却後、ジクロロメタンを添加し、この混合物を水およびブラインで洗浄した。有機層を収集し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、減圧下で濃縮することにより、液体が得られた。カラムクロマトグラフィ(固定相:シリカ、移動相:酢酸エチル)を使用して所望の生成物(Rf=0.70、酢酸エチル)を透明な油として単離した(2.173g、収率42%)。1H NMR(500.13MHz, CD2Cl2)δ7.36〜7.29(m, 4H)、7.29〜7.23(m)、4.47(2H)、4.10〜3.97(m, 4H)、3.45(t, J=6.62Hz, 2H)、1.72〜1.62(m, 2H)、1.62〜1.48(m, 4H)、1.40〜1.20(m, 20H)。13C{1H}NMR(100.62MHz, CD2Cl2)δ139.4、128.6(2C)、127.9(2C)、127.7、73.03、70.88、61.57(d, J=6.4Hz, 2C)、30.95(d, J=16.8Hz)、30.17、29.94、29.91、29.85、29.75、29.48、26.58、25.91(d, J=139.8Hz)、22.78(d, J=5.3Hz)、16.68(d, J=5.9Hz, 2C)。31P{1H}NMR(202.45MHz, CD2Cl2):δ32.83。分析計算値(実測値)%:C66.30(65.66)、H9.86(9.95)。MS(ESI, m/z):399(M+, 100%)。[M+H]+に関する精密質量の計算値(実測値)、m/z):399.2659(399.2671)。
【0110】
11-(ベンジルオキシ)ウンデシルホスホン酸
【化12】
【0111】
ジエチル11-(ベンジルオキシ)ウンデシルホスホネート(1.00g、2.51mmol)を乾燥ジクロロメタン(20mL)に溶解した。ブロモトリメチルシラン(1.1mL、8.28mmol)を注射器を介して添加した。反応物を、グリースが塗られたガラス栓でキャップし、そのまま一晩撹拌した。揮発分を減圧下で除去することにより、黄色の油が得られた。これを5:1のメタノール:水(20mL)に溶解し、さらに4時間撹拌した。有機物の濃縮後、粘性の黄色の油を高温のアセトニトリルに溶解し、白色の結晶質固体が得られた(806mg、収率94%)。1H NMR(400.14MHz, DMSO)δ7.40〜7.20(m, 5H)、4.43(2H)、3.39(t, J=6.49Hz, 2H)、1.60〜1.33(m, 6H)、1.33〜1.15(m, 14H)。13C{1H}NMR(100.62MHz, DMSO)δ138.7、128.2(2C)、127.4(2C)、127.3、71.79、69.59、30.09(d, J=15.9Hz)、29.21、29.04、29.01、28.89、28.87、28.73、27.53(d, J=136.6Hz)、25.72、22.72(d, J=4.6Hz)。31P{1H}NMR(161.97MHz, DMSO):δ27.71。分析計算値(実測値)%:C63.14(62.87)、H9.13(9.13)。MS(ESI, m/z):341(M-, 100%)。[M-H]-に関する精密質量の計算値(実測値)、m/z):341.188722(341.189600)。
【0112】
ジエチル10-(8-(ベンジルオキシ)オクチルオキシ)デシルホスホネート
【化13】
【0113】
1,8-オクタンジオール(5.0g、34.2mmol)および18-クラウン-6-(スパチュラ先端量)を、不活性雰囲気下で無水テトラヒドロフランに添加した。水素化ナトリウム(820mg、34.2mmol)を添加し、溶液を10分間撹拌した。次いで臭化ベンジル(4.1mL、34.2mmol)を添加し、反応物を、4時間還流状態で撹拌し、次いで室温で一晩撹拌した。白色の沈殿物が形成され、これを濾別した。濾液を減圧下で濃縮した。カラムクロマトグラフィ(固定相:シリカ、移動相: 1:1へキサン:酢酸エチル)を使用して、所望の生成物(Rf=0.40、1:1へキサン:酢酸エチル)を黄色の油として単離した(3.914g、収率48%)。1H NMRは、8-(ベンジルオキシ)オクタン-1-オールに一致している。
【0114】
8-(ベンジルオキシ)オクタン-1-オール(1.15g、4.86mmol)を、不活性雰囲気下、丸底フラスコ内で無水ジメチルホルムアミドに添加した。水素化ナトリウム(175mg、7.3mmol)を添加し、溶液をそのまま30分間撹拌した。次いで1,10-ジブロモデカン(11.7g、38.9mmol)を添加し、反応物を90℃で4時間撹拌し、次いで室温に冷却した。溶媒を減圧下で除去した。カラムクロマトグラフィ(固定相:シリカ、移動相:へキサンと共に漸増量の酢酸エチル)を使用して、所望の生成物(Rf=0.65、9:1へキサン:酢酸エチル)を粘性の油として単離した。得られた油は、不純物(タルク)があるもののいくらかの所望の生成物を含有しており(((8-(10-ブロモデシルオキシ)オクチルオキシ)メチル)ベンゼン、1H NMRにより証明される)、さらに精製することなく次の反応で使用した。
【0115】
((8-(10-ブロモデシルオキシ)オクチルオキシ)メチル)ベンゼン(900mg、2.0mmol)をトリエチルホスファイト(5mL、30mmol)と合わせ、反応混合物を135℃で2日間撹拌した。過剰なトリエチルホスファイトおよびその他の副生成物を、真空下(約0.1torr)で、かつ80℃で5時間加熱して除去することにより、粘性の油が得られた(760mg、収率74%)。1H NMR(400.14MHz, CD2Cl2)δ7.35〜7.29(m, 4H)、7.29〜7.21(m)、4.46(2H)、4.13〜3.92(m, 4H)、3.45(t, J=6.60Hz, 2H)、3.35(t, J=6.66Hz, 4H)、1.73〜1.62(m, 2H)、1.62〜1.41(m, 8H)、1.41〜1.18(m, 26H)。13C{1H}NMR(100.62MHz, CD2Cl2)δ139.4、128.6(2C)、127.9(2C)、127.7、73.02、71.13(2C)、70.87、61.61(d, J=6.4Hz, 2C)、30.94(d, J=16.8Hz)、30.17(2C)、30.14、29.91、29.84、29.81(2C)、29.72、29.45、26.57、26.53(2C)、25.87(d, J=140.3Hz)、22.76(d, J=5.2Hz)、16.65(d, J=5.9Hz, 2C)。31P{1H}NMR(161.97MHz, CD2Cl2):δ32.94。分析計算値(実測値)%:C67.94(67.08)、H10.42(10.50)。MS(ESI, m/z):513(M+, 100%)。[M+H]+に関する精密質量の計算値(実測値)、m/z):513.3703(513.3674)。
【0116】
10-(8-(ベンジルオキシ)オクチルオキシ)デシルホスホン酸(PA-2)の合成
【化14】
【0117】
ジエチル10-(8-(ベンジルオキシ)オクチルオキシ)デシルホスホネート(680mg、1.33mmol)を乾燥ジクロロメタン(15mL)に溶解した。ブロモトリメチルシラン(0.53mL、4.05mmol)を、注射器を介して添加した。反応物を、グリースが塗られたガラス栓でキャップし、一晩撹拌した。揮発分を減圧下で除去することにより、黄色の油が得られた。これを5:1のメタノール:水(10mL)に溶解し、さらに4時間撹拌した。有機物の濃縮後、粘性の黄色の油をアセトニトリル中で再結晶させることにより、白色の結晶質固体が得られた(590mg、収率98%)。1H NMR(400.14MHz, DMSO)δ7.40〜7.19(m, 5H)、4.42(2H)、3.39(t, J=6.48Hz, 2H)、3.29(t, J=6.46Hz, 4H)、1.58〜1.34(m, 10H)、1.34〜1.10(m, 20H)。13C{1H}NMR(100.62MHz, DMSO)δ 138.7、128.2(2C)、127.3(2C)、127.3、71.79、69.91(2C)、69.59、30.11(d, J=16.0Hz)、29.25、29.21、29.20、29.05、28.89(2C)、28.84(2C)、28.73、27.55(d, J=136.5Hz)、25.76、25.69、25.67、22.74(d, J=4.5Hz)。31P{1H}NMR(161.97MHz, DMSO):δ27.74。分析計算値(実測値)%:C65.76(65.79)、H9.93(10.00)。MS(ESI, m/z):455(M-, 100%)。[M-H]-に関する精密質量の計算値(実測値)、m/z):455.2932(455.2932)。
【0118】
ホスホン酸誘電体単層で修飾された電極の評価。
PA-1およびPA-2ホスホン酸を、金属酸化物電極表面上の潜在的な単層誘電体として評価した。
【0119】
アルミニウム金属電極(約30nmの厚さ)を、シャドウマスクを用いて高真空(10-6mbar)下で熱蒸着した。Al電極の表面を、脱イオン水でスプレーすることにより、引き続き高温(300℃)で酸化した。次いで酸素プラズマステップ(80Wで30秒)を、熱酸化の後に適用して、Al/AlOx電極を形成した。
【0120】
次いでAl/AlOx電極を、ホスホン酸PA-1またはPA-2のエタノール中1mM溶液に数時間(>10時間)浸漬した。あるいは、SAM溶液を、スピンコーティングすることによって3回付着させることができる。次いで基板をエタノール中で超音波処理した後、145℃で>12時間の熱アニールを行った。
【0121】
電極表面上のPA-1の存在は、Kruss DSA 100液滴形状解析システム使用する接触角測定(参照により本明細書に組み込まれる、Wobkenbergら、Applied Physics Letters 93、013303 2008参照)により確認した。PA-1の表面エネルギー成分は、Owens-Wendt-Kaelble法を使用して、γsD=47.7mN/mおよびγsP=0.1mN/mであることが測定された。Al/AlOx/PA-2の表面エネルギー特性は調査中である。使用した様々な液体の接触角画像(Al/AlOx/PA-1)および表面エネルギーの概要を、Table 5(表5)に示す。
【0122】
【表5】
【0123】
Table 5(表5)から実験的に得られたデータを使用して、PA-1官能化Al/AlOx表面のθ=0°湿潤エンベロープを計算し、同様の手法でODPA(オクタデシルホスホン酸、CH3(CH2)17PO(OH)2)を使用するためのθ=0°湿潤エンベロープと一緒にプロットし比較した(参照により本明細書に組み込まれるWobkenbergら、Applied Physics Letters 93、013303 2008参照)。図21は、PA-1およびPA-2で官能化されたAl/AlOx電極の湿潤エンベロープ(実線)を、様々な小分子半導体溶液の表面エネルギー座標(記号)と共に示す。後者の座標は、Wobkenberg P.H.ら、Appl. Phys. Lett. 93、013303 (2008)から得られた。
【0124】
図21から、PA-1ホスホン酸で修飾された表面は、さらに大きな湿潤エンベロープを示し、したがってODPAに比べて有機分子に関する湿潤性が非常に改善されたことが明らかである。図21の差込み図に示される全ての小分子半導体が、PA-1およびPA-2官能化Al/AlOx電極上にスピンコーティングされた場合に良好な品質の薄膜を形成することは、注目に値する。
【0125】
PA-1およびPA-2修飾電極の電流-電圧(I-V)特性についても調査した。Al/AlOx/SAM/Auキャパシタ(金属/絶縁体/金属の構造であることが効果的である)に関するI-V測定値の代表的な組を、図22に示す。両方のタイプのデバイス(特にPA-2をベースにしたデバイス)の電流対バイアスのかなり大きな拡がりは、特定の調製条件に起因し、官能化プロセスの最適化によっておそらく改善することができる。
【0126】
Al/AlOx/SAM/Au構造の幾何学的キャパシタンス(F/cm2)も測定し(図23参照)、SAMベースのOFETの電荷担体移動度の計算に使用した。全体的な観察結果は、Ciが予測通りに、PA-2をベースにしたデバイス(350〜500nF/cm2)よりもPA-1をベースにしたデバイスに関してより大きい(約600nF/cm2)ことである.
【0127】
11-(パーフルオロフェノキシ)ウンデシルホスホン酸の合成
【化15】
【0128】
マイクロ波管内では、窒素流中で、ヘキサフルオロベンゼン(1.97g、10.6mmol)、ジエチル11-ヒドロキシウンデシルホスホネート(4.23g、13.7mmol)、および固体水酸化ナトリウム(0.85g、21.3mmol)を合わせた。容器を密閉し、CEM Discoverマイクロ波で照射して、135℃に上昇させかつその温度を2分間保持した。得られた黄色の混合物を水に注ぎ、1M HClで酸性化し、エーテルで抽出した。有機層を、水酸化ナトリウム希釈水溶液、水、ブラインでそれぞれ3回洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥した。揮発分を減圧下で除去することにより、微かに黄色の粘性の油が得られ、これを、シリカゲルが充填されたカラムクロマトグラフィ(1:1 クロロホルム:酢酸エチル)により精製した結果、ジエチル11-ヒドロキシウンデシルホスホネートが得られた(1.71g、34%)。
1H NMR(399.9MHz, CDCl3)δ4.06(m, 6H)、1.73(m, 4H)、1.57(m, 2H)、1.37(m, 20H)。13C{1H}NMR(125.8MHz, CDCl3)δ141.7(d, J=248.6Hz)、138.9(d, J=101.3Hz)、136.6(d, J=111.1Hz,)、133.7(d, J=4.5Hz)、75.8、61.3(d, J=6.5Hz)、30.6(d, J=17.0Hz)、29.8、29.4、29.2、29.1、29.0、26.2、25.4、25.1、22.4(d, J=2.6Hz)。31P{1H}NMR(161.91MHz, CDCl3):δ33.30。19F NMR(376.3MHz, CDCl3):δ-155.86(m, 2F)、-162.44(m, 2F)、162.81(m, 1F)、トリフルオロ酢酸由来。EI-MS M+に関する精密質量の計算値(実測値): 474.1958(474.1951)。分析計算値(実測値)%: C 53.16(52.98)、H 6.80(6.97)、F 20.02(19.79)。[M+H]+に関する精密質量の計算値(実測値)、m/z: 474.1958(474.1951)。
【0129】
ジエチル11-ヒドロキシウンデシルホスホネート(1.01g、2.1mmol)の乾燥ジクロロメタン15mLおよびブロモトリメチルシラン1.1mL(8.3mmol)中溶液を作製した。この系を、グリースが塗られた栓で密閉し、そのまま一晩撹拌した。揮発分を減圧下で除去することにより、粘性の褐色の油が生成され、これを4:1のメタノール:水の溶液20mLに溶解し、そのまま6時間撹拌した。減圧下で溶媒を除去した後、オフホワイトの固体が形成され、これをアセトニトリルから再結晶させることによって、11-(パーフルオロフェノキシ)ウンデシルホスホン酸の白色の結晶が得られた(0.84g、94%)。1H NMR(399.9MHz, DMSO-d6)δ4.17(t, J=1.20Hz, 2H)、1.69(m, 2H)、1.50〜1.25(m, 18H)。13C{1H}NMR(100.5MHz, DMSO-d6)δ75.5、30.0(d, J=16.0Hz)、29.1、28.9、28.8、28.6、28.5、28.1、26.8、24.9、22.6(d, J=4.5Hz)フッ素の強いカップリングのため芳香族炭素は、認められない。31P{1H}NMR(161.91MHz, DMSO-d6):δ27.71。19F NMR(376.3MHz, DMSO-d6):δ155.47(m, 2F)、162.20(m, 2F)、162.82(m, 1F)、トリフルオロ酢酸由来。分析計算値(実測値)%:C48.81(48.95)、H5.78(5.68)、F 22.71(22.76)。
【0130】
11-(パーフルオロベンジルオキシ)ウンデシルホスホン酸の合成
【化16】
【0131】
不活性雰囲気下で、水酸化カリウム(0.57g、10.2mmol)、ペンタフルオロベンジルブロミド(1.4mL、9.95mmol)、ジエチル11-ヒドロキシウンデシルホスホネート(3.05g、9.89mmol)、およびヨウ化テトラブチルアンモニウム(0.01g、0.03mmol)を、無水THFと合わせた。混合物をそのまま65℃で約9時間撹拌し、シリカゲルの薄層を通して濾過し、THFで溶離した。揮発分を減圧下で除去し、反応混合物を、Kugelrohr蒸留(0.18Torr、250℃)を利用して蒸留することにより、不純なジエチル11-(パーフルオロベンジルオキシ)ウンデシルホスホネートが得られた。不純な材料を、引き続き、シリカゲルが充填されたカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:酢酸エチル勾配)により精製した結果、ジエチル11-(パーフルオロベンジルオキシ)ウンデシルホスホネート0.91g(19%)が得られた。
1H NMR(399.9MHz, CDCl3)δ4.56(t, J=1.8Hz, 2H)、4.08(m, 4H)、3.47(t, J=6.6Hz, 2H)、1.73〜1.24(m, 26H)。13C{1H}NMR(125.8MHz, CDCl3)δ 145.6(d, J=246.4Hz)、141.2(d, J=261.8Hz)、137.3(d, J=270.7Hz)、111.5、71.1、61.3(d, J=6.5Hz)、59.4、32.8、30.7、30.5、29.5、29.3、29.0、26.2、25.9、25.1、22.4(d, J=5.3Hz)、16.4(d, J=6.0Hz)。分析計算値(実測値)%:C54.09(54.30)、H7.02(7.07)、F 19.45, 19.16)。[M+H]+に関する精密質量の計算値(実測値)、m/z:488.2115(488.2115)。
【0132】
ジエチル11-(パーフルオロベンジルオキシ)ウンデシルホスホネート(0.63g、1.3mmol)の乾燥ジクロロメタン15mLおよびブロモトリメチルシラン0.7mL(5.3mmol)中溶液を作製した。この系を、グリースが塗られた栓で密閉し、そのまま一晩撹拌した。揮発分を減圧下で除去することにより、粘性の褐色の油が生成され、これを4:1メタノール:水の溶液25mLに溶解し、そのまま6時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去した後、オフホワイトの固体が形成され、これを最小量のアセトニトリルから再結晶させた結果、11-(パーフルオロベンジルオキシ)ウンデシルホスホン酸の白色の結晶が得られた(0.49g、92%)。1H NMR(399.9MHz, DMSO-d6)δ4.55(s, 2H)、3.42(t, J=6.4Hz, 2H)、1.49〜1.44(m, 6H)、1.34〜1.18(m, 14 H)。13C{1H} NMR(100.5MHz, DMSO-d6)δ104.5、69.9、58.8、30.1、29.9、28.9、28.8、28.8、28.7、28.1、26.8、25.4、22.648(d, J=4.8Hz)。31P{1H} NMR(161.91MHz, DMSO-d6):δ27.63。19F NMR(376.3MHz, DMSO-d6):δ-141.86(m, 2F)、-152.95(m, 1F)、-160.88(m, 2F)、トリフルオロ酢酸由来。分析計算値(実測値):C50.00(50.16)、H6.06(6.23)、F 21.97(21.79)。[M-H]-に関する精密質量の計算値(実測値)、m/z:432.1489(432.1487)。
【0133】
その他の実施形態は、下記の特許請求の範囲内にある。
【技術分野】
【0001】
本発明は、2009年4月6日に出願され、参照のためにここにその全体を援用することとする米国仮出願第61/166,877号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、契約番号DMR-020967の下に米国科学財団のSTCプログラムからの助成金をもって成された。米国政府は、本発明に所定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
有機電子デバイスは、典型的には、有機電子材料及び正孔注入もしくは収集のための陰極及び電子注入もしくは収集のための陽極を含む。有機電気材料のエネルギーレベルに近づくかまたは離れる電極の仕事関数の変更により、デバイス性能を改善することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】S. H. Lee, et al, J. Kor. Phys. Soc. 49(5), 2034-2039 (2006)
【非特許文献2】S. Koh, et al., Langmuir, 22, 6249-6255 (2006)
【非特許文献3】Bhattacharya, A. K.; Thyagarajan, G. Chem. Rev. 1981, 81, 415-430
【非特許文献4】Goossen, L. J., et al., Synlett 2005, (3), 445-448
【非特許文献5】Han, L. -B., et al., J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 5407-5408
【非特許文献6】Inorg. Chim. Acta. 2001, 322(1-2) 106-112
【非特許文献7】"Organic Electronics: Materials, Manufacturing and Applications" H. Klauk ed., Wiley- VCH, 2006
【非特許文献8】"Handbook of Organic Electronics and Photonics" H. S. Nalwa ed., American Scientific Publishers, 2006
【非特許文献9】"Organic Light Emitting Devices: Synthesis, Properties and Applications" K. Mullen ed., Wiley- VCH, 2006
【非特許文献10】"Organic Photo voltaics: Mechanisms, Materials, and Devices" S. -S. Sun and N. S. Sariciftci ed., CRC,2005
【非特許文献11】"Organic Field-Effect Transistors" Z. Bao and J. Locklin ed., CRC, 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電極の組成を変えることで、より高い反応性及びより低い安定性などの望ましからぬ効果がもたらされうる。例えば、空気プラズマ処理によって電極の表面を改質することにより、経時的に変化して未処理の電極の仕事関数に近づくといった不安定な仕事関数がもたらされる。電極は、薄膜(例えば単層)を形成しうる分子またはポリマーで処理して、電極の仕事関数を変更することができるが、これらの薄膜は、理想的な化学的抵抗性を提供しない可能性がある。フルオロアルキル化合物を使用することによる表面の化学的抵抗性の増大により、接着を低減し(湿潤性を低下させ)、デバイス性能の幾つかのパラメーターに有害な影響を及ぼしうることが当業者に知られている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの実施態様は、分子を電極上に蒸着することを含み、ここで、前記電極は表面を有し、前記分子は、前記表面に結合する結合基(例えば、アンカー基)を有し、これによって周囲条件下(実験室の空気中)で、少なくとも100時間安定である仕事関数を提供する。別の実施態様では、結合した分子を有する電極の仕事関数は、別の表面改質手段によって得られうる仕事関数と同等または類似であるが、結合した分子を有する電極の仕事関数は、別の表面改質手段によって得られる仕事関数よりも安定である。幾つかの実施態様では、電極は酸化物を含み、分子はホスホン酸(例えば、アルキルホスホン酸、ヘテロアルキルホスホン酸、アリールホスホン酸、またはヘテロアリールホスホン酸)である。様々な他の実施態様には、少なくとも一つの電極を含む有機電子デバイスが含まれ、前記電極は表面並びにこの表面に結合した結合基を有する分子を有し、ここで、このデバイスは長期に亘って安定である。
【0007】
別の実施態様は、a)電極(この電極は表面を有する)、b)結合基を介して前記電極の表面に結合した分子、及びc)前記電極と電気接触した有機電子材料を含むデバイスであり、ここで、前記分子は少なくとも一つのフッ素化アリール有機基を含む。前記フッ素化アリール基は優れた化学耐性及び長期安定性を提供する一方で電極の接着特性に悪影響を及ぼすことがない。
【0008】
別の実施態様は、a)表面を有する透明な導電性金属酸化物電極及びb)前記表面に結合したフッ素化アリールホスホン酸を含む有機電子デバイスである。幾つかの実施態様では、フッ素化アリールホスホン酸は前記表面上の単層を構成する。
【0009】
別の実施態様は、a)表面を有する電極に分子を蒸着させる工程(前記分子は結合及びフッ素化アリール基を含み、これによって前記結合基は前記表面に結合している)及びb)前記電極に近接して有機電子材料を蒸着して、前記電極と有機電子材料とを電気接触させる工程を含む方法である。前記分子は、結合基とフッ素化アリール基との間にリンカー基を更に含んで良い。
【0010】
幾つかの実施態様では、本発明は、以下の構造:
【化1】
[式中、
その存在毎に独立に、R1は、ハロゲン、アルキル基、ヘテロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基であり;R2は、3乃至30の-CH2-基を含み、n=0-5、m=0-5、q=1-3であり、R2は少なくとも一つのエステル結合を含む]
を有する分子を含む組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、有機電子デバイスの一部の断面図を示す。
【図2】図2は、幾つかのフッ素化アリールホスホン酸を示す。
【図3】図3は、空気プラズマで処理したITOと比較した表面結合したホスホン酸を有するITOの仕事関数の安定性を示す。
【図4】図4は、空気プラズマで処理したITOを有するデバイスと比較した、表面結合したホスホン酸を有するITOを有するデバイスについての(a)電流−電圧(I-V)と(b)輝度/外部量子効率(EQE)とのグラフを示す。
【図5】図5は、空気プラズマで処理したITOを有するデバイスと比較した、表面結合したホスホン酸を有するITOを有するデバイスの安定性を示す。
【図6】図6は、空気プラズマで処理したITOを有するデバイスと比較した、表面結合したホスホン酸を有するITOを用いて製造されたOLEDデバイスの、a)電流−電圧(I-V)と(b)輝度/外部量子効率(EQE)とのグラフを示す。
【図7】図7は、単層ダイオードの構造、並びに、空気プラズマで処理したITOを有するデバイスと比較した、表面結合したホスホン酸を有するITOを用いて製造されたダイオードについての電流−電圧(IV)グラフを示す。
【図8】図8は、幾つかのホスホン酸を示す。
【図9】図9は、金属酸化物の表面に結合した幾つかのホスホン酸の表面エネルギーを示す。
【図10】図10は、ITO-PEDOT:PSSを有するデバイスと比較した、表面結合したホスホン酸を有するITOを用いて製造されたOLEDデバイスについてのa)電流−電圧(I-V)と(b)輝度/外部量子効率(EQE)とのグラフを示す。
【図11】図11は、ITO-PEDOT:PSSを有するデバイスと比較した、表面結合したホスホン酸を有するITOを用いて製造されたOLEDデバイスについてのエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルを示す。
【図12】図12は、有機光起電性デバイスの構造、並びに、空気プラズマで処理したITOを有するOPVデバイスと比較した、表面結合したホスホン酸を有するITOを用いて製造されたOPVデバイスについての電流−電圧(IV)グラフを示す。
【図13】図13は、別の幾つかのホスホン酸及びそれらの合成方法を示す。
【図14】図14は、ホスホン酸を含むチオフェンを示す。
【図15】図15は、ホスホン酸を含む幾つかの官能基を示す。
【図16】図16は、ホスホン酸を含む官能基を含む表面上にポリマーのグラフト化方法を示す。
【図17】図17は、トリアリールアミン基を含むホスホン酸の合成を概説する。
【図18】図18は、ホスホン酸の合成を概説する。
【図19】図19は、ホスホン酸の合成を概説する。
【図20】図20は、ホスホン酸の合成を概説する。
【図21】図21は、ODPA及びPA-1で官能化させたAl/AlOx表面についての湿式エンベロープ(wetting envelop)(θ=0°)を示す。
【図22】図22は、PA-1及びPA-で改質した電極を有するAl/AlOx/SAM/Au構造から得られる、電流/電圧特性を示す。
【図23】図23は、小交流信号周波数の関数としてのAl/AlOx/SAM/Au(SAM=PA-1またはPA-2)の幾何学的静電容量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
様々な実施態様が、有機電子材料と金属酸化物電極との間の接触面を制御する(例えば、電気特性、表面エネルギー、湿潤性、接着性、機械特性、化学特性、またはこれらのあらゆる組合せの制御)。一実施態様は、電極上に分子を蒸着させる工程を含み、ここで、前記電極は表面を有し、前記分子は前記表面に結合する結合基を有し、これによって少なくとも100時間に亘って安定な仕事関数を提供する。一般的には、「安定」とは、周囲条件下での安定性または不活性の動作条件化での安定性を意味する。多くの実施態様では、安定な仕事関数は、分子を蒸着させる前の電極の仕事関数とは異なる。別の実施態様では、結合した分子を有する電極の仕事関数は、別の表面改質手段(例えば、空気プラズマ処理)によって得られうる仕事関数と同等または類似であるが、結合した分子を有する電極の仕事関数は、別の表面改質手段によって得られる仕事関数よりも安定である。別の実施態様では、結合した分子を有する電極の仕事関数は24時間以上に亘ってその測定された仕事関数が±0.03eVの範囲内に維持される一方で、別の表面処理によって得られる仕事関数は、別の表面処理前の電極の値にまで迅速に減衰する。典型的には、前記分子は電極の表面上に単層を含む。前記結合基は、例えば当業者に既知のあらゆるもの、例えば、シラン、カルボン酸、スルホン酸、ホウ酸、またはホスホン酸であってよい。この分子は、例えば、結合基(アンカー基とも呼称)、リンカー基、及び置換基を含んで良い。結合基(例えば-P(O)OH2)はリンカー基(例えば-CH2-)に結合し、置換基(例えば-C6F5)はリンカー基に結合している。結合基は、共有結合的にまたは非共有結合的に表面に結合していてよい。多くの実施態様では、電極は、酸化物(例えば、インジウム酸化スズ、インジウム酸化亜鉛、酸化亜鉛、ガリウムアルミニウム酸化亜鉛、アンチモン酸化スズ、フッ素酸化スズ、酸化カドミウム、またはスズ酸カドミウム等)を含む。一実施態様では、仕事関数は、4.5V-5.6eVである。別の実施態様では、前記電極は酸化物を含み、前記分子はホスホン酸(例えば、アルキルホスホン酸、ヘテロアルキルホスホン酸、アリールホスホン酸、またはヘテロアリールホスホン酸)である。酸化物表面へのホスホン酸の結合は、当業者には既知であり、例えば、S. H. Lee
, et al, J. Kor. Phys. Soc. 49(5), 2034-2039 (2006)及びS. Koh, et al., Langmuir, 22, 6249-6255 (2006)を参照のこと。様々な置換基を有する多様なアルキル、ヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールホスホン酸は、例えば、フッ素化アリールハロゲン化物の亜リン酸トリアルキルとのミカエリス・アルブゾフ反応及びこれに次ぐ加水分解(Bhattacharya, A. K.; Thyagarajan, G. Chem. Rev. 1981, 81, 415-430を参照のこと)、光開始アルブゾフ反応、臭化アリールの金属触媒によるリン酸化反応(Goossen, L. J., et al., Synlett 2005, (3), 445-448を参照のこと)、及びアルケン類のヒドロホスホリル化により(Han, L. -B., et al., J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 5407-5408を参照)を含む当業者には既知の方法によって調製してよい。ホスホン酸はフェロセンなどの有機金属基を更に含んでもよい(例えば、Inorg. Chim. Acta. 2001, 322(1-2) 106-112)。有機金属基は、電気活性であってよい。別の実施態様では、前記方法は、b)改質された電極に近接して有機電子材料を蒸着して、前記電極と前記有機電子材料とを電気接触させる工程を更に含む。前記方法の別の実施態様では、電極は陽極であり、この方法は、c)正孔輸送層を蒸着する工程、d)電子輸送層を蒸着する工程、及びe)陰極を蒸着する工程を更に含む。有機電子材料、方法、及びデバイスの例については、"Organic Electronics: Materials, Manufacturing and Applications" H. Klauk ed., Wiley- VCH, 2006; "Handbook of Organic Electronics and Photonics" H. S. Nalwa ed., American Scientific Publishers, 2006; "Organic Light Emitting Devices: Synthesis, Properties and Applications" K. Mullen ed., Wiley- VCH, 2006; "Organic Photo voltaics: Mechanisms, Materials, and Devices" S. -S. Sun and N. S. Sariciftci ed., CRC,2005; and "Organic Field-Effect Transistors" Z. Bao and J. Locklin ed., CRC, 2007を参照のこと。電極と有機電子材料に関して本明細書中に使用される場合、「電気接触」とは、電荷が電極と有機電子材料との間を流れうることを意味する。電極と有機電子材料とは物理的に接触していてもしていなくてもよい。電子は電極から有機電子材料へ流れてよく(例えば正孔注入)、あるいは電子は電極から有機電子材料へ流れてよい(例えば電子注入)。有機電子材料は、当業者に既知のいかなるもの、例えば、導電性ポリマー、半導体ポリマー、正孔輸送ポリマー、電子移動ポリマー、放出ポリマー、太陽光吸収ポリマー(例えば、有機太陽電池中の活性層)、または分子(例えば、TPD、カルバゾール、ペンタセン、発光有機金属等)を含んでもよい。有機電子材料は、例えば、二つ以上の正孔輸送体、電子輸送体、発光体、太陽光吸収体等のブレンドを、ポリマー、ポリマー主鎖の一部またはこれらのあらゆる組合せに共有結合した、ホスト中のゲストとして更に有してよい。
【0013】
様々な実施態様は、少なくとも一つの電極を含む有機電子デバイスを含み、前記電極は表面及び前記表面に結合した結合基を有する分子を有し、ここで、前記デバイスは、長期間に亘って安定である。一実施態様では、有機電子デバイスは、電極が表面に結合した分子を有しない場合よりも安定である。有機電子デバイスは、例えば、有機発光ダイオード、有機電界効果トランジスタ、有機太陽電池等を含んで良い。別の実施態様では、電極上に結合した分子を有する有機電子デバイスは、別の表面処理(例えば、空気プラズマ処理)を施された電極を含む装置の有効性と同等または類似の有効性を有するが、電極上に結合した分子を有するデバイスの半減期(t1/2)は少なくとも50%長い。典型的には、前記分子は、電極の表面上に単層を含む。一実施態様では、図1に示されるように、電極は陽極5であり、デバイスはb)電極を覆う正孔輸送層10を更に含む。別の実施態様では、デバイスはc)正孔輸送材料を覆う電子輸送層15及びd)電子輸送材料を覆う陰極20を更に含む。例えば発光層を含む別のデバイス層は、いかなる別のデバイス層間にあってもよい。別の実施態様では、分子、電極、結合基、及び有機電子材料は上述の通りであってよい。
【0014】
一実施態様では、デバイスはa)電極(前記電極は、表面を有する)、b)結合基を介して前記電極の表面に結合した分子、及びc)前記電極と電気接触した有機電子材料を含むデバイスであり、ここで、前記分子は少なくとも一つのフッ素化アリール基を含む。これらの分子は、リンカー基(例えば、-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CF2-、等)を結合基とフッ素化アリール基との間に更に含んで良い。幾つかの実施態様では、電極は透明な導電性金属酸化物を含む。透明な導電性金属酸化物の例には、インジウム酸化スズ、インジウム酸化亜鉛、酸化亜鉛、ガリウムアルミニウム酸化亜鉛、アンチモン酸化スズ、フッ素酸化スズ、酸化カドミウム、またはスズ酸カドミウム等が含まれる。別の実施態様では、結合基と反応するように官能化されたグラフェンまたはカーボンナノチューブを含む(然るにホスホン酸は官能化された基を介してカーボンナノチューブまたはグラフェンと結合する)。多くの実施態様では、分子は表面上に単層を含む。前記分子の結合基は、例えば、シラン、カルボン酸、スルホン酸、ホウ酸、またはホスホン酸を含んでよい。幾つかの実施態様では、フッ素化アリール基は、フェニル基、ナフタレン基、またはビフェニル基を含み、フッ素の数は1乃至10である。別の実施態様では、結合基は、ホスホン酸であり、導電性透明酸化物はインジウム酸化スズである。フッ素化アリール基を含む分子は、電極の仕事関数を変更し、且つ電極表面の優れた湿潤性を維持し(粘着を可能にし)つつ、比較的に安定な仕事関数を提供しうる。
【0015】
別の実施態様は、a)表面を有する透明な導電性金属酸化物電極及びb)前記表面に結合したフッ素化アリールホスホン酸を含む有機電子デバイスである。幾つかの実施態様では、フッ素化アリールホスホン酸は、前記表面上に単層を含む。多様なフッ素化アリールホスホン酸を、上述のもののような当業者には既知の方法によって調製して良い。別の実施態様では、例えば電極がインジウム酸化スズ(ITO)である場合には、フッ素化アリールホスホン酸結合ITOの表面上の水滴によって形成される接触角は60°乃至80°である。別の実施態様では、表面エネルギーは30mJ/m2乃至50mJ/m2である。別の実施態様では、表面エネルギーは35mJ/m2乃至45mJ/m2である。別の実施態様では、表面エネルギーの極性成分は0mJ/m2乃至約15mJ/m2である。いくつかの実施態様では、フッ素化アリール基は、1乃至11のフッ素を含む。別の実施態様では、フッ素化ホスホン酸は以下の構造:
【化2】
[式中、
その存在毎に独立に、R1は、ハロゲン、アルキル基、ヘテロアルキル基、またはフッ素化アルキル基であり;R2は、メチレン、フッ素化メチレン、アルケン、またはアルキンであり;n=0-5;m=0-3;及びq=0-3であり、少なくとも一つのフッ素が存在することを条件とする]
を有する。別の実施態様には、フッ素化アリール基を含むホスホン酸が含まれる。別の実施態様では、透明な導電性金属酸化物が陽極であり、有機電子デバイスは、c)フッ素化アリールホスホン酸を覆う正孔輸送層;d)正孔輸送層を覆う電子輸送層;及びe)電子移動層を覆う陰極を更に含む。正孔輸送層、電子輸送層、及び陰極に使用される材料は、当業者に知られる通り、ポリマー、小分子、複合物、金属、またはこれらのあらゆる組合せから選択してよい。幾つかの実施態様では、陽極の仕事関数は4.4eV乃至5.6eVである。別の実施態様では、フッ素化ホスホン酸は、図2に図示した構造の一つに該当する。
【0016】
別の実施態様は、a)電極に分子を蒸着させる工程(前記電極は表面を有し、前記分子は結合及びフッ素化アリール基を含み、これによって前記結合基は前記表面に結合している)及びb)前記電極に近接して有機電子材料を蒸着して、前記電極と有機電子材料とを電気接触させる工程を含む方法である。分子を蒸着する工程及び有機電子材料を蒸着する工程は、個別に、例えば、スピンコーティング、浸漬被覆、ドロップキャスティング、蒸発、架橋、真空蒸着、またはこれらのあらゆる組合せ等の技術を単一工程または別々の工程に含んで良い。多数の実施態様において、分子は表面上に単層を含む。別の実施態様では、電極は透明な導電性金属酸化物を含む。導電性透明導電性金属酸化物及び結合は上述の通りであってよい。別の実施態様では、例えば電極がインジウム酸化スズ(ITO)である場合には、ITOに結合したフッ素化アリールホスホン酸の接触角は60°乃至80°である。別の実施態様では、表面エネルギーは30mJ/m2乃至50mJ/m2である。別の実施態様では、表面エネルギーは35mJ/m2乃至45mJ/m2である。幾つかの実施態様では、フッ素化アリール基には、フェニル基、ナフタレン基、ビフェニル基が含まれ、フッ素の数は1乃至10である。幾つかの実施態様では、結合基はホスホン酸であり、導電性透明酸化物はインジウム酸化スズである。別の実施態様では、フッ素化アリール基は1乃至11のフッ素を含んで良い。別の実施態様では、分子は下記の構造:
【化3】
[式中、
その存在毎に独立に、R1は、ハロゲン、アルキル、ヘテロアルキル、またはフッ素化アルキル基であり;R2は、メチレン、フッ素化メチレン、アルケン、またはアルキンであり;n=0-5;m=0-3;及びq=0-3であり、少なくとも一つのフッ素が存在することを条件とする]
を有するフッ素化ホスホン酸である。別の実施態様では、電極の仕事関数は4.4eV乃至5.6eVである。別の実施態様では、透明な導電性金属酸化物が陽極であり、前記方法は、c)正孔輸送層を蒸着する工程;d)電子輸送層を蒸着する工程;及びe)陰極を蒸着する工程を更に含む。別の実施態様では、フッ素化ホスホン酸は、図2の構造のいずれか一つを有する。
【0017】
別の実施態様は、下記の構造:
【化4】
[式中、
R2は、3乃至30の-CH2-基を含み、n=0-5、m=0-5であり、R1は上述の通りである]
を有するホスホン酸である。幾つかの好ましい実施態様では、R2は、エーテルを介してフェニル環に結合している。R1はまた、別の化合物またはポリマーと反応しうるか、あるいは架橋しうる官能基であってよい。こうした好ましい実施態様では、qは、1乃至3の整数であってよい。
【0018】
好ましい実施態様では、R2は、少なくとも一つのエーテル結合を含む。関連する実施態様では、R2は、-(CH2)x-Oy-(CH2)x-Oy-(CH2)z-を含み、ここで、その存在毎に個別にx=1-12、y=0-1、及びz=0-4である。別の実施態様は、ホスホン酸を含むデバイス及び方法である。一実施態様は、ホスホン酸を含むトランジスタである。
【0019】
好ましい実施態様では、本発明は、以下の構造:
【化5】
[式中、
その存在毎に独立に、R1は、ハロゲン、アルキル基、ヘテロアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基であり;R2は、3乃至30の-CH2-基を含み、n=0-5、m=0-5、q=1-3であり、且つ、R2は、少なくとも一つのエーテル結合を含む]
を有する分子を含む組成物に関する。
【0020】
R2のエーテルリンカー基を含む好ましい組成物においては、この組成物は表面を有する電極であってよく、任意に分子のホスホン酸結合基は前記電極表面に結合していてよい。こうした実施態様では、ホスホン酸の水素原子の一つまたは両方が失われてもよく、ホスホン酸の酸素原子は、任意に前記表面と共有結合を形成してよい。
【0021】
R2のエーテルリンカー基を含む好ましい組成物においては、R2はエーテル基を介してフェニル環に結合していてよく、あるいはR2は以下の構造:
-(CH2)x-Oy-(CH2)x-Oy-(CH2)z-
[式中、
その存在毎に独立に、x=1-12、y=0-1、及びz=0-3である]
を有してよい。R2のエーテルリンカー基は、以下の構造式に例示されるように、任意に置換されたフェニル環にベンジル炭素原子を介して結合していてもよい。
【化6】
【0022】
こうした組成物においては、フッ素原子の数nは、0乃至5のいずれの整数、すなわち、0、1、2、3、4、または5であってもよい。多くの実施態様では、少なくとも一つのフッ素がフェニル環上に任意に存在する。多くの実施態様では、5つのフッ素原子がフェニル環上に存在する。
【0023】
エーテルが結合したホスホン酸化合物、あるいはこれらの組成物を、多数のデバイス、とりわけ電極を含んで良い電子デバイス、例えば、ソース、ドレイン、及びゲート電極を有する電界効果トランジスタに導入してよく、こうした多くの電極、特にゲート電極は金属酸化物表面を含む。こうした実施態様では、エーテルが結合したホスホン酸化合物のホスホン酸基は、金属酸化物の表面に非共有結合的にまたは共有結合的に結合してよく、電極の酸化金属表面上に任意に単層を形成しうる。エーテルが結合したホスホン酸化合物のホスホン酸基が、酸化金属表面に共有結合的に結合する場合、ホスホン酸基の一つまたは両方の水素原子が、結合操作中に除去されうることが理解されるべきである。
【0024】
実施例及び本明細書に添付される図面から明かな通り、エーテルが結合したホスホン酸化合物の電極表面への結合は、電極表面に誘電層を形成し、且つ/又は有機分子、例えば有機半導体により電極表面の「湿潤性」を非常に著しく改善して、改質された電極を含む電子デバイスの製造、耐久性、特性、及び/または性能を著しく改善するという予期せぬ優れた効果を有する。
【0025】
本発明はまた、エーテルが結合したホスホン酸化合物もしくはこれを含む組成物を電極の表面に蒸着することによって、電極の表面エネルギーを変更する方法を含み、こうした方法においては、エーテルが結合したホスホン酸化合物は電極に結合してよく、好ましくは電極表面にエーテルが結合したホスホン酸化合物の単層を形成する。
【0026】
別の実施態様は、電極の表面エネルギーを変更して、電極と有機電子材料との間の相互作用特性(例えば、接着)を改善する方法である。ほとんどの実施態様では、電極の表面エネルギーは、電極の表面に結合する分子を蒸着することによって(例えば、本明細書中に記載のように)変更される。前記分子は単層を形成しうる。幾つかの実施態様では、仕事関数は著しく変更されない。別の実施態様では、仕事関数が変更されて、有機電子材料へのもしくは有機電子材料からの電子の流れを増大または減少させる。一実施態様は、a)表面、第一仕事関数、及び第一表面エネルギーを有する電極を準備する工程;及びb)前記表面に分子を蒸着させ、これにより第二仕事関数及び第二表面エネルギーを有する改質電極を準備する工程を含む方法であり、ここで、前記分子は結合基を介して電極に結合し、第一表面エネルギーと第二表面エネルギーとは相違する。一実施態様では、第二表面エネルギーは第一表面エネルギーと相違し、改質電極への有機電子材料の接着は、電極への有機電子材料の接着よりも優れており、ここで電子は有機電子材料と電極との間を流れうる。別の実施態様では、第二仕事関数は第一仕事関数とは相違して、有機電子材料と電極との間の電子流が改善される。別の実施態様では、第二表面エネルギーは第一表面エネルギーとは相違して、変性電極への有機電子材料の接着は電極への有機電子材料の接着よりも優れており、ここで電子は有機電子材料と電極との間を流れてよく、ここで第二仕事関数は第一仕事関数とは相違して有機電子材料と電極との間の電子流が改善される。一実施態様では、電極は透明な導電性金属酸化物であり、第二表面エネルギーは約20mJ/m2乃至約50mJ/m2であり、仕事関数は約4.4eV乃至約5.6eVである。幾つかの実施態様では、表面エネルギーの極性成分は、0mJ/m2乃至約15mJ/m2である。別の実施態様では、分子は表面上に単層を形成する。別の実施態様では、透明な導電性金属酸化物はインジウム酸化スズ、インジウム酸化亜鉛、酸化亜鉛、ガリウムアルミニウム酸化亜鉛、アンチモン酸化スズ、フッ素酸化スズ、酸化カドミウム、またはスズ酸カドミウムを含み、分子はホスホン酸である。別の実施態様では、分子はアルキルホスホン酸、ヘテロアルキルホスホン酸、アリールホスホン酸、またはヘテロアリールホスホン酸である。別の実施態様では、第一仕事関数と第二仕事関数は相違し、第二表面エネルギーと第一表面エネルギーは本質的に同等である。
【0027】
別の実施態様には、ホスホン酸、例えば、図2、9、10、及び14及び表1に示されるものなどが含まれる。これらのホスホン酸は、金属酸化物の表面に結合し、且つ/または上述のように有機電子デバイスを構成する。
【0028】
別の実施態様は、ホスホン酸を含むチオフェンを含む。ホスホン酸を含むチオフェンは金属酸化物の表面に結合し、且つ/または上述のような有機電子デバイスを構成する。ホスホン酸を含むチオフェンの例は、図14に示される。一実施態様では、ホスホン酸を含むチオフェンは、ホスホン酸が結合した金属酸化物の表面への、正孔輸送ポリマーを含むチオフェンの適合性及び/または接着を改善する。
【0029】
別の実施態様は、官能基を含むホスホン酸を含む。官能基を含むホスホン酸は、金属酸化物の表面に結合し、且つ/又は上述のように有機電子デバイスを構成する。官能基は、例えば、分子、ポリマー、生体高分子、タンパク質、核酸等を含む広範な化合物に対して反応性であって良い。官能基は、例えば、求電子性、求核性であってよく、基を生じても、光反応性であっても、あるいはこれらのあらゆる組み合わせであってもよい。官能基は、例えば、カルボン酸、アクリレート、アミン、アルデヒド、ケトン、アルケン、アルキン、または当業者に既知であるこれらのいずれかであってよい。官能基はまた、例えば、エステル、カルバメート、フタルイミド等として保護されていてよい。官能基を含むホスホン酸の幾つかの例は、図15に示される。別の実施態様は、官能基と反応するための分子及び/又はポリマーを含む。ホスホン酸が金属酸化物の表面に結合している場合には、官能基は第二分子及び/又はポリマーと反応して、前記第二分子及び/又はポリマーを表面に結合(すなわち、共有結合)させてよい。一実施態様では、ベンゾフェノン官能基はポリマー中の-C-H結合と反応する。別の実施態様には、官能基の分子及び/又はポリマーとの反応の方法、この方法によって製造される物品、及びこの方法によって製造される有機電子デバイスが含まれる。別の実施態様では、官能基はモノマーとの反応に使用され、表面からポリマーを成長させる。官能基をポリマーと反応させる(例えば、ポリマーを表面上の官能基を介して表面に結合させる)図は、図16aに示され、官能基からの重合化の図は、図16bに示される。別の実施態様は、官能基を含むホスホン酸を分子及び/又はポリマーと反応させる工程を含む、分子及び/又はポリマーを金属酸化物の表面に結合させる方法を含み、ここで、ホスホン酸は金属酸化物の表面に結合して、官能基は分子及び/又はポリマーと反応する。別の実施態様は、ホスホン酸を含む官能基を分子及び/又はポリマーと反応させる工程を含む方法によって製造される有機電子デバイスまたはセンサー(例えば、バイオセンサー)を含み、ここで、ホスホン酸は金属酸化物の表面に結合し、官能基は分子及び/又はポリマーと反応する。別の実施態様は、ホスホン酸を含む官能基をポリマーのモノマーと反応させる工程を含む、金属酸化物の表面からポリマーを成長させる方法を含み、ここで、ホスホン酸は金属酸化物の表面に結合する。別の実施態様は、分子(この分子は官能基及びホスホン酸を有する)をポリマーのモノマーと反応させる工程を含む方法によって製造される有機電子デバイスまたはセンサー(例えば、バイオセンサー)を含み、ここで、ホスホン酸は金属酸化物の表面に結合する。重合過程には、例えば、開環メタセシス重合(ROMP)、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、縮重合を含んでよい。
【0030】
別の実施態様は、トリアリールアミンを含むホスホン酸及びトリアリールアミン-ホスホン酸を含む有機電子デバイスである。前記トリアリールアミンは、以下の構造:
【化7】
[式中、
Arは、その存在毎に独立にアリール基であり、R2は、メチレン、フッ素化メチレン、アルケン、またはアルキンであり、且つq=0-3である]
を含んでよい。各Ar基は、独立にアリール基、ヘテロアリール基、アルキル基、ヘテロアルキル基、またはハロゲンで置換されていてよい。Ar3基は、Ar3がベンゼン環である場合、N及びR2に対してオルト、メタ、パラ置換されていてよい。別の実施態様では、Ar1、Ar2、及び/又はAr3の一つ以上が、-NAr42で置換されており、ここで、Ar4は、その存在毎に独立にアリールまたはヘテロアリール基である。幾つかの実施態様では、Ar1は-NAr42で置換されており、Ar1は、ベンゼン環、ビフェニル、またはナフチルである。幾つかの実施態様では、隣接Ar基は結合して(例えば、単結合、エチレン結合、ヘテロアルキルブリッジ、多重結合、またはアリールもしくはヘテロアリール環中の原子で)、一つ以上の環を形成する(例えば、Ar1及びAr2が単結合で互いに結合してカルバゾールを形成する場合)。
【0031】
別の実施態様は、ホスホン酸を含むポリマー並びに金属酸化物の表面に結合したホスホン酸を含むポリマーを含む有機電子デバイスもしくはセンサーを含む。前記ポリマーは、例えば、ホモポリマーまたはコポリマーであってよい。コポリマーは、モノマーまたは様々な組成物、異性体であるモノマー、立体異性体であるモノマー、あるいはこれらのあらゆる組み合わせを含んでよい。前記コポリマーは、例えば、別の官能基(例えば、上述のもの)、相溶化基(例えば、PEG)、または防汚基(例えば、フッ素化基)、あるいはこれらのあらゆる組み合わせを含んでよい。別の実施態様は、ホスホン酸を含むポリマーを金属酸化物の表面に結合させる方法並びにこの方法によって製造された物品を含む。
【0032】
(実施例)
下記の実施例は例示的なものであり、特許請求の範囲を限定するものではない。
【0033】
電極表面を特徴付けるのに使用される方法:
X線光電子分光法(XPS)およびUV-光電子分光法(UPS):単色Al(Kα)源(300W)を有するXPSおよびUPS(He I励起源)は、原子的に清浄な金サンプルを使用して頻繁に較正されたフェルミエネルギー(EF)を用い、Kratos Axis-Ultra分光計を使用して、他の場所[Alloway,D.M.; Hofmann,M.; Smith,D.L.; Gruhn,N.E.; Graham,A.L.; Colorado,R.; Wysocki,V.H.; Lee,T.R.; Lee,P.A.; Armstrong,N.R. J. Phys. Chem. B 2003、107、11690〜11699]で記述されるように行った。全てのITOサンプルは、分光計と電子平衡状態にあり、即ち各サンプルごとのフェルミエネルギーは既知であった。全てのXPSスペクトルを、UPSデータ収集の前に収集した。全ての特徴付けを、他に指示されない限り通常の取出し角度(0°)で行った。
【0034】
接触角:これらの測定は、プローブ液(0.5μL)として水およびヘキサデカンを使用する、KRUSS液滴形状解析システムDSA 10Mk2で実施した。数滴(典型的には6回反復)を素早く表面に置き、針を引き戻し、液滴形状をカメラで即座に捉えた。画像を液滴形状解析ソフトウェアで解析して、所与の液滴それぞれに最も適した方法、通常は円の当てはめにより接触角を決定し、結果を平均した。接触角データは、調和平均法によって表面エネルギーの成分を計算するのに使用した。
【0035】
結合分子を有するITOの調製
ITOコーティングガラス基板(20Ω/□、Colorado Concept Coatings、L.L.C.)を、まず、Triton-X(Aldrich)のDI水中希釈溶液を使用して20分間、超音波浴内で清浄化した。次いでITO基板をDI水中で完全に濯ぎ、DI水中で20分間最終的な超音波処理をした。さらなる有機清浄化を、アセトンおよびエタノールを使用してそれぞれ20分間超音波浴内で行った。清浄化中の全てのステップの後、窒素ガンを使用してサンプルに吹き付けて、残留する溶媒をITO表面から吹き飛ばした。
【0036】
次いで洗浄したITO基板を、70℃の真空乾燥炉内で一晩、(1×10-2Torr)の圧力下で乾燥した。
【0037】
SiOx障壁層の形成
デバイス構造では、300nmのSiOxのパシベーション層を、基板のいくつかの部分にシャドウマスクを用いてITO上に電子ビームにより堆積し、それによって、様々なデバイスの陽極と陰極との間に電気ショートを生成することなくトップ陰極(top cathode)まで電気コンタクトを物理的に作製できる領域を画定した。SiOxの堆積は、4Å/秒の速度および1×10-6よりも低い圧力で行った。
【0038】
単層の形成:
有機ホスホン酸(1mM、CHCI3:C2H5OH::2:1中)を室温で一晩撹拌し、得られる溶液を0.2μm PTFEに通して濾過し、上記にて調製されたITO基板を室温でホスホン酸溶液中に浸漬し、この溶液を1時間まで蒸発させた。次いで基板を、120℃のホットプレート上で1時間アニールした。次いで温度を室温まで低下させた後、デバイスの任意の有機層を堆積しまたは仕事関数を測定した。全ての単層形成ステップおよび溶液処理は、H2Oレベルが1ppmよりも低くかつ空気レベルが20ppmよりも低い、窒素が充填されたグローブボックス(GB)内で行った。
【0039】
電極仕事関数の安定性およびデバイスの安定性
図3は、オクチルホスホン酸(OPA)の結合分子を有するITOと3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデシルフルオロオクチルホスホン酸(FOPA)の結合分子を有するITOとの両方が、空気プラズマで処理されたITOに比べてその仕事関数の安定性が非常に改善された例を示す。ITOの表面に結合されたFOPAで作製されたデバイスの寿命(図5)は、安定性の向上を示した。
【0040】
フッ素化アリールホスホン酸
インジウムスズ酸化物(ITO)の表面結合されたその他の分子の例を、Table 1(表1)に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
ジエチル3,4,5-トリフルオロベンジルホスホネートの合成
ヨウ化3,4,5-トリフルオロベンジル(5.075g、22.55mmol)をトリエチルホスファイト(11.6mL、67.7mmol)と合わせ、この混合物を加熱し、135℃で一晩焼結した。混合物を高真空下に置き、70℃に12時間加熱した。最終生成物は、透明な油であった(6.10g、収率96%)。1H NMR(400.14MHz, CDCl3)δ6.93(m, 2H)、4.07(五重線, J=7.10Hz, 4H)、3.06(d, J=21.7Hz, 2H)、1.28(t, J=7.05Hz, 6H)。13C{1H}NMR(100.62MHz, CDCl3)δ150.8(dddd, J=249.7, 9.8, 3.8, 3.8Hz, 2C)、138.74(dtd, J=250.6, 15.2, 3.9Hz)、128.2〜127.9(m)、113.9〜113.6(m, 2C)、62.30(d, J=6.74Hz, 2C)、32.93(d, J=139.8Hz)、16.20(d, J=6.01Hz, 2C)。31P{1H}NMR(202.45MHz, CDCl3):δ24.96。分析計算値(実測値)%:C46.82(46.72)、H5.00(4.96)。MS(FAB, m/z):269(M+, 100%)。[M+H]+に関する精密質量の計算値(実測値)、m/z): 269.05544(269.05616)。
【0043】
合成3,4,5-トリフルオロベンジルホスホン酸(F3BPA)
ジエチル3,4,5-トリフルオロベンジルホスホネート(2.80g、9.92mmol)を、乾燥ジクロロメタン(30mL)に溶解した。ブロモトリメチルシラン(4.1mL、31.7mmol)を、注射器を介して添加した。反応物を、グリースが塗られたガラス栓でキャップし、6時間撹拌したままにした。揮発分を減圧下で除去することにより、黄色の油が得られた。これを10:1のメタノール:水(20mL)中に溶解し、一晩撹拌したままにした。溶媒を除去した後、アセトニトリルでの再結晶によって大きな白色の針が得られた(2.00g、収率89%)。1H NMR(400.14MHz, DMSO)δ7.16(m, 2H)、2.99(d, J=21.4Hz, 2H)。13C{1H}NMR(100.62MHz, DMSO)δ149.9(dddd, J=246, 9.6, 3.6, 3.6Hz, 2C)、137.5(dtd, J=247, 15.4, 3.7)、132.1〜131.8(m)、114.4〜114.1(m, 2C)、34.42(d, J=132Hz)。31P{1H}NMR(161.97MHz, DMSO):δ20.54。分析計算値(実測値)%:C37.19(37.17)、H2.67(2.63)。MS(FAB, m/z):227(M+, 100%)。[M+H]+に関する精密質量の計算値(実測値)、m/z):227.00849(227.00670)。
【0044】
ジエチル3,4,5-トリフルオロフェニルホスホネートの合成
トリフルオロブロモベンゼン(1.70mL、14.2mmol)、ジエチルホスファイト(2.20mL、17.1mmol)、N,N-ジシクロヘキシルメチルアミン(4.60mL、21.3mmol)、およびエタノール(50mL)を、窒素パージがなされた丸底フラスコ内で全て合わせた。5分間撹拌した後、トリフェニルホスフィン(223mg、0.85mmol)および酢酸パラジウム(64mg、0.28mmol)を一体としてフラスコに添加した。溶液を76℃に加熱し、一晩撹拌したままにした。溶液は、半透明の褐色として始まったが、朝までにより透明になった。冷却すると、シリカプラグ(溶離剤としてヘキサンから始まり、必要に応じて酢酸エチルで極性を高めた。)は流動し、UV活性スポット(Rf=0.35、1:1へキサン:酢酸エチル中)が単離された。最終生成物は、透明な油であった(3.477g、収率91%)。1H NMR(400.14MHz, CDCl3)δ7.44(dt, J=14.4, 6.50Hz 2H)、4.19〜4.07(m, 4H)、1.34(t, J=7.07Hz, 6H)。13C{1H}NMR(100.62MHz, CDCl3)δ151.1(dddd, J=254.7, 25.4, 10.1, 2.9Hz, 2C)、142.5(dtd, J=258.6, 15.1, 3.3Hz)、125.0(dtd, J=194.5, 5.8, 5.2Hz)、116.3〜116(m, 2C)、62.72(d, J=5.63Hz, 2C)、16.16(d, J=6.34Hz, 2C)。31P{1H}NMR(161.97MHz, CDCl3):δ14.94。分析計算値(実測値)%:C44.79(44.51)、H4.51(4.65)。MS(FAB, m/z):283(M+, 100%)。[M+H]+に関する精密質量の計算値(実測値)、m/z):283.07109(283.07135)。
【0045】
3,4,5-トリフルオロフェニルホスホン酸(F3PPA)の合成
12M HCl(12mL、過剰)を、丸底フラスコに入れたジエチル3,4,5-トリフルオロフェニルホスホネート(320mg)に添加した。反応混合物を12時間還流した。褐色の油が、冷却後および溶媒除去後に得られた。1H NMRは、未反応の出発材料が存在することを示した。8M HCl 12mLを添加し、反応混合物を数日間再び還流した。混合物を冷まし、数週間放置した。オフホワイトの固体が、溶媒除去後に得られた(190mg、収率76%)。1H NMR(400.14MHz, DMSO)δ7.49〜7.42(m, 2H)。13C{1H}NMR(100.62MHz, DMSO)δ150.1(dddd, J=251.0, 23.7, 7.3, 2.6Hz, 2C)、140.5(dtd, J=253.1, 15.3, 2.6Hz)、131.8(dm, J=178.4Hz)、115.3〜114.9(m, 2C)。31P{1H}NMR(161.97MHz, DMSO):δ9.22。分析計算値(実測値)%:C33.98(33.94)、H1.90(1.80)。MS(FAB, m/z):213(M+, 100%)。[M+H]+に関する精密質量の計算値(実測値)、m/z):212.99284(212.99418)。
【0046】
ジエチル3,5-ジフルオロベンジルホスホネートの合成
3,5-ジフルオロベンジルブロミド(3.0mL、23.2mmol)を、トリエチルホスファイト(9.1mL、53.3mmol)と合わせ、この混合物を加熱し、135℃で一晩撹拌した。混合物を高真空下に置き、70℃に12時間加熱した。最終生成物は、透明な油であった(5.78g、収率94%)。1H NMR(400.14MHz, CDCl3)δ6.83(m, 2H)、6.71(dt, J=9.00, 2.28Hz)、4.06(m, 4H)、3.12(d, J=21.94Hz, 2H)、1.28(t, J=7.09Hz, 6H)。31P{1H}NMR(161.97MHz, CDCl3):δ25.22。
【0047】
3,5-ジフルオロベンジルホスホン酸の合成
ジエチル3,5-ジフルオロベンジルホスホネート(3.00g、11.4mmol)を、乾燥ジクロロメタン(25mL)に溶解した。ブロモトリメチルシラン(4.9mL、37mmol)を、注射器を介して添加した。反応物を、グリースが塗られたガラス栓でキャップし、6時間撹拌したままにした。揮発分を減圧下で除去することにより、黄色の油が得られた。これを8:1のメタノール:水(25mL)に溶解し、そのまま一晩撹拌した。溶媒除去後、アセトニトリルでの再結晶により、白色の結晶質固体が得られた(1.98g、収率91%)。1H NMR(400.14MHz, DMSO)δ7.05(dt, J=9.49, 2.09Hz)、6.95(d, J=8.54Hz, 2H)、3.02(d, J=21.57Hz, 2H)。31P{1H}NMR(161.97MHz, DMSO):δ20.63。分析計算値(実測値)%:C40.40(40.67)、H3.39(3.39)。
【0048】
ジエチル2,6-ジフルオロベンジルホスホネートの合成
2,6-ジフルオロベンジルブロミド(3.0g、14.5mmol)をトリエチルホスファイト(6.2mL、36.2mmol)と合わせ、この混合物を加熱し、135℃で一晩撹拌した。混合物を高真空下に置き、80℃に10時間加熱した。最終生成物は、微かに黄色がかった油であった(3.30g、収率86%)。1H NMR(400.14MHz, DMSO)δ7.36(m)、7.10(m, 2H)、3.96(m, 4H)、3.20(d, J=21.08Hz, 2H)、1.16(t, J=7.05Hz, 6H)。13C{1H}NMR(100.62MHz, CDCl3)δ161.0(ddd, J=249.0, 7.3, 6.2Hz, 2C)、128.4(dt, J=10.2, 3.82Hz)、111.0(ddd, J=18.9, 6.0, 3.5Hz, 2C)、108.5(dt, J=19.8, 10.5Hz)、62.1(d, J=6.5Hz, 2C)、20.6(dt, J=142.1, 2.3Hz)、16.0(d, J=6.2Hz, 2C)。31P{1H}NMR(161.97MHz, DMSO):δ24.68。分析計算値(実測値)%:C50.01(49.71)、H5.72(5.78)。MS(FAB, m/z):265(M+, 100%)。[M+H]+に関する精密質量の計算値(実測値)、m/z):265.08051(265.08278)。
【0049】
2,6-ジフルオロベンジルホスホン酸の合成
ジエチル2,6-ジフルオロベンジルホスホネート(2.00g、7.57mmol)を、乾燥ジクロロメタン(20mL)に溶解した。ブロモトリメチルシラン(3.3mL、25mmol)を、注射器を介して添加した。反応物を、グリースが塗られたガラス栓でキャップし、そのまま6時間撹拌した。揮発分を減圧下で除去することにより、黄色の油が得られた。これを10:1のメタノール:水(20mL)に溶解し、そのまま一晩撹拌した。溶媒除去後、アセトニトリルでの再結晶により、白色の結晶質固体が得られた(1.199g、収率76%)。1H NMR(400.14MHz, DMSO)δ7.29(m)、7.04(m, 2H)、2.96(d, J=20.99Hz, 2H)。31P{1H}NMR(161.97MHz, DMSO):δ19.51。分析計算値(実測値)%:C40.40(40.64)、H3.39(3.34)。
【0050】
ジエチル2,6-ジフルオロフェニルホスホネートの合成
2,6-ジフルオロヨードベンゼン(3.0g、12.5mmol)を、窒素でフラッシュした圧力容器内でトリエチルホスファイト(10.7mL、62.5mmol)と合わせた。この容器を密閉し、光反応器(16バルブ-350nm)内で20時間回転させた。反応混合物を、50℃で5時間、高真空(0.08Torr)下に置いた。カラムをヘキサンおよび酢酸エチルに流した(流れるにつれ極性が高まる)。UV活性であるトップスポット(top spot)を分離した。溶媒除去後、黄色がかった液体が残された(2.30g、収率74%)。1H NMR(400.14MHz, DMSO)δ7.72(m)、7.21(m, 2H)、4.10(m, 4H)、1.25(t, J=7.04Hz)。31P{1H}NMR(161.97MHz, DMSO):δ8.23。ホスホネートを上述のように加水分解して、対応するホスホン酸を得ることができる。
【0051】
4-フルオロフェニルホスホン酸の合成
ジエチル4-フルオロフェニルホスホネート(600mg、2.55mmol)を8M HCl(10mL、過剰)と合わせ、この混合物を一晩還流した。反応物を冷却し、濾過することにより、濃い染みを除去した。溶媒を、固体の形成が始まるまで真空下で除去した。次いで混合物を、冷蔵庫内に数時間置いた。固体を乾燥することにより、オフホワイトの粉末が得られた(P80g)。1H NMR(400.14MHz, DMSO)δ7.71(ddd, J=12.49, 8.52, 5.99Hz, 2H)、7.28(ddd, J=9.02, 9.02, 2.65Hz, 2H)。31P{1H}NMR(161.97MHz, DMSO):δ12.81。分析計算値(実測値)%:C40.93(40.33)、H3.43(3.49)。
濾液を真空乾燥することにより、ベージュの粉末が得られた(250mg)。分析計算値(実測値)%: C 40.93(39.47)、H 3.43(3.48)。
【0052】
パーフルオロフェニルホスホン酸の合成
ジエチルパーフルオロフェニルホスホネート(1060mg、3.48mmol)を8M HCl(10mL、過剰)と合わせ、この混合物を一晩還流した。反応物を冷却し濾過することにより、濃い染みが除去された。溶媒を、固体の形成が始まるまで真空下で除去した。次いで混合物を、冷蔵庫内に数時間置いた。固体を乾燥することにより、オフホワイトの粉末(130mg)が得られた。1H NMRは、DMSO以外のシグナルを示さなかった。31P{1H}NMR(161.97MHz, DMSO):δ-0.93。分析計算値(実測値)%:C29.05(29.89)、H0.81(1.02)。
【0053】
濾液を真空乾燥することにより、ベージュの粉末が得られた(740mg)。分析計算値(実測値)%: C 29.05(29.33)、H 0.81(0.95)。
【0054】
デバイス効率
OLEDデバイスは、表面結合ホスホン酸(PA)を有するITO電極を用いて製作した。次いでホスホン酸修飾ITOサンプルを、蒸発チャンバと並べて2重グローブボックスを接続するT-予備チャンバを通して、蒸発チャンバ内に投入するために移した。まず、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス(1-ナフチル)-1,1'ビフェニル-4,4"ジアミン(α-NPD)のホール輸送層(HTL)(40nm)を、熱蒸着により1Å/秒の速度で堆積した。放出層は、4,4'-ジ(カルバゾール-9-イル)-ビフェニル(CBP)中(6重量%)fac tris(2-フェニルピリジナト-N,C2')イリジウム[Ir(ppy)3]の同時蒸着により形成し、その結果、20nmの厚さの被膜が得られた。基板での蒸着速度は1Å/秒であった。バトクプロイン(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン,BCP)のホール遮断層(40nm)を、0.4Å/秒の速度で放出層上に引き続き堆積した。有機層の堆積中、圧力を1×10-7Torrよりも低く保った。最後に、電子注入層として働くフッ化リチウム(LiF、3nm)の薄層を、さらに陰極としてのAl(200nm)を、堆積した。LiFおよびAlは、1×10-6Torrよりも低い圧力で、それぞれ0.1Å/秒および2Å/秒の速度で堆積した。シャドウマスクをAl堆積使用して、1基板当たり5個のデバイスを作製し、各デバイスの活性面積は0.1cm2であった。このデバイスの最終構成は、ガラス/ITO/単層/α-NPD(40nm)/CBP:Ir(ppy)3(20nm)/BCP(40nm)/LiF(3nm)/Al(200nm)であった。
【0055】
電流-電圧-光(I-L-V)特性を、デバイスを空気に曝すことなくグローブボックス内で測定した。
【0056】
デバイスは、空気プラズマ処理がなされたITOを用いて製作されたデバイスと比べて非常に類似した効率を示し(図6、図6に示される構造に関してはTable 1(表1)参照)、しかし、仕事関数は、フッ素化アリールホスホン酸処理がなされたITOの場合は空気プラズマ処理がなされたITOの場合より安定であり、その製作はより容易であった。
【0057】
Table 2(表2):図8に示される化合物に関する仕事関数の値および価電子帯の最大値(VBM)。エントリー1=DSC ITO;エントリー2=DSC OP ITO-2;エントリー3=DSC OP-ITO-2;エントリー4=DSC OP-ITO-3。DSC ITOは、洗浄剤/溶媒で清浄化されたITOであり(下記参照)、DSC OP-ITOは、DSC ITOと15分のOPエッチングとを合わせたものである。その他全てのサンプルは、示されるPAで修飾されたOP-ITOである。サンプル欄の数字は図8の化合物を示す。ある場合には、OPは単層の被覆範囲を増大させ、表面エネルギーおよび仕事関数に対してはDSC単独の場合とは異なる状態で影響を及ぼす。
【0058】
【表2】
【0059】
図9は、様々なサンプル(上記)の表面エネルギーのグラフを示す。上方の青い部分は極性成分であり、下方のオレンジの部分は分散性成分である。図9は、ITOの表面に結合されたTable 2(表2)のホスホン酸のいくつかの表面エネルギーを示す。
【0060】
Table 3(表3):フッ素の数、F1ピークとIn3pピークとの面積比、調節比(分子上のフッ素の数を考慮に入れる)、および相対比(調節比の1つを1.00に設定し、その他を同様の手法で調節することによる)。サンプル欄の数値は、図8の化合物を示す。
【0061】
【表3】
【0062】
F1とIn3p(3/2)のピークの面積を計算し、これらを互いに比較することにより、各PAが互いに対してどれだけ良好な単層をもたらすかに関する概要がわかる(Table 5(表5))。しかし、いくつかの事項を考慮すべきである。まず、強度は、各修飾因子上のフッ素数を考慮に入れて全て調節すべきである。さらに、オルト置換されたフッ素を有するこれら修飾因子は、フッ素が指示する方向のために相対比の低下を示す可能性がある。これらの原子はX線から遮断されるので、その強度は予測よりも低い可能性がある。
【0063】
図10は、ITO-PEDOT:PSS(20nm)を用いたデバイスと比較した、表面結合ホスホン酸を有するITOで製作されたOLEDデバイスのIVおよび輝度/EQEのグラフを示す。1000cd/m2でのこのデバイスの効率は、空気プラズマ、PEDOT:PSS 4083(CLEVIOS PVP AI 4083、かつてのBaytron、Lot#HCD07P109)、PEDOT:PSS CH8000 (CLEVIOS PVP CH 8000、かつてのBaytron、Lot #BPSV0003)、F5BPAの場合、20%、18.9%、17%、および17.8%である。表面結合ホスホン酸を有するITOおよびITO-PEDOTで製作されたデバイスのエレクトロルミネセントスペクトルを、図11に示す。PEDOTデバイスに関するエレクトロルミネセントスペクトルは、空気プラズマおよびホスホン酸結合ITOデバイスと比較して修正した。この修正は、デバイスの色出力に影響を及ぼす。したがってITOホスホン酸電極は、空気プラズマの仕事関数安定性の課題およびPEDOTの色修正のない状態で、空気プラズマおよびPEDOTデバイスとほぼ同じ効率を有する。
【0064】
有機光電(OPV)デバイス(図12)を、ホスホン酸(PA)修飾ITO電極上に製作した。比較のため、空気プラズマ処理を基にしたOPVデバイスも製作した。ポリ_3-ヘキシルチオフェン(P3HT)および_6,6_-フェニルC71酪酸メチルエステル(PCBM-70)をベースにしたバルク-ヘテロ接合層(100nm)を、クロロベンゼン溶液(17mg/ml、比10:7::P3HT:PCBM)から、700RPMで1分間スピンコーティングした。アルミニウム電極を、1×10-6Torrよりも低い圧力および2Å/秒の速度での熱蒸着を使用することによって、P3HT:PCBM層上に堆積した。シャドウマスクをAl堆積用に使用して、1基板当たり5個のデバイスを作製し、各デバイスの活性面積は0.1cm2とした。次いでサンプルを、ホットプレート上で30分間、窒素環境下で150℃でアニールした。図12は、プラズマ処理したITOデバイスおよびホスホン酸処理したデバイスであってランプ強度が71.5mW/cm2であるデバイスの、暗-明IVグラフを示す。Table 4(表4)に列挙されたデバイスパラメータは、3個のデバイスそれぞれの平均である。
【0065】
【表4】
【0066】
官能化ホスホン酸の合成
2-(12-ブロモドデシル)イソインドリン-1,3-ジオンの合成
1,12-ジブロモドデカン(32.22g、98.2mmol)、カリウムフタルイミド(4.60g、24.5mmol)、およびジメチルホルムアミド(20mL)を合わせ、160℃で2.5時間還流した。冷却後、水を添加し、有機物をジクロロメタンに吸収させた(分液漏斗上に分離)。溶媒を減圧下で蒸発させ、粗製生成物をヘキサン中でカラム処理した。スポットは分離せず、画分を合わせ、溶媒を除去し、粗製材料を300mLアセトンに再溶解した。これを還流し、10gのカリウムフタルイミドを4時間にわたり添加した。混合物を一晩還流した。冷却後および溶媒除去後、1:1の酢酸エチル:ヘキサンを使用して、粗製生成物をカラム処理した。トップスポットは、所望の生成物であることが明らかにされ、白色固体として収集されたが(9.30g)、これは報告された文献: HeIv. Chimica Acta. 2001、84(3)、678〜689と一致していた。
【0067】
ジエチル12-(1,3-ジオキソイソインドリン-2-イル)ドデシルホスホネートの合成
2-(12-ブロモドデシル)イソインドリン-1,3-ジオン(9.30g、23.6mmol)を、丸底フラスコ内でトリエチルホスファイト(11.76g、70.7mmol)と合わせ、この混合物を加熱し、135℃で16時間撹拌した。次いで反応混合物を、90℃の高真空下に4時間置いた。次いで生成物が、酢酸エチルでのカラムクロマトグラフィ後に透明な油として得られた(8.96g、収率84%)。1H NMR(400.14MHz, CDCl3)δ7.80(dd, J=5.43, 3.04Hz, 2H)、7.67(dd, J=5.47, 3.05Hz, 2H)、4.08〜4.02(m, 4H)、3.63(t, J=7.33Hz, 2H)、1.73〜1.45(m, 6H)、1.32〜1.11(m, 22H)。13C{1H}NMR(100.62MHz, CDCl3)δ168.4(2C)、133.7(2C)、132.1(2C)、123.0(2C)、61.30(d, J=6.5Hz, 2C)、37.96、30.51、(d, J=17.0Hz)、29.41(2C)、29.35、29.25、29.07、28.98、28.49、26.75、25.55(d, J=140.1Hz)、22.29(d, J=5.0Hz)、16.39(d, J=6.1Hz, 2C)。31P{1H}NMR(161.97MHz, CDCl3):δ33.38。MS(ESI, m/z):452.235(M+, 100%)。[M+H]+に関する精密質量の計算値(実測値)、m/z): 452.256039(452.254800)。分析計算値(実測値)%: C 63.84(63.41)、H 8.48(8.53)。
【0068】
12-(1,3-ジオキソイソインドリン-2-イル)ドデシルホスホン酸の合成
ジエチル12-(1,3-ジオキソイソインドリン-2-イル)ドデシルホスホネート(2.00g、4.43mmol)を、乾燥ジクロロメタン(25mL)に溶解した。ブロモトリメチルシラン(1.8mL、14.2mmol)を、注射器を介して添加した。反応物を、グリースが塗られたガラス栓でキャップし、そのまま一晩撹拌した。揮発分を減圧下で除去することにより、黄色の油が得られた。これを10:1のメタノール:水(20mL)に溶解し、そのまま一晩撹拌した。溶媒除去後、アセトニトリルでの再結晶によって、白色の粉末状固体が得られた(1.709g、収率98%)。1H NMR(400.14MHz, DMSO)δ7.84(m, 4H)、3.54(t, J=7.1Hz, 2H)、1.58〜1.53(m, 2H)、1.50〜1.31(m, 4H)、1.30〜1.20(m, 16H)。13C{1H}NMR(100.62MHz, DMSO)δ167.9(2C)、134.4(2C)、131.6(2C)、123.0(2C)、37.36、30.08(d, J=15.8Hz)、28.99、28.95、28.87(2C)、28.70、28.53、27.85、27.54(d, J=136.5Hz)、26.22、22.73、(d, J=4.58Hz)。31P{1H}NMR(161.97MHz, DMSO):δ27.74。MS(FAB, m/z):396.2(M+, 100%)。[M+H]+に関する精密質量の計算値(実測値)、m/z):396.19399(396.19445)。分析計算値(実測値)%:C60.75(60.64)、H7.65(7.80)。
【0069】
11-ホスホノウンデカン酸の合成
11-メトキシ-11-オキソウンデシルホスホン酸(1.72g、6.136mmol)を、8M HCl(25mL、過剰)に溶解し、この混合物を一晩還流した。冷却後、白色の結晶質固体が沈殿した。これを濾過し、冷アセトニトリルで洗浄した。濾液を減少させ、形成された沈殿物も濾過によって収集した(1.156g、収率71%)。
【0070】
3-(4-ベンゾイルフェノキシ)プロピルホスホン酸の合成は、文献に従い合成した。
【0071】
トリアリールアミンを含むホスホン酸の合成。
下記の合成手順を図17に示す。
【0072】
N,N-ビス(4-メトキシフェニル)アニリンの合成。新たに蒸留したアニリン(4.84g、52.0mmol)、p-ヨードアニソール(30.4g、130.0mmol)、粉末化無水炭酸カリウム(57.5g、416.0mmol)、電解銅粉(13.3g、208.0mmol)、および18-クラウン-6(2.75g、10.4mmol)を、乾燥した3つ口丸底フラスコに窒素中で添加した。この混合物を100mLのo-ジクロロベンゼン中で18時間還流した(その間、いくらか溶媒が蒸発した)。酢酸エチル(250mL)を反応フラスコに添加した。得られた混合物を濾過して銅および有機塩を除去し、溶媒を減圧下で除去した。生成物をメタノールで洗浄することによって精製した結果、黄褐色の固体が得られた(11.2g、70.1%)。1H NMR(300MHz, CDCl3)δ7.16(m, 2H)、7.01(d, J=9.0Hz, 4H)、6.78(d, J=9.0Hz, 4H)、6.83(t, J=1.5Hz, 2H)、6.81(t, J=1.5Hz, 1H)、3.55(s, 6H)。
【0073】
4-ブロモ-N,N-ビス(4-メトキシフェニル)アニリン2の合成。N,N-ビス(4-メトキシフェニル)アニリン1(9.0g、29.5mmol)を、250mLの丸底フラスコ内で、100mLのジメチルホルムアミドに溶解した。N-ブロモスクシンイミド(5.25g、29.5mmol)を30mLのジメチルホルムアミドに溶解し、反応混合物に1滴ずつ添加した。反応物を、そのまま室温で撹拌し、同時に薄層クロマトグラフィ(TLC)によりモニタした(反応時間=23時間)。反応混合物を、600mLの水を使用して急冷し、4×150mLのジクロロメタンで抽出した。有機層を合わせ、4×150mLの飽和チオ硫酸ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥した。溶媒を減圧下で除去した。生成物を、5:1のヘキサン:酢酸エチルで溶離するシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィを使用して、先に調製された材料と共に精製した(12.1g、100%)。1H NMR(300MHz, CDCl3)δ7.28(d, J=9.0Hz, 2H)、7.05(d, J=9.0Hz, 4H)、6.90(d, J=9.0Hz, 4H)、6.73(d, J=9.0Hz, 2H)、3.77(s, 6H)。
【0074】
3-(4-ブロモフェノキシ)プロパン-1-オールの合成。250mLの丸底フラスコに、4-ブロモフェノール(16.5g、95.3mmol)、3-ブロモプロパノール(15.9g、114.4mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド(50mL)、および炭酸カリウム(22.4g、162.0mmol)を添加した。反応物を、そのまま室温で撹拌し、同時にTLC(CH2Cl2)によりモニタした。4-ブロモフェノールが消失した後、混合物を、水50mLが入っている分液漏斗に注いだ。生成物をジエチルエーテルに抽出し、有機層を、1回につき25mlの冷水で3回洗浄した。溶媒を減圧下で除去した。生成物を、ジクロロメタンで溶離するシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィにより精製した。溶媒を減圧下で除去した。残留溶媒および残りの3-ブロモプロパノールを真空中で除去した(14.2g、64.4%)。1H NMR(300MHz, CDCl3)δ7.35(d, 9.0Hz)、6.77(d, J=9.0Hz, 2H)、4.06(t, J=6.0Hz, 2H)、3.84(t, J=6.0Hz, 2H)、2.10(q, J=6.0Hz, 2H)、1.65(s, 1H)。
【0075】
(3-(4-ブロモフェノキシ)プロポキシ)(tert-ブチル)ジメチルシランの合成。乾燥100mL丸底フラスコに、窒素中で、3-(4-ブロモフェノキシ)プロパン-1-オール(9.0g、39.0mmol)、tert-ブチルジメチルシリルクロリド(7.0g、47.0mmol)、イミジゾール(3.2g、47.0mmol)、およびN,N-ジメチルホルムアミド20mLを添加した。反応物を、そのまま室温で撹拌し、同時に薄層クロマトグラフィによりモニタした。出発材料が消失した後、反応混合物を、冷水50mLが入っている分液漏斗に注いだ。生成物を、3×25mLのエーテルを使用して抽出した。有機層を合わせ、3×25mLの冷水および3×25mLの飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄した。得られた有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥し、乾燥剤から濾過し、溶媒を減圧下で除去した。材料を、4:6のジクロロメタン:ヘキサンで溶離するシリカゲルのプラグを通した濾過によって精製した。溶媒を減圧下で除去した(12.1g、89.4%)。1H NMR(300MHz, CDCl3)δ7.34(d, J=9.0Hz, 2H)、6.76(d, J=9.0Hz, 2H)、4.00(t, J=6.0Hz, 2H)、3.76(t, J=6.0Hz, 2H)、1.95(q, J=6.0Hz, 2H)、0.87(s, 9H)、0.03(s, 6H)。
【0076】
4-(3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)プロポキシ)-N-(4-メトキシフェニル)アニリン5の合成。乾燥500mL丸底フラスコに、窒素中で、(3-(4-ブロモフェノキシ)プロポキシ)(tert-ブチル)ジメチルシラン(12.1g、35.0mmol)、4-アニシジン(5.17g、42.0mmol)、および20mLの無水トルエンを添加した。混合物を10分間脱気した後、ジベンジリデンアセトンジパラジウムPd2(dba)3(0.64g、0.70mmol)、1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(DPPF)(0.68g、1.2mmol)、および20mLの無水トルエンを添加した。混合してから10分後、ナトリウムtert-ブトキシド(4.7g、49.0mmol)を10mLの無水トルエンと共に添加した。反応混合物を90℃に加熱し、そのまま一晩撹拌し、同時に薄層クロマトグラフィによりモニタした。出発材料の消失後、反応混合物を、ジクロロメタンで溶離するシリカゲルのプラグに通して濾過した(反応時間=22時間)。生成物を、フラッシュクロマトグラフィにより精製した(シリカゲル、5:1ヘキサン:酢酸エチル)。溶媒を減圧下で除去した。残留溶媒を真空中で除去した(11.3g、83.0%)。1H NMR(300MHz, CDCl3)δ7.06(d, J=3.3Hz, 2H)、7.03(d, J=3.3Hz, 2H)、6.91(d, J=3.3Hz, 2H)、6.88(d, J=3.3Hz, 2H)、6.85(s, 1H)、4.10(t, 6.3Hz, 2H)、3.90(t, J=6.0Hz, 2H)、3.81(s, 3H)、2.01(q, J=6.3Hz, 2H)、0.97(s, 9H)、0.14(s, 6H)。
【0077】
N1-(4-(3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)プロポキシ)フェニル)-N1,N4,N4-tris(4-メトキシフェニル)ベンゼン-1,4-ジアミン6の合成。無水トルエン(30.0mL)を、乾燥200mLシュレンクフラスコ内で、10分間窒素スパージすることにより脱気した。トリ(tert-ブチル)ホスフィン(0.187g; 0.924mmol)およびPd2(dba)3(0.283g、0.309mmol)を添加し、この混合物をそのまま撹拌した。10分後、4-ブロモ-N,N-ビス(4-メトキシフェニル)アニリン(5.92g; 15.4mmol)、4-(3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)プロポキシ)-N-(4-メトキシフェニル)アニリン(6.00g; 15.4mmol)、およびナトリウムtert-ブトキシド(2.08g、21.6mmol)を添加した。反応物を、そのまま90℃で撹拌し、同時にTLC(5:1ヘキサン:酢酸エチル)によりモニタした。出発材料の消失後、混合物を、酢酸エチルで溶離するCeliteに通して濾過した。生成物をフラッシュクロマトグラフィ(シリカゲル、5:1ヘキサン:酢酸エチル)により精製した。溶媒を減圧下で除去した。残留溶媒を真空中で除去した(9.06g、90.6%)。1H NMR(300MHz, C3D6O)δ6.98(m, 8H)、6.86(m, 8H)、6.82(s, 4H)、4.06(t, J=6.3Hz, 2H)、3.83(t, J=6.3Hz, 2H)、3.76(s, 9H)、1.95(q, J=6.0Hz, 2H)、0.890(s, 9H)、0.058(s, 6H)。13C{1H}NMR(300MHz, C3D6O,δ):156.40、155.83、143.65、142.31、126.24、123.78、116.04、115.41、65.28、60.09、55.63、33.27、26.23、-5.27。HRMS-EI(m/z):[M]+ C42H50N2O5Siの計算値、690.35;実測値、690.6)。元素分析C42H50N2O5Si:Cの計算値、73.01;H、7.29;N、4.05。実測値:C、73.25;H、7.43;N、4.01。
【0078】
3-(4-((4-(ビス(4-メトキシフェニル)アミノ)フェニル)(4-メトキシフェニル)アミノ)フェノキシ)プロパン-1-オール7の合成。乾燥250mL丸底フラスコに、窒素中で、N1-(4-(3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)プロポキシ)フェニル)-N1,N4,N4-tris(4-メトキシフェニル)ベンゼン-1,4-ジアミン(9.06g、13.1mmol)、テトラヒドロフラン(12.4mL)、およびテトラブチルアンモニウムフルオリド(8.21g、31.4mmol)を添加した。反応物を、室温でそのまま撹拌し、同時に薄層クロマトグラフィによりモニタした。出発材料の消失後、反応混合物を、冷水150mLが入っている分液漏斗に注いだ。生成物を、3×75mLのエーテルを使用して抽出した。有機層を合わせ、MgSO4上で乾燥した。乾燥剤を濾過によって除去し、溶媒を減圧下で除去した。材料を、フラッシュクロマトグラフィ(シリカゲル、1:2ヘキサン:酢酸エチル)により精製し、再結晶(メタノール)することにより、白色固体が得られた(5.93g、78.6%)。1H NMR(400MHz, C3D6O)δ6.97(m, 8H)、6.85(m, 8H)、6.81(s, 4H)、4.07(t, J=6.3Hz, 2H)、3.78(s, 9H)、3.71(q, J=5.7Hz, 2H)、3.63(t, J=5.2Hz, 2H)、1.93(q, J=6.3Hz, 2H)。1H NMR(400MHz, D2O入りC3D6O)δ6.95(m, 8H)、6.84(m, 8H)、6.79(s, 4H)、4.03(t, J=6.3Hz, 2H)、3.74(s, 9H)、3.68(t, J=6.2Hz, 2H)、1.92(q, J=6.3Hz, 2H)。13C{1H}NMR(400MHz, C3D6O)δ156.29、155.77、143.59、143.53、142.22、142.13、126.17、123.68、123.64、115.98、115.37、65.74、58.80、55.62、33.11。HRMS-EI(m/z):[M]+ C36H36N2O5の計算値、576.26;実測値、576.4)。元素分析C36H36N2O5:Cの計算値、74.98;H、6.39;N、4.86。実測値:C、74.80;H、6.25;N、4.82。
【0079】
3-(4-((4-(ビス(4-メトキシフェニル)アミノ)フェニル)(4-メトキシフェニル)アミノ)フェノキシ)プロピルメタンスルホネートの合成。乾燥シュレンクフラスコに、3-(4-((4-(ビス(4-メトキシフェニル)アミノ)フェニル)(4-メトキシフェニル)アミノ)フェノキシ)プロパン-1-オール(1.16g、2.01mmol)および4-ジメチルアミノピリジン(0.012g、0.100mmol)を添加した。フラスコを真空下で排気し、窒素を充填した後、無水テトラヒドロフラン(2.0mL)を添加した。混合物を氷浴内に置き、そのまま10分間撹拌した。トリエチルアミン(0.712g、7.04mmol)を添加し、反応物をそのまま10分間撹拌した。メタンスルホニルクロライド(0.691g、6.03mmol)を添加し、混合物をそのまま5分間撹拌した。氷浴を除去し、混合物を室温で撹拌し、同時に薄層クロマトグラフィ(1:2ヘキサン:酢酸エチル)によりモニタした。出発材料の消失後、反応混合物を、冷水100mLが入っている分液漏斗に注いだ。生成物を、3×50mLのエーテルを使用して抽出した。有機層を合わせ、3×50mLの水、重炭酸ナトリウム溶液、および塩化ナトリウム溶液で洗浄した。得られたエーテル層を、MgSO4上で乾燥した。乾燥剤を濾過によって除去し、溶媒を減圧下で除去した。残留溶媒を真空中で除去した。材料を、フラッシュクロマトグラフィ(シリカゲル、4:2トルエン:酢酸エチル)により精製して、オフホワイトの固体が得られた(0.967g、73.3%)。1H NMR(400MHz, C3D6O)δ6.96(m, 8H)、6.85(m, 8H)、6.80(s, 4H)、4.43(t, J=6.3Hz, 2H)、4.09(t, J=6.0Hz, 2H)、3.74(s, 9H)、3.09(s, 3H)、2.19(q, J=6.2Hz, 2H)。13C{1H}NMR(400MHz, C3D6O)δ156.42、156.39、155.30、143.73、143.49、142.62、142.26、142.22、126.33、126.28、126.00、123.91、123.69、116.14、115.41、67.94、64.61、55.63、36.97、29.87。HRMS-EI(m/z):[M]+ C37H38N2O7Sの計算値、654.24;実測値、654.1)。元素分析C37H38N2O7S:Cの計算値、67.87;H、5.85;N、4.28。実測値:C、67.61;H、5.77;N、4.26。
【0080】
N1-(4-(3-ブロモプロポキシ)フェニル)-N1,N4,N4-tris(4-メトキシフェニル)ベンゼン-1,4-ジアミン9の合成。乾燥シュレンクフラスコに、3-(4-((4-(ビス(4-メトキシフェニル)アミノ)フェニル)(4-メトキシフェニル)アミノ)フェノキシ)プロピルメタンスルホネート(4.06g、6.20mmol)を添加した。フラスコを真空下で排気し、窒素を充填した。臭化リチウム(5.39g; 62.0mmol)およびテトラヒドロフラン(6.2mL)を窒素中で添加した。混合物をそのまま60℃で一晩撹拌した。出発材料の消失後、反応混合物を、冷水100mLが入っている分液漏斗に注いだ。生成物を、3×50mLのエーテルを使用して抽出した。有機層を合わせ、3×50mLの水で洗浄した。得られたエーテル層を、Na2SO4上で乾燥した。乾燥剤を濾過によって除去し、溶媒を減圧下で除去した。残留溶媒を真空中で除去した(3.12g、78.2%)。1H NMR(400MHz, C3D6O)δ6.97(m, 8H)、6.86(m, 8H)、6.80(s, 4H)、4.09(t, J=5.9Hz, 2H)、3.75(s, 9H)、3.66(t, J=6.6Hz, 2H)、2.28(q, J=6.2Hz, 2H)。13C{1H}NMR(400MHz, C3D6O)δ156.39、155.34、143.71、143.51、142.22、127.05、126.27、126.03、123.90、123.70、116.10、115.40、114.61、66.34、55.62、33.25、31.05。HRMS-EI(m/z):[M]+ C36H35BrN2O4の計算値、640.18;実測値、640.1)。元素分析C36H35BrN2O4:Cの計算値、67.60;H、5.52;N、4.38。実測値:C、67.43;H、5.61;N、4.24。
【0081】
ジエチル3-(4-((4-(ビス(4-メトキシフェニル)アミノ)フェニル)(4-メトキシフェニル)アミノ)フェノキシ)プロピルホスホネートの合成。乾燥シュレンクフラスコに、N1-(4-(3-ブロモプロポキシ)フェニル)-N1,N4,N4-tris(4-メトキシフェニル)ベンゼン-1,4-ジアミン(0.714g、1.12mmol)を添加し、フラスコを窒素でパージした。トリエチルホスファイト(1.12mL)を添加し、混合物をそのまま160℃で一晩撹拌した。出発材料の消失後、溶媒を真空蒸留下で除去した。生成物をフラッシュクロマトグラフィ(シリカゲル;酢酸エチル)により精製した結果、薄黄色の油が得られた(0.649g、83.4%)。1H NMR(400MHz, C3D6O)δ6.96(m, 8H)、6.84(m, 8H)、6.80(s, 4H)、4.05(m, 6H)、3.74(s, 9H)、1.93(m, 4H)、1.26(t, J=7.0Hz, 6H)。13C{1H}NMR(400MHz, C3D6O)δ156.36、155.50、143.64、143.55、142.41、142.25、126.22、126.11、123.80、123.71、116.10、115.38、68.35(d, J=16.6Hz)、61.70(d, J=6.2Hz)、23.52(d, J=4.6Hz)、22.61(d, J=142Hz)、16.73(d, J=5.8Hz)。HRMS-EI(m/z):[M]+ C40H45N2O7Pの計算値、696.30;実測値、696.2)。元素分析C40H45N2O7P:Cの計算値、68.95;H、6.51;N、4.02。実測値:C、68.80;H、6.46;N、4.02。
【0082】
3-(4-((4-(ビス(4-メトキシフェニル)アミノ)フェニル)(4-メトキシフェニル)アミノ)フェノキシ)プロピルホスホン酸11。乾燥25mL丸底フラスコに、窒素中で、ジエチル3-(4-((4-(ビス(4-メトキシフェニル)アミノ)フェニル)(4-メトキシフェニル)アミノ)フェノキシ)プロピルホスホネート(0.500g、0.718mmol)を添加し、このフラスコを窒素でパージした。ジクロロメタン(1.00mL)およびブロモトリメチルシラン(0.199g、2.30mmol)を窒素中で添加し、この混合物をそのまま室温で一晩撹拌した。出発材料の消失後、溶媒を、窒素パージを通して除去した。残留溶媒を真空中で除去した。無水メタノール(8.00mL)をフラスコに添加し、そのまま室温で一晩撹拌した。白色固体を、カニューレ濾過を通してメタノールから濾過した。固体を、3×5mLの無水メタノールを使用して洗浄し、真空乾燥した。生成物を、未処理の固体として窒素雰囲気中で収集した(0.185g、40.2%)。1H NMR(400MHz,(CD3)2SO)δ9.87(s, 2H)、6.89(m, 8H)、6.83(m, 8H)、6.71(s, 4H)、3.91(m, 2H)、3.69(s, 9H)、1.84(m, 2H)、1.51(m, 2H)。13C{1H}NMR(400MHz,(CD3)2S, δ):154.98、154.40、142.17、140.91、140.77、125.27、125.19、122.72、122.68、115.37、114.82、68.35(m)、55.24、23.62(m)。31P NMR(400MHz,(CD3)2S, δ):25.05。HRMS-EI(m/z):[M]+ C36H37N2O7Pの計算値、640.23;実測値、640.1)。元素分析C36H37N2O7P:Cの計算値、67.49;H、5.82;N、4.37。実測値:C、67.09;H、6.16;N、3.99。
【0083】
ITO表面での官能性ホスホン酸との反応。
官能基と反応させるための化合物の合成: (E)-メチル3-(4-(4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11-ヘプタデカフルオロウンデシルオキシ)フェニル)アクリレート
(E)-メチル3-(4-ヒドロキシフェニル)アクリレート(166mg、0.93mmol)を乾燥DMSO(10mL)に添加し、丸底フラスコ内で窒素中で撹拌した。破砕した水酸化ナトリウム(44mg、1.1mmol)を添加した。30分後、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8-ヘプタデカフルオロ-11-ヨードウンデカン(500mg、0.85mmol)を添加した。反応物をそのまま一晩撹拌した。水で洗浄し、ジクロロメタンで抽出することにより、油が得られた。この粗製生成物を、溶離剤として、ヘキサンと共に漸増量の酢酸エチルを使用して、シリカカラムで精製した。白色固体を単離した(418mg、収率77%)。1H NMR(400.14MHz, CDCl3)δ7.65(d, J=16.0Hz)、7.48(d, J=8.75Hz, 2H)、6.90(d, J=8.75Hz, 2H)、6.32(d, J=16.0Hz)、4.07(t, J=5.90Hz, 2H)、3.80(3H)、2.40〜2.20(m, 2H)、2.18〜2.05(m, 2H)。
【0084】
(E)-11-(シンナモイルオキシ)ウンデシルホスホン酸によるITOの修飾および表面への架橋。ITO(ガラス上)基板を、レンズクロスを用いてTriton-X100で洗浄した。次いで基板をTriton-X100溶液中で10分間超音波処理し、水で濯ぎ、水中で10分間超音波処理し、エタノールで洗浄し、次いでエタノール中で10分間超音波処理し、次いでエタノールで洗浄し、窒素中で乾燥した。基板を2個の小片に切断し、同じ基板から複数のサンプルを得ることができるようにした。全てのサンプルを空気プラズマに曝した(15分)。1つのサンプルを、(E)-11-(シンナモイルオキシ)ウンデシルホスホン酸のエタノール中1mM溶液中に数時間水平に浸漬し、この浸漬は、液体の体積が基板レベルよりも低くなるまで行った。その他のサンプルは、液体の体積が基板レベルよりも低くなるまでエタノール中に数時間水平に浸漬した。次いでこれらのサンプルをエタノールで濯ぎ、140℃の炉内に36時間置いた。次いでこれらのサンプルを、TEA/エタノールの5%v/v溶液中で30分間超音波処理した。次いでサンプルをエタノールで濯ぎ、次いで水で濯ぎ、窒素中で乾燥した。
【0085】
溶液Z- (E)-メチル3-(4-(4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11-ヘプタデカフルオロウンデシルオキシ)フェニル)アクリレート(7mg)のジクロロメタン(0.5mL)中溶液。
【0086】
サンプル1-修飾ITO基板、溶液Zの一部を滴下し、光反応器内に10分間置き(8バルブ-300nm、8バルブ-350nm)、次いでジクロロメタンで濯ぎ、ジクロロメタン中で1分間超音波処理し、次いでジクロロメタン中で再び濯いだ。
【0087】
サンプル2-修飾ITO基板、溶液Zの一部を滴下し、光反応器内に30分間置き(8バルブ-300nm、8バルブ-350nm)、次いでジクロロメタンで濯ぎ、ジクロロメタン中で1分間超音波処理し、次いでジクロロメタン中で再び濯いだ。
【0088】
表面の元素分析は、サンプル1およびサンプル2に関してフッ素が存在することを示した。
【0089】
3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチルホスホン酸によるITOの修飾
ITO(ガラス上)基板を、レンズクロスを用いてTriton-X100で洗浄した。次いで2枚の基板をTriton-X100溶液中で10分間超音波処理し、水で濯ぎ、水中で10分間超音波処理し、エタノールで洗浄し、次いでエタノール中で10分間超音波処理し、次いでエタノールで洗浄し、窒素中で乾燥した(Table 2(表2)のDSC法)。基板を、より小さい小片に切断して、同じ基板から複数のサンプルを得ることができるようにした。
【0090】
ITO-この基板は、エタノール中に数時間水平に浸漬し、この浸漬は、液体の体積が基板レベルよりも低くなるまで行った。次いでエタノールで濯ぎ、次いで水で濯ぎ、窒素中で乾燥した。
【0091】
PA/ITO 0-この基板は、液体の体積が基板レベルよりも低くなるまで、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチルホスホン酸のエタノール中1mM溶液中に数時間水平に浸漬した。次いでこの基板をエタノールで濯ぎ、次いで水で濯ぎ、窒素中で乾燥した。
【0092】
PA/ITO TEA 10-この基板は、液体の体積が基板レベルよりも低くなるまで、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチルホスホン酸のエタノール中1mM溶液中に数時間水平に浸漬した。次いでこの基板を、TEA/エタノールの5%v/v溶液中で10分間超音波処理した。次いでエタノールで濯ぎ、次いで水で濯ぎ、窒素中で乾燥した。
【0093】
PA/ITO TEA 30-この基板は、液体の体積が基板レベルよりも低くなるまで、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチルホスホン酸のエタノール中1mM溶液中に数時間水平に浸漬した。次いでこの基板を、TEA/エタノールの5%v/v溶液中で30分間超音波処理した。次いでエタノールで濯ぎ、次いで水で濯ぎ、窒素中で乾燥した。
【0094】
PA/ITO TEA 60-この基板は、液体の体積が基板レベルよりも低くなるまで、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチルホスホン酸のエタノール中1mM溶液中に数時間水平に浸漬した。次いでこの基板を、TEA/エタノールの5%v/v溶液中で60分間超音波処理した。次いでエタノールで濯ぎ、次いで水で濯ぎ、窒素中で乾燥した。
【0095】
PA/ITO THF 10-この基板は、液体の体積が基板レベルよりも低くなるまで、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチルホスホン酸のエタノール中1mM溶液中に数時間水平に浸漬した。次いでこの基板を、THF中で10分間超音波処理した。次いでエタノールで濯ぎ、次いで水で濯ぎ、窒素中で乾燥した。
【0096】
PA/ITO THF 30-この基板は、液体の体積が基板レベルよりも低くなるまで、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチルホスホン酸のエタノール中1mM溶液中に数時間水平に浸漬した。次いでこの基板を、THF中で30分間超音波処理した。次いでエタノールで濯ぎ、次いで水で濯ぎ、窒素中で乾燥した。
【0097】
PA/ITO THF 60-この基板は、液体の体積が基板レベルよりも低くなるまで、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチルホスホン酸のエタノール中1mM溶液中に数時間水平に浸漬した。次いでこの基板を、THF中で60分間超音波処理した。次いでエタノールで濯ぎ、次いで水で濯ぎ、窒素中で乾燥した。
【0098】
PA/ITO THF 10+10-この基板は、液体の体積が基板レベルよりも低くなるまで、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチルホスホン酸のエタノール中1mM溶液中に数時間水平に浸漬した。次いでこの基板を、THF中で10分間超音波処理した。このTHFは廃棄し、基板をさらに10分間、THF中で超音波処理した。次いでエタノールで濯ぎ、次いで水で濯ぎ、窒素中で乾燥した。
【0099】
ポリ(PEG)(ホスホン酸)コポリマーの合成
【化8】
【0100】
トリエチレングリコールモノメチルエーテル(1.33mL、8.35mmol)を乾燥THFに溶解し、そのまま窒素中で撹拌した。水素化ナトリウム(224mg、9.34mmol)を添加し、反応物をそのままさらに30分間撹拌した。次いでポリ(塩化ビニルベンジル)(1.50g、9.83mmol)を添加し、反応物をそのまま一晩撹拌した。溶媒を除去し、残留物を酢酸エチルに再溶解し、水で洗浄した。溶媒を真空下で除去することにより、PEG/Clポリスチレンがオレンジの粘着性ある油/固体として得られた(2.34g)。
【0101】
【化9】
【0102】
PEG/Clポリスチレン(500mg、1.78mmol)を、ジオキサン(15mL)中トリエチルホスファイト(0.30mL、1.78mmol)と合わせ、この混合物を100℃で一晩加熱し、その後135℃で8時間撹拌した。冷却後、反応混合物を激しく撹拌しながら冷ヘキサン(約200mL)中に滴下した。ヘキサンを注ぎ出し、底にある粘着性の固体を最小量の酢酸エチルに再溶解し、次いで冷ヘキサン(約200mL)中に再び再沈殿した。ヘキサンを注ぎ出すと、PEG/ホスホネートポリスチレンの粘着性の黄色の固体/油が底に残った(482mg)。
【0103】
【化10】
【0104】
PEG/ホスホネートポリスチレンを、乾燥ジクロロメタン(20mL)に溶解した。ブロモトリメチルシラン(1.0mL、過剰mmol)を、注射器を介して添加した。反応物を、グリースが塗られたガラス栓でキャップし、そのまま6時間撹拌した。揮発分を減圧下で除去することにより、黄色の油/固体が得られた。ここに1:1のメタノール:水(25mL)を添加し、反応物をそのまま8時間還流した。溶媒除去後、固体を高真空下に置くことによって、PEG/ホスホン酸ポリスチレンが軟質のオフホワイトの固体として得られた(260mg)。
【0105】
ホスホン酸カリウムの合成
水素オクタデシルホスホン酸カリウム(オクタデシルホスホン酸一塩基性カリウム塩)の合成。
KOHの100mM溶液3.0mLを、オクタデシルホスホン酸(100mg、0.3mmol)の水30mL中分散溶液中に、撹拌しながら滴定した。次いで混合物を、水が蒸発するまで(約3時間)撹拌しながら60℃に加熱した。次いで得られた白色固体を真空乾燥した。
【0106】
オクタデシルリン酸カリウム(オクタデシルリン酸二塩基性カリウム塩)の合成
KOHの100mM溶液6.0mLを、オクタデシルホスホン酸(100mg、0.3mmol)の水30mL中分散溶液中に、撹拌しながら滴定した。次いで混合物を、水が蒸発するまで(約3時間)撹拌しながら60℃に加熱した。次いで得られた白色固体を真空乾燥した。
【0107】
ホスホン酸の合成
下記の合成を、図18にまとめて示す。
【0108】
ジエチル11-(ベンジルオキシ)ウンデシルホスホネート
【化11】
【0109】
ジエチル11-ヒドロキシウンデシルホスホネート(4.0g、13.0mmol)および18-クラウン-6(スパチュラ先端量)を、不活性雰囲気下で無水テトラヒドロフランに添加した。水素化ナトリウム(312mg、13.0mmol)を添加し、溶液をそのまま10分間撹拌した。次いで臭化ベンジル(2.4mL、19.5mmol)を添加し、反応物を4時間、還流下で撹拌した。室温に冷却後、ジクロロメタンを添加し、この混合物を水およびブラインで洗浄した。有機層を収集し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、減圧下で濃縮することにより、液体が得られた。カラムクロマトグラフィ(固定相:シリカ、移動相:酢酸エチル)を使用して所望の生成物(Rf=0.70、酢酸エチル)を透明な油として単離した(2.173g、収率42%)。1H NMR(500.13MHz, CD2Cl2)δ7.36〜7.29(m, 4H)、7.29〜7.23(m)、4.47(2H)、4.10〜3.97(m, 4H)、3.45(t, J=6.62Hz, 2H)、1.72〜1.62(m, 2H)、1.62〜1.48(m, 4H)、1.40〜1.20(m, 20H)。13C{1H}NMR(100.62MHz, CD2Cl2)δ139.4、128.6(2C)、127.9(2C)、127.7、73.03、70.88、61.57(d, J=6.4Hz, 2C)、30.95(d, J=16.8Hz)、30.17、29.94、29.91、29.85、29.75、29.48、26.58、25.91(d, J=139.8Hz)、22.78(d, J=5.3Hz)、16.68(d, J=5.9Hz, 2C)。31P{1H}NMR(202.45MHz, CD2Cl2):δ32.83。分析計算値(実測値)%:C66.30(65.66)、H9.86(9.95)。MS(ESI, m/z):399(M+, 100%)。[M+H]+に関する精密質量の計算値(実測値)、m/z):399.2659(399.2671)。
【0110】
11-(ベンジルオキシ)ウンデシルホスホン酸
【化12】
【0111】
ジエチル11-(ベンジルオキシ)ウンデシルホスホネート(1.00g、2.51mmol)を乾燥ジクロロメタン(20mL)に溶解した。ブロモトリメチルシラン(1.1mL、8.28mmol)を注射器を介して添加した。反応物を、グリースが塗られたガラス栓でキャップし、そのまま一晩撹拌した。揮発分を減圧下で除去することにより、黄色の油が得られた。これを5:1のメタノール:水(20mL)に溶解し、さらに4時間撹拌した。有機物の濃縮後、粘性の黄色の油を高温のアセトニトリルに溶解し、白色の結晶質固体が得られた(806mg、収率94%)。1H NMR(400.14MHz, DMSO)δ7.40〜7.20(m, 5H)、4.43(2H)、3.39(t, J=6.49Hz, 2H)、1.60〜1.33(m, 6H)、1.33〜1.15(m, 14H)。13C{1H}NMR(100.62MHz, DMSO)δ138.7、128.2(2C)、127.4(2C)、127.3、71.79、69.59、30.09(d, J=15.9Hz)、29.21、29.04、29.01、28.89、28.87、28.73、27.53(d, J=136.6Hz)、25.72、22.72(d, J=4.6Hz)。31P{1H}NMR(161.97MHz, DMSO):δ27.71。分析計算値(実測値)%:C63.14(62.87)、H9.13(9.13)。MS(ESI, m/z):341(M-, 100%)。[M-H]-に関する精密質量の計算値(実測値)、m/z):341.188722(341.189600)。
【0112】
ジエチル10-(8-(ベンジルオキシ)オクチルオキシ)デシルホスホネート
【化13】
【0113】
1,8-オクタンジオール(5.0g、34.2mmol)および18-クラウン-6-(スパチュラ先端量)を、不活性雰囲気下で無水テトラヒドロフランに添加した。水素化ナトリウム(820mg、34.2mmol)を添加し、溶液を10分間撹拌した。次いで臭化ベンジル(4.1mL、34.2mmol)を添加し、反応物を、4時間還流状態で撹拌し、次いで室温で一晩撹拌した。白色の沈殿物が形成され、これを濾別した。濾液を減圧下で濃縮した。カラムクロマトグラフィ(固定相:シリカ、移動相: 1:1へキサン:酢酸エチル)を使用して、所望の生成物(Rf=0.40、1:1へキサン:酢酸エチル)を黄色の油として単離した(3.914g、収率48%)。1H NMRは、8-(ベンジルオキシ)オクタン-1-オールに一致している。
【0114】
8-(ベンジルオキシ)オクタン-1-オール(1.15g、4.86mmol)を、不活性雰囲気下、丸底フラスコ内で無水ジメチルホルムアミドに添加した。水素化ナトリウム(175mg、7.3mmol)を添加し、溶液をそのまま30分間撹拌した。次いで1,10-ジブロモデカン(11.7g、38.9mmol)を添加し、反応物を90℃で4時間撹拌し、次いで室温に冷却した。溶媒を減圧下で除去した。カラムクロマトグラフィ(固定相:シリカ、移動相:へキサンと共に漸増量の酢酸エチル)を使用して、所望の生成物(Rf=0.65、9:1へキサン:酢酸エチル)を粘性の油として単離した。得られた油は、不純物(タルク)があるもののいくらかの所望の生成物を含有しており(((8-(10-ブロモデシルオキシ)オクチルオキシ)メチル)ベンゼン、1H NMRにより証明される)、さらに精製することなく次の反応で使用した。
【0115】
((8-(10-ブロモデシルオキシ)オクチルオキシ)メチル)ベンゼン(900mg、2.0mmol)をトリエチルホスファイト(5mL、30mmol)と合わせ、反応混合物を135℃で2日間撹拌した。過剰なトリエチルホスファイトおよびその他の副生成物を、真空下(約0.1torr)で、かつ80℃で5時間加熱して除去することにより、粘性の油が得られた(760mg、収率74%)。1H NMR(400.14MHz, CD2Cl2)δ7.35〜7.29(m, 4H)、7.29〜7.21(m)、4.46(2H)、4.13〜3.92(m, 4H)、3.45(t, J=6.60Hz, 2H)、3.35(t, J=6.66Hz, 4H)、1.73〜1.62(m, 2H)、1.62〜1.41(m, 8H)、1.41〜1.18(m, 26H)。13C{1H}NMR(100.62MHz, CD2Cl2)δ139.4、128.6(2C)、127.9(2C)、127.7、73.02、71.13(2C)、70.87、61.61(d, J=6.4Hz, 2C)、30.94(d, J=16.8Hz)、30.17(2C)、30.14、29.91、29.84、29.81(2C)、29.72、29.45、26.57、26.53(2C)、25.87(d, J=140.3Hz)、22.76(d, J=5.2Hz)、16.65(d, J=5.9Hz, 2C)。31P{1H}NMR(161.97MHz, CD2Cl2):δ32.94。分析計算値(実測値)%:C67.94(67.08)、H10.42(10.50)。MS(ESI, m/z):513(M+, 100%)。[M+H]+に関する精密質量の計算値(実測値)、m/z):513.3703(513.3674)。
【0116】
10-(8-(ベンジルオキシ)オクチルオキシ)デシルホスホン酸(PA-2)の合成
【化14】
【0117】
ジエチル10-(8-(ベンジルオキシ)オクチルオキシ)デシルホスホネート(680mg、1.33mmol)を乾燥ジクロロメタン(15mL)に溶解した。ブロモトリメチルシラン(0.53mL、4.05mmol)を、注射器を介して添加した。反応物を、グリースが塗られたガラス栓でキャップし、一晩撹拌した。揮発分を減圧下で除去することにより、黄色の油が得られた。これを5:1のメタノール:水(10mL)に溶解し、さらに4時間撹拌した。有機物の濃縮後、粘性の黄色の油をアセトニトリル中で再結晶させることにより、白色の結晶質固体が得られた(590mg、収率98%)。1H NMR(400.14MHz, DMSO)δ7.40〜7.19(m, 5H)、4.42(2H)、3.39(t, J=6.48Hz, 2H)、3.29(t, J=6.46Hz, 4H)、1.58〜1.34(m, 10H)、1.34〜1.10(m, 20H)。13C{1H}NMR(100.62MHz, DMSO)δ 138.7、128.2(2C)、127.3(2C)、127.3、71.79、69.91(2C)、69.59、30.11(d, J=16.0Hz)、29.25、29.21、29.20、29.05、28.89(2C)、28.84(2C)、28.73、27.55(d, J=136.5Hz)、25.76、25.69、25.67、22.74(d, J=4.5Hz)。31P{1H}NMR(161.97MHz, DMSO):δ27.74。分析計算値(実測値)%:C65.76(65.79)、H9.93(10.00)。MS(ESI, m/z):455(M-, 100%)。[M-H]-に関する精密質量の計算値(実測値)、m/z):455.2932(455.2932)。
【0118】
ホスホン酸誘電体単層で修飾された電極の評価。
PA-1およびPA-2ホスホン酸を、金属酸化物電極表面上の潜在的な単層誘電体として評価した。
【0119】
アルミニウム金属電極(約30nmの厚さ)を、シャドウマスクを用いて高真空(10-6mbar)下で熱蒸着した。Al電極の表面を、脱イオン水でスプレーすることにより、引き続き高温(300℃)で酸化した。次いで酸素プラズマステップ(80Wで30秒)を、熱酸化の後に適用して、Al/AlOx電極を形成した。
【0120】
次いでAl/AlOx電極を、ホスホン酸PA-1またはPA-2のエタノール中1mM溶液に数時間(>10時間)浸漬した。あるいは、SAM溶液を、スピンコーティングすることによって3回付着させることができる。次いで基板をエタノール中で超音波処理した後、145℃で>12時間の熱アニールを行った。
【0121】
電極表面上のPA-1の存在は、Kruss DSA 100液滴形状解析システム使用する接触角測定(参照により本明細書に組み込まれる、Wobkenbergら、Applied Physics Letters 93、013303 2008参照)により確認した。PA-1の表面エネルギー成分は、Owens-Wendt-Kaelble法を使用して、γsD=47.7mN/mおよびγsP=0.1mN/mであることが測定された。Al/AlOx/PA-2の表面エネルギー特性は調査中である。使用した様々な液体の接触角画像(Al/AlOx/PA-1)および表面エネルギーの概要を、Table 5(表5)に示す。
【0122】
【表5】
【0123】
Table 5(表5)から実験的に得られたデータを使用して、PA-1官能化Al/AlOx表面のθ=0°湿潤エンベロープを計算し、同様の手法でODPA(オクタデシルホスホン酸、CH3(CH2)17PO(OH)2)を使用するためのθ=0°湿潤エンベロープと一緒にプロットし比較した(参照により本明細書に組み込まれるWobkenbergら、Applied Physics Letters 93、013303 2008参照)。図21は、PA-1およびPA-2で官能化されたAl/AlOx電極の湿潤エンベロープ(実線)を、様々な小分子半導体溶液の表面エネルギー座標(記号)と共に示す。後者の座標は、Wobkenberg P.H.ら、Appl. Phys. Lett. 93、013303 (2008)から得られた。
【0124】
図21から、PA-1ホスホン酸で修飾された表面は、さらに大きな湿潤エンベロープを示し、したがってODPAに比べて有機分子に関する湿潤性が非常に改善されたことが明らかである。図21の差込み図に示される全ての小分子半導体が、PA-1およびPA-2官能化Al/AlOx電極上にスピンコーティングされた場合に良好な品質の薄膜を形成することは、注目に値する。
【0125】
PA-1およびPA-2修飾電極の電流-電圧(I-V)特性についても調査した。Al/AlOx/SAM/Auキャパシタ(金属/絶縁体/金属の構造であることが効果的である)に関するI-V測定値の代表的な組を、図22に示す。両方のタイプのデバイス(特にPA-2をベースにしたデバイス)の電流対バイアスのかなり大きな拡がりは、特定の調製条件に起因し、官能化プロセスの最適化によっておそらく改善することができる。
【0126】
Al/AlOx/SAM/Au構造の幾何学的キャパシタンス(F/cm2)も測定し(図23参照)、SAMベースのOFETの電荷担体移動度の計算に使用した。全体的な観察結果は、Ciが予測通りに、PA-2をベースにしたデバイス(350〜500nF/cm2)よりもPA-1をベースにしたデバイスに関してより大きい(約600nF/cm2)ことである.
【0127】
11-(パーフルオロフェノキシ)ウンデシルホスホン酸の合成
【化15】
【0128】
マイクロ波管内では、窒素流中で、ヘキサフルオロベンゼン(1.97g、10.6mmol)、ジエチル11-ヒドロキシウンデシルホスホネート(4.23g、13.7mmol)、および固体水酸化ナトリウム(0.85g、21.3mmol)を合わせた。容器を密閉し、CEM Discoverマイクロ波で照射して、135℃に上昇させかつその温度を2分間保持した。得られた黄色の混合物を水に注ぎ、1M HClで酸性化し、エーテルで抽出した。有機層を、水酸化ナトリウム希釈水溶液、水、ブラインでそれぞれ3回洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥した。揮発分を減圧下で除去することにより、微かに黄色の粘性の油が得られ、これを、シリカゲルが充填されたカラムクロマトグラフィ(1:1 クロロホルム:酢酸エチル)により精製した結果、ジエチル11-ヒドロキシウンデシルホスホネートが得られた(1.71g、34%)。
1H NMR(399.9MHz, CDCl3)δ4.06(m, 6H)、1.73(m, 4H)、1.57(m, 2H)、1.37(m, 20H)。13C{1H}NMR(125.8MHz, CDCl3)δ141.7(d, J=248.6Hz)、138.9(d, J=101.3Hz)、136.6(d, J=111.1Hz,)、133.7(d, J=4.5Hz)、75.8、61.3(d, J=6.5Hz)、30.6(d, J=17.0Hz)、29.8、29.4、29.2、29.1、29.0、26.2、25.4、25.1、22.4(d, J=2.6Hz)。31P{1H}NMR(161.91MHz, CDCl3):δ33.30。19F NMR(376.3MHz, CDCl3):δ-155.86(m, 2F)、-162.44(m, 2F)、162.81(m, 1F)、トリフルオロ酢酸由来。EI-MS M+に関する精密質量の計算値(実測値): 474.1958(474.1951)。分析計算値(実測値)%: C 53.16(52.98)、H 6.80(6.97)、F 20.02(19.79)。[M+H]+に関する精密質量の計算値(実測値)、m/z: 474.1958(474.1951)。
【0129】
ジエチル11-ヒドロキシウンデシルホスホネート(1.01g、2.1mmol)の乾燥ジクロロメタン15mLおよびブロモトリメチルシラン1.1mL(8.3mmol)中溶液を作製した。この系を、グリースが塗られた栓で密閉し、そのまま一晩撹拌した。揮発分を減圧下で除去することにより、粘性の褐色の油が生成され、これを4:1のメタノール:水の溶液20mLに溶解し、そのまま6時間撹拌した。減圧下で溶媒を除去した後、オフホワイトの固体が形成され、これをアセトニトリルから再結晶させることによって、11-(パーフルオロフェノキシ)ウンデシルホスホン酸の白色の結晶が得られた(0.84g、94%)。1H NMR(399.9MHz, DMSO-d6)δ4.17(t, J=1.20Hz, 2H)、1.69(m, 2H)、1.50〜1.25(m, 18H)。13C{1H}NMR(100.5MHz, DMSO-d6)δ75.5、30.0(d, J=16.0Hz)、29.1、28.9、28.8、28.6、28.5、28.1、26.8、24.9、22.6(d, J=4.5Hz)フッ素の強いカップリングのため芳香族炭素は、認められない。31P{1H}NMR(161.91MHz, DMSO-d6):δ27.71。19F NMR(376.3MHz, DMSO-d6):δ155.47(m, 2F)、162.20(m, 2F)、162.82(m, 1F)、トリフルオロ酢酸由来。分析計算値(実測値)%:C48.81(48.95)、H5.78(5.68)、F 22.71(22.76)。
【0130】
11-(パーフルオロベンジルオキシ)ウンデシルホスホン酸の合成
【化16】
【0131】
不活性雰囲気下で、水酸化カリウム(0.57g、10.2mmol)、ペンタフルオロベンジルブロミド(1.4mL、9.95mmol)、ジエチル11-ヒドロキシウンデシルホスホネート(3.05g、9.89mmol)、およびヨウ化テトラブチルアンモニウム(0.01g、0.03mmol)を、無水THFと合わせた。混合物をそのまま65℃で約9時間撹拌し、シリカゲルの薄層を通して濾過し、THFで溶離した。揮発分を減圧下で除去し、反応混合物を、Kugelrohr蒸留(0.18Torr、250℃)を利用して蒸留することにより、不純なジエチル11-(パーフルオロベンジルオキシ)ウンデシルホスホネートが得られた。不純な材料を、引き続き、シリカゲルが充填されたカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:酢酸エチル勾配)により精製した結果、ジエチル11-(パーフルオロベンジルオキシ)ウンデシルホスホネート0.91g(19%)が得られた。
1H NMR(399.9MHz, CDCl3)δ4.56(t, J=1.8Hz, 2H)、4.08(m, 4H)、3.47(t, J=6.6Hz, 2H)、1.73〜1.24(m, 26H)。13C{1H}NMR(125.8MHz, CDCl3)δ 145.6(d, J=246.4Hz)、141.2(d, J=261.8Hz)、137.3(d, J=270.7Hz)、111.5、71.1、61.3(d, J=6.5Hz)、59.4、32.8、30.7、30.5、29.5、29.3、29.0、26.2、25.9、25.1、22.4(d, J=5.3Hz)、16.4(d, J=6.0Hz)。分析計算値(実測値)%:C54.09(54.30)、H7.02(7.07)、F 19.45, 19.16)。[M+H]+に関する精密質量の計算値(実測値)、m/z:488.2115(488.2115)。
【0132】
ジエチル11-(パーフルオロベンジルオキシ)ウンデシルホスホネート(0.63g、1.3mmol)の乾燥ジクロロメタン15mLおよびブロモトリメチルシラン0.7mL(5.3mmol)中溶液を作製した。この系を、グリースが塗られた栓で密閉し、そのまま一晩撹拌した。揮発分を減圧下で除去することにより、粘性の褐色の油が生成され、これを4:1メタノール:水の溶液25mLに溶解し、そのまま6時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去した後、オフホワイトの固体が形成され、これを最小量のアセトニトリルから再結晶させた結果、11-(パーフルオロベンジルオキシ)ウンデシルホスホン酸の白色の結晶が得られた(0.49g、92%)。1H NMR(399.9MHz, DMSO-d6)δ4.55(s, 2H)、3.42(t, J=6.4Hz, 2H)、1.49〜1.44(m, 6H)、1.34〜1.18(m, 14 H)。13C{1H} NMR(100.5MHz, DMSO-d6)δ104.5、69.9、58.8、30.1、29.9、28.9、28.8、28.8、28.7、28.1、26.8、25.4、22.648(d, J=4.8Hz)。31P{1H} NMR(161.91MHz, DMSO-d6):δ27.63。19F NMR(376.3MHz, DMSO-d6):δ-141.86(m, 2F)、-152.95(m, 1F)、-160.88(m, 2F)、トリフルオロ酢酸由来。分析計算値(実測値):C50.00(50.16)、H6.06(6.23)、F 21.97(21.79)。[M-H]-に関する精密質量の計算値(実測値)、m/z:432.1489(432.1487)。
【0133】
その他の実施形態は、下記の特許請求の範囲内にある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構造:
【化1】
[式中、
その存在毎に独立に、R1は、ハロゲン、アルキル基、ヘテロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基であり;R2は、3乃至30の-CH2-基を含み、n=0-5、m=0-5、q=1-3であり、R2は少なくとも一つのエステル結合を含む]
を有する分子を含む組成物。
【請求項2】
表面を含む電極を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記分子のホスホン酸結合基が電極表面に結合している、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
R2が、エーテルを介してフェニル環に結合する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
R2が、-(CH2)x-Oy-(CH2)x-Oy-(CH2)z-(式中、その存在毎に独立に、x=l-12、y=0-1、及びz=0-3である)を含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも一つのフッ素が存在する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記分子が下記:
【化2】
のいずれかの構造を有する請求項1乃至6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の組成物を含むデバイス。
【請求項9】
ホスホン酸基が、金属酸化物の表面に、共有結合または非共有結合により結合する、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記分子が、前記金属酸化物上に単層を形成する、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記金属酸化物表面が、電極である、請求項9または10に記載のデバイス。
【請求項12】
トランジスタである、請求項8乃至11のいずれかに記載のデバイス。
【請求項13】
電極の表面エネルギーを、前記電極の表面上に請求項1乃至7のいずれか一項に記載の組成物を蒸着することによって変更する方法。
【請求項14】
前記分子が、前記電極に結合する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記分子が、単層を形成する、請求項13または14に記載の方法。
【請求項1】
下記の構造:
【化1】
[式中、
その存在毎に独立に、R1は、ハロゲン、アルキル基、ヘテロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基であり;R2は、3乃至30の-CH2-基を含み、n=0-5、m=0-5、q=1-3であり、R2は少なくとも一つのエステル結合を含む]
を有する分子を含む組成物。
【請求項2】
表面を含む電極を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記分子のホスホン酸結合基が電極表面に結合している、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
R2が、エーテルを介してフェニル環に結合する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
R2が、-(CH2)x-Oy-(CH2)x-Oy-(CH2)z-(式中、その存在毎に独立に、x=l-12、y=0-1、及びz=0-3である)を含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも一つのフッ素が存在する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記分子が下記:
【化2】
のいずれかの構造を有する請求項1乃至6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の組成物を含むデバイス。
【請求項9】
ホスホン酸基が、金属酸化物の表面に、共有結合または非共有結合により結合する、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記分子が、前記金属酸化物上に単層を形成する、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記金属酸化物表面が、電極である、請求項9または10に記載のデバイス。
【請求項12】
トランジスタである、請求項8乃至11のいずれかに記載のデバイス。
【請求項13】
電極の表面エネルギーを、前記電極の表面上に請求項1乃至7のいずれか一項に記載の組成物を蒸着することによって変更する方法。
【請求項14】
前記分子が、前記電極に結合する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記分子が、単層を形成する、請求項13または14に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図8】
【図14】
【図15】
【図16a】
【図16b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図8】
【図14】
【図15】
【図16a】
【図16b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公表番号】特表2012−522824(P2012−522824A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503985(P2012−503985)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054466
【国際公開番号】WO2010/115854
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(594136664)ジョージア・テック・リサーチ・コーポレーション (7)
【出願人】(500165809)インペリアル・イノベイションズ・リミテッド (32)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054466
【国際公開番号】WO2010/115854
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(594136664)ジョージア・テック・リサーチ・コーポレーション (7)
【出願人】(500165809)インペリアル・イノベイションズ・リミテッド (32)
【Fターム(参考)】
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